ロールス・ロイス、目下の敵は中国か
ロールス・ロイスは近々、知名度の低い中国ブランドの攻勢にさらされるかもしれない。それも、超高級車市場で。
【画像】AUTOCARの試乗記では低評価だったホンチーH7 全8枚
国内専業に近かった、中国のホンチーこと紅旗。彼らは2018年に、ロールス・ロイスのデザインチーフであるジャイルズ・テイラーを引き抜いた。グローバル化する高級車市場の頂点に、狙いを定めたのである。
紅旗は、中国最大の自動車メーカーの1つであるFAWグループの一員だ。かの有名なL5のような政府専用リムジンを手がけるなど、文化的にも歴史的にも実績は十分。それをもって、ロールス・ロイスと渡り合うつもりらしい。
現在、テイラーはミュンヘンにいる。役職はデザイン担当グローバル副社長およびチーフクリエイティブオフィサーだ。
彼はAUTOCARの取材に対し、ラッグシップとなる高級車を作ると答えた。従来ならばロールス・ロイスを所有したがるような中国人富裕層を狙うという。
「若い超富裕層を取り込みたいと思っています。彼らは中国ブランドの高級車を欲しがっているのです」とテイラーは語った。彼のいる紅旗は去年、販売台数を伸ばしている。
テイラーは、いかなる紅旗のクルマもロールス・ロイスのコピーではないとした。それらは自身がデザインした、独自のアイデンティティを持つものであると。
「革新的かつデジタルなやり方を見つける必要があります。まったく新しい、中国製の、オリジナルな紅旗車を作るために」と、テイラー。「ロールス・ロイスのコピーだ、と言われるようなことにはしませんよ」
「紅旗、中国で一番の高級車ブランドに」
ブランドアイデンティティのより所として、テイラーは中国文化を引き合いに出した。そして力強く続けたのだ。
「紅旗はいずれ、中国で一番の高級車ブランドになります」
「古代の彫刻、ファッション、書道といった、中国文化の豊かさ。西洋的なものだけでなく、中国的なものを想起させるブランドになるでしょう」
デザインのDNAが大切である一方で、テイラーは中国ブランドがイノベーションに強みを持つと見ている。そして彼自身も、イノベーションに熱心に取り組んでいるのだ。
「中国という国はイノベーションに対してとても積極的です。カスタマーを見渡すと、彼らは単なる技術面での進歩だけでなく、デザイン面での革新も求めていますね」
テイラーは、紅旗の新型リムジンの正しい価格は後からついてくると考えている。ライバルの価格を下回ることで、むしろ中身やイノベーション面で挑戦できると言うのだ。
彼はさらに語った。
「中国の芸術文化に立ち戻り、積み上げられた伝統を活用するのです。美しく、そしてエレガントにね。そうすると、独特の魅力で人々を惹きつけてくれるんですよ」
厳しい戦いであることは承知
テイラーは、欧州や中東で高級車市場を戦うことの難しさもわかっている。他のプレミアムブランドが、長いこと幅をきかせているからだ。
「『中国のロールス・ロイス』を中国の外で売ろうとすることは、常に厳しい挑戦になります。なんと言ってもロールス・ロイスには、114年に渡って受け継がれているものがありますからね。しかもそれは、時間を追うごとに大きく強く育てられてきているわけです」
「中国国外で、しっかりとブランド力を付けるやり方を考えなければなりません。それには時間がかかりますね」と話したテイラーは、それでもチャンスは大きいと考えているようだった。
最後にテイラーは、こう言って締めくくった。
「紅旗は新たな一歩を踏み出しています。一方で、時折、伝統の壁に阻まれることもあるでしょう。高級車ブランドを中国から発信するということは、ポジティブでありネガティブなことなんですよ」
ロールス・ロイスのデザイン責任者の旅立ち
テイラーの後釜として3月にやって来たヨゼフ・カバンは、わずか半年でロールス・ロイスのデザイン責任者の職を辞した。詳細は明らかになっていない。彼は、「よそで利益を追求するために」会社を離れたという。
カバンがBMWグループ入りしたのは2017年。以降BMWブランドを専門に、デザインチーフのアドリアン・ファン・ホーイドンクのもとで働いていた。
スロバキア人であるカバンは、フォルクスワーゲングループで長くキャリアを積んできた人物だ。彼はブガッティ・ヴェイロンのエクステリアデザインを手がけたこともある。
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