スーパーGT第2戦の富士GT500kmレースは、17号車Astemo NSX-GTの優勝で幕を下ろした。ホンダ勢は予選でポテンシャルを出し切れず、2番手となった8号車ARTA NSX-GT以外は全車Q1落ちという結果に終わってしまっていたが、決勝では8号車だけでなく11番手スタートの17号車、そしてクラス最後尾からスタートした1号車STANLEY NSX-GTも優勝争いに絡むなど、ブリヂストンタイヤ(BS)ユーザーである3台のNSXが印象的な速さを見せた。
8号車はイエローフラッグ時の追い越し違反でドライブスルーペナルティを科され優勝戦線から脱落したが、代わってトップに立った17号車が優勝。そして1号車もそこから1.552秒差の4位に入った。ホンダ勢がスープラ勢の2戦連続となる上位独占を阻止した形だ。
■スーパーGT第2戦富士:初めて運用されたFCY。残り18分の大激戦をAstemo NSXが制す
今回のレースを終えて、ホンダのラージ・プロジェクトリーダーを務める佐伯昌浩と車体開発責任者の往西友宏は、1号車や17号車など後方グリッドに沈んだ車両が追い上げを見せたことは想定以上の出来だったと考えているが、スープラ勢の中でもサクセスウエイトを多く積んだチームが優勝争いに絡んできた点は気になるようだ。
今回17号車と僅差でフィニッシュした2位の14号車ENEOS X PRIME GR Supraは40kg、3位の37号車KeePer TOM'S GR Supraは24kg、そしてトラブルで離脱しながらも終盤まで優勝争いに絡んでいた36号車au TOM'S GR Supraも30kgのサクセスウエイトを積んでいた。この3台はいずれも開幕戦岡山で表彰台に上っている。
佐伯LPLは次のように語った。
「ホンダとして今シーズン1勝目を達成できて良かったです。17号車に関してはFCYの直前でピットに入ったというラッキーな部分はありますが、最後は塚越(広大)選手がよく踏ん張ってくれたと思います」
「予選では前のポジションを取れませんでしたが、第1スティントでBSの3台(1号車、8号車、17号車)があそこまで追い上げていけるとは思っていませんでした。その3台はしっかり順位を上げるレースができましたので、想定よりも良いレースができたという風に感じています。これからも、予選がダメでも追い上げるレースをするために、今回のレース結果を解析していきます」
「ただ、トヨタはウエイトを積んでいるクルマが上位に来ていますので、我々は負けてる部分が多いなと思います。チャレンジャーの気持ちでレースを進めているのは昨年から変わらないので、これからも努力して行きます」
また往西も、スープラ勢との実力差について次のような認識を示した。
「レース前は、ウエイトが軽めのスープラ勢にぶっちぎられてもおかしくないということは想定していましたが、開幕戦で活躍した(ウエイトを多く積んでいる)スープラ勢の仕上がりが良く、本来速いはずのウエイトの軽いスープラ勢のレースペースが今ひとつだったのは想像と違いました」
「サクセスウエイトの重いスープラ勢に対して、ウエイトの軽いホンダNSX勢でなんとかやりあえるような、そんな実力差であると再認識させられたレースでした。戦闘力、地力自体も上げていかないと苦しい戦いが続くかなと思います」
「力量差は基本的には去年と変わっていないと思いますので、NSXの中で良い仕上がりのクルマを多く仕上げないといけません。仕上がりの良いクルマ同士でガチンコのバトルになった時に勝ち切れる、もうひと押し、ふた押しの戦闘力を付けていかないと、去年のように、混戦の中で勝負のあやがなければシリーズを戦えない、という状況になると思います」
レースで勝ちながらも、スープラ勢との実力差については揃って慎重な意見のふたり。同じく富士スピードウェイで11月末に行なわれるシリーズ最終戦に向けた展望に話が及ぶと、佐伯LPLは「ノーウエイトでスープラと戦うのは現時点では難しい部分もある。ストレートスピードでトヨタに負けていてドライバーに負担をかけているので、そこを1km/hでも詰めていくような開発をしていきたい」と、こちらも慎重な見方。往西も佐伯LPLの意見に概ね賛同したが、昨年から富士で多くのレースをこなしたことがポジティブな影響を与えているはずだと分析した。
「今年も最終戦で、前でフィニッシュした方がチャンピオンという展開になるなら、しんどいなと思います」と往西。
「ただ、富士では去年4レースをやって、シーズンオフにはテストもしました。NSXを使ってくれているチームさんが場数を踏んだことで、多少チャレンジングなセッティングをして最初は調子が出なくても、なんとか決勝までに合わせ込んでくれるようになった印象です」
「富士が苦手ということは変わりませんが、その中でどうやって帳尻を合わせて高いレベルにするかという点では、今までよりは頼もしく見ていられるようになったのかなと思います。富士でたくさんレースをやっていただいたおかげで、苦手意識も減り、ちょっと慣れてきたというのはありますね」
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