自動車業界で電子化といってまず思い浮かぶのは免許証だろうか。2007年より、ICカード免許となり、チップが内臓されるようになったが、次は何と車検証も電子化されるという。しかも、2023年からのスタートなのだ。
これによって車検証はどうなるのか? そのメリットデメリットを解説する。
これ知ってました? 2023年1月4日スタートの電子車検証とは
文/藤田竜太、写真/国土交通省、Adobe Stock(トビラ写真:naka@AdobeStock)
■車検証が小さくなって表記内容も変わる
国土交通省のパンフレットに掲載されている電子車検証。A6サイズ相当と小さくなり、記載内容も簡略化されている。その代わり内蔵するチップに情報が入っている
身の回りのさまざまな分野でデジタル化が進むなか、2023年1月4日以降に新規登録や継続検査等で、新しく車検証が発行される場合、電子車検証が渡される。
電子車検証とは、従来の車検証とは違いA6サイズ相当の厚紙にICタグを貼付したもの。サイズ的には高さがちょうど1/2。幅が約60%に縮小される。券面には変更登録等による記録事項の変更を伴わない基礎的情報のみが記載され、現行の車検証情報はICタグに記録される仕組みだ。
なぜ車検証が電子化されるのかというと、国土交通省では次のように説明している。「国土交通省では、自動車ユーザーや自動車関係の事業者の皆様のさらなる利便性向上のため、自動車登録手続きのデジタル化に取り組んでいます。
現在、車検証の交付を受けるためには運輸支局等への出頭が必要ですが、車検証を電子化し、整備事業者等の事業所等において車検証の有効期間を更新する仕組みを新たに導入することで、車検時の運輸支局等への出頭を不要とする制度とシステムを導入します」
ここで「ユーザーの利便性向上」とあるが、ユーザー自身の電子車検証のメリットは多いとはいえない。
電子車検証が導入されると、指定工場(民間車検場)で車検を受けた場合、保安基準適合証を運輸支局、自動車検査登録事務所等に提出し、新しい車検証を受け取る必要がなくなるので、車検に必要な時間が短縮できることと、車検証自体がコンパクトになることで、車検証を収納する場所の省スペース化が図れる!?
その他、検査手数料や自動車重量税のクレジットカード納付(キャッシュレス化)、電子車検証を利用した申請書の自動入力化といったところ。また、専用アプリを用いて、車検の有効期限を通知する機能も搭載する予定となっている。
■手数料値上げやICタグ故障の危険性などのデメリットも
国土交通省のリーフレットには、電子化におけるメリットが記述されている
一方、デメリットはいくつかある。まず、電子化に伴い、2023年1月1日から各種手数料が手続きの種類により50円~500円程度、引き上げられる!(デジタル化にはコストがかかる……)
また下記の情報は、車検証には記載されず、アプリでしか確認できなくなる。
・車検証の有効期間
・所有者の氏名・住所
・使用者の住所
・使用の本拠の位置
上記4点は、車検証の券面からは消えて、ICタグに格納。住所や氏名などは車検証を見なくても困らないかもしれないし、有効期限も車検シール(検査標章)でもわかるので、問題ないといえば問題ないが……。
なお、スマホやパソコンを利用できないユーザーが、ICタグの情報を確認したい場合、制度開始から最低3年間は従来の車検証と同等の情報が記載されている「自動車検査証記録事項」が渡されるので、それをチェックするといい。
あとはこうしたデジタル化につきものの個人情報流出のリスク。これはユーザーサイドでは防げないので、国土交通省の厳格な運用に期待するしかない。
さらにICタグの故障や破損の可能性も考えられる。電子車検証になっても、車両運行時には車検証を携帯する義務はあり、真夏に高温・多湿になる車内に長期間入れっぱなしにしておくと、場所によってはICがダメになることも。
国土交通省からも、「従来の車検証と同様にダッシュボードの中等に保管いただいて構いませんが、ダッシュボードの上等、過度な高温になる場所に長時間放置することは避けてください」とアナウンスがでている。また、IC部分を折り曲げるのは当然NGだ。
■軽自動車用の電子車検証は2024年1月スタートの予定
軽自動車の車検証の電子化は2023年12月31日まで経過措置がとられ、2024年1月から開始される予定(Nakano@AdobeStock)
自動車整備工場などにとっては、電子車検証になることで継続検査や、券面記載事項の変更を伴わない、変更登録、移転登録などは出頭不要になるので、時間的にも人材的にも助かる面が増えるはず(代書屋さんはピンチ!?)。
そして、この電子車検証が導入されることで、国土交通省が2005年から導入しているOSS(ワンストップサービス=自動車関係の各種手続きや税金・手数料の納付をオンライン上で行えるようにしたサービス)を本格的に普及させていくという狙いもあるようだ。
もうひとつ、ICタグ空き領域の利活用について。電子車検証に搭載されるICタグには車検証情報の記録領域とは別に、アプリケーションの搭載が可能な記録領域を設けられている。
これらは将来的な利用を見越して用意されているわけだが、現時点では未定で、ICの空き領域の具体的な利活用方法については、今後検討していくとしか発表されていない。
最後に軽自動車の電子車検証についても触れておこう。軽自動車の車検証交付は国土交通省ではなく、軽自動車検査協会が主体なので、電子車検証の導入タイミングも少々異なる。
軽自動車の車検証の電子化は、2023年12月31日まで経過措置がとられた上で、2024年1月から開始される見通しだ。
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