創設2年目の『Nitro Rallycross(ナイトロ・ラリークロス/NitroRX)』は、2023年に入った1月21~22日にケベック州で第7戦を開催し、引き続き雪と氷のカナダ連戦として2月4~5日に同じくカナダはカルガリーのスタンピード・パークで第8戦を実施。イベント直前に現地を襲った“チヌーク風”によりトラックの氷の量が減少し、土壇場でフォーマットを変更する波乱にも動じず、ケビン・エリクソン(オルスバーグMSE AB)がシリーズ初優勝を飾っている。
1988年の冬季オリンピック開催地での雪と氷のイベントには、2日間で2万人を超える観衆が集まり、北米大陸で史上最高の動員者数を記録したラリークロス・イベントとなった。しかし準備段階で、ロッキー山脈の東側に吹きおろしてくる偏西風“チヌーク”がカルガリーを通過したことにより、フェーン現象に見舞われた現地は異常に高い気温を記録する。
未定だった2022-23シーズン最終戦は、やはりアメリカ大陸で。3月のグレンヘレンで決着/NitroRX
これによりシリーズ主催者は、チームとドライバーとともに土壇場での再考を余儀なくされ、急遽“Nitro Stampede.(ナイトロ・スタンピード)”と呼ばれる改訂されたフォーマットの採用を決断。コース上の氷を維持する必要があるため、通常はマルチカーで争われる日曜のファイナルは直接対決のブラケットレースに変更され、通常の8台ではなく4台が出走。残る5台でコンソレーションを実施する形式となった。
その土曜から、前戦シリーズ初の雪上戦で予選最速だった強豪ドレイヤー&レインボールド・レーシング・ウィズ・JCレーステクニーク(DRR JC)から参戦のジャマイカ人、フレイザー・マッコーネルがふたたび主役となり、2戦連続のトップクオリファイアーとなったが、日曜には、同じくその前戦で弟のオリバー・エリクソン(オルスバーグMSE AB)にチーム初優勝の手柄を譲っていた兄ケビンが逆襲。
クリス・ミーク(エキサイト・エナジー・レーシング)とコナー・マテル(バーモント・スポーツカー)、そしてシリーズ創設者兼初代チャンピオンにも輝くトラビス・パストラーナ(バーモント・スポーツカー)らとともに、ブラケットファイナル進出を決めてみせる。
■決勝はWRC経験者のミークが迫るもエリクソンが初優勝
そのスタートで出遅れた3台を尻目に“北欧出身”の兄がダッシュし、背後ではミークとパストラーナがサイド・バイ・サイドの展開に。ここでパストラーナは先手を打ち、6周レースの2周目にジョーカーへと飛び込むが、前戦同様に慣れないスノーのドライビングに手こずり、より長いルートでバンクにボディを擦りつけるとともに、表面が溶けて砕かれたサーフェスにより「スタッドタイヤの効果が低下」してしまう。
一方、WRC世界ラリー選手権などあらゆる路面での経験値に勝る北アイルランド出身のミークは、フィニッシュ目前の5周目にジョーカーを消化し、ここで2位浮上が確定的に。しかしケビンの背中を脅かすには至らず、最終的に15.579秒差で北欧の名門オルスバーグMSE ABの『FC1-X』がトップチェッカーをくぐり、兄弟でのスノーイベント連勝を完成させた。
2位ミーク、3位パストラーナの表彰台に続き、オープニングラップでウォールの餌食となったマテルは4位に。そしてイベント全体の分類で5位から9位までの順位を決定するコンソレーション・ファイナルは、前戦勝者オリバーを退けたマッコーネルが「クール・ランニングのスピリット」で勝利。ポイントリーダーの開幕覇者ロビン・ラーソンとアンドレアス・バッケルドのDRR JCデュオはともに表彰台を逃す初のイベントとなったが、フォーマットの変更によりチャンピオンシップには影響せず。ラーソンがランク首位の座を維持している。
年跨ぎの2022-23年シーズンとしてグローバル・チャンピオンシップに発展を遂げたシリーズ初年度は、このあと3月17~19日に北米大陸で決着のときを迎え、昨年10月に開催された第4戦の会場でもあるアメリカ・カリフォルニア州グレンヘレン・レースウェイでのダブルヘッダー戦が予定されている。
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