現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「世界最速のフェアレディZを公道で試す!」後編──連載「西川淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ 第5回」

ここから本文です

「世界最速のフェアレディZを公道で試す!」後編──連載「西川淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ 第5回」

掲載 更新 1
「世界最速のフェアレディZを公道で試す!」後編──連載「西川淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ 第5回」

軽自動車からスーパーカーまであらゆるクルマを所有し、クルマ趣味を追求し続ける自動車ジャーナリスト西川淳氏がスタートさせたチャレンジ企画。タイトル通り、無茶、無謀と思われる究極のクルマ遊びを考案し、それを実践。クルマ好きの、クルマ好きのための冒険連載。今回は世界最速の称号を手に入れた日本人チューナー製作のフェアレディZを公道で試す!

30年経った今も発せられるホンモノのオーラ

今だからこそ“最近のイイクルマ”を思い起こす──心に残っているクルマ達 2019-2020 Vol.8

究極のチューンングを施した、しかも30年も前の国産スポーツカーであるにも関わらず、そのエンジンはあっけなく目を覚ました。最近の徹底したメンテナンスのおかげだろう、まるで気難しいそぶりをみせず、多少ワイルドなサウンドを鳴らしたのみで、1000馬力の3.1リッターV6ツインターボに火が入ったのだった。

とはいえ、その尋常ならざるアピアランスと、いかにも歴戦の勇者然としたスパルタンなコクピットに、今や何億円のスーパーカーでも物怖じしなくなったはずのボクも少なからずたじろいでしまった。このマシンを仕上げた人たちの熱き思いや、背負って立ったあの頃の日本チューニング界の声援が、30年経った今もなお、一定のエネルギーをもって全身から発せられているかのようだ。これぞ、ホンモノのオーラというものなのだろう。

見慣れたZ32のインテリア(実は筆者も一時期、800馬力のZ32を所有していたが、見た目ほぼノーマルの内装だった)とはかなり様子が違っている。パーソナルのステリングホイールが懐かしい。クラッチはカーボンプレートに換装されており、半クラを意識的に使って繋いだほうがいいと現オーナーのA氏から言われたのだが、それがまた難しいのだ(ふつうのクラッチでは極力使わないほうがいい)。ガツガツと少なからずぎくしゃくした動きをみせつつ、ボクの駆るボンネヴィルZは何とか走り出した。

動いてしまえばこちらのもの、などと古いスーパーカーと同じように思ったのは早計だった。あちらこちらから凄まじいメカニカルノイズ、つまりは騒音が聞こえてきて、このまま街中を走らせているだけで壊れてしまうんじゃないか、と、心配してしまったほど。特に盛大だったのは燃料ポンプの音で、右アシに力を込めるたび罪悪感を覚える。当然ながら乗り心地も決して良いとは言えない。強化されたボディの、元の弱さを感じ取れてしまうほどにアシはかためられている。このマシンと常日頃付き合うA氏の心臓はカーボンファイバー製の剛毛に覆われているに違いない。

Rei.Hashimoto飛ぶように走るとは正にこのこと

高速道路に入った。まずはゆっくりと回転をあげてみる。それでもパワーのツキがすさまじく、それなりに重量のあるフェアレディZ32が軽自動車くらいの大きさに思えてしまうほど。これは心して踏まねばなるまい。もう一度、心の襷をきりりと締め直し、前が空いた瞬間を見計らって、ありったけの蛮勇を奮ってみた。

およそ過去に経験のない、恐ろしい加速フィールであった。ブガッティのヴェイロンやシロンといった現代の最強マシンとは、当たり前だけど、まるで違う質の速さ。紙細工のクルマが飛ばされるが如き浮いた加速フィールに、もはや路面のことなどよく分からなくなっていた。乗り手と外とを分け隔てているのはスチール製のボディではなく、自ら発するノイズとバイブレーションだけであり、それ以外はまるで紙のようなのだ。飛ぶように走るとは正にこのことを言う。

Rei.Hashimotoそれでも不思議とどこか望まぬ方へと飛んでいきそうな、そんな不安はなかった。それはとりもなおさず、このマシンには世界最速という勲章があって、その勲章こそが日本屈指のチューナーによって注ぎ込まれた技術の成果であるとボクが知っていたからだろう。

恐ろしく刺激的であることは間違いない。けれども意外に乗り易いという印象さえあった。確かな技術に対するそれは信頼のようなものかもしれない。おそらく、このマシンを踏み抜くA氏の、エンジニア&メカニック諸氏への敬意がチョイ乗りしたボクにも感じられたのだろう。

Rei.Hashimoto同時にボクはなんだか魂を少し吸い取られたような気もした。A氏にお願いすればいくらでも乗っていられそうだったけれども、世界最速Zの試乗をボクは自ら小一時間で終えることにした。何だかそれ以上乗っていられなくなったのだ。

クルマ負けしてしまった、という事実。まだまだ趣味の修行も足りない、ということかも知れないなぁ。究極を探して乗る旅は、まだまだやめられない。

PROFILE
西川淳
軽自動車からスーパーカーまであらゆるクルマを愛し、クルマ趣味を追求し続ける自動車ジャーナリスト。現在は京都に本拠を移し活動中。

文・西川 淳 写真・橋本玲 編集・iconic

こんな記事も読まれています

グレー&シアンで「MTシリーズ」の世界観を表現、ヤマハ『MT-03』『MT-25』2025年モデル発売 
グレー&シアンで「MTシリーズ」の世界観を表現、ヤマハ『MT-03』『MT-25』2025年モデル発売 
レスポンス
KINTOから、LEXUS ISをアップグレードする「Performance Upgrade “Solid” for IS」が発売
KINTOから、LEXUS ISをアップグレードする「Performance Upgrade “Solid” for IS」が発売
月刊自家用車WEB
KINTO、走行安定性をアップグレードする「士別フィン」を発売
KINTO、走行安定性をアップグレードする「士別フィン」を発売
月刊自家用車WEB
40年の歴史を持つ伝説的なハイパフォーマンスセダンは7世代目に! 新型「BMW M5」がデビュー
40年の歴史を持つ伝説的なハイパフォーマンスセダンは7世代目に! 新型「BMW M5」がデビュー
LE VOLANT CARSMEET WEB
SP忠男から Z650RS(’24-)用フルエキ「POWERBOX FULL 2in1ステンポリッシュ」が発売!
SP忠男から Z650RS(’24-)用フルエキ「POWERBOX FULL 2in1ステンポリッシュ」が発売!
バイクブロス
三菱「新型デリカ」発表近い!? 超ビッグ&タフな「SUVミニバン」発表で「出たら即買う」の声! 度肝抜く「D:X」登場で期待ヒートアップ!?
三菱「新型デリカ」発表近い!? 超ビッグ&タフな「SUVミニバン」発表で「出たら即買う」の声! 度肝抜く「D:X」登場で期待ヒートアップ!?
くるまのニュース
「e-BIKE」ってなに? ペダル付き電動バイクとの違い
「e-BIKE」ってなに? ペダル付き電動バイクとの違い
バイクのニュース
モータージャーナリスト修行中のZ世代クルマ好き女子がトムスの本物フォーミュラカーFIA-F4を初体験してきた件
モータージャーナリスト修行中のZ世代クルマ好き女子がトムスの本物フォーミュラカーFIA-F4を初体験してきた件
カー・アンド・ドライバー
アウトドアを楽しもう…アンダーソン・パークとコラボ、「ワールド・ミュージック・デイ」でレクサス GX を起用した映像公開
アウトドアを楽しもう…アンダーソン・パークとコラボ、「ワールド・ミュージック・デイ」でレクサス GX を起用した映像公開
レスポンス
カッコよさ重視のデザインに!! 燃費29km超えの[カローラツーリング]はハンドリングが抜群!
カッコよさ重視のデザインに!! 燃費29km超えの[カローラツーリング]はハンドリングが抜群!
ベストカーWeb
【BYD シール】「売れるかは未知数」縮小する日本のセダン市場で、中国のEVはどう戦うのか
【BYD シール】「売れるかは未知数」縮小する日本のセダン市場で、中国のEVはどう戦うのか
レスポンス
アウディの高性能SUV『RS Q8』、600馬力ツインターボ搭載…発表
アウディの高性能SUV『RS Q8』、600馬力ツインターボ搭載…発表
レスポンス
「えっ!」捕まるのはイヤだけど…乗ってみたい!? 爆速「“2ドア”パトカー」3選
「えっ!」捕まるのはイヤだけど…乗ってみたい!? 爆速「“2ドア”パトカー」3選
くるまのニュース
専門店もあるのにPBブランドまで展開! いまホームセンターが「カー用品」を充実させる理由を大手に聞いてみた
専門店もあるのにPBブランドまで展開! いまホームセンターが「カー用品」を充実させる理由を大手に聞いてみた
WEB CARTOP
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「モビリティ業界の新規事業のつくり方~ヤマハ発動機の成功と失敗に学ぶ~」
【セミナー見逃し配信】※プレミアム会員限定「モビリティ業界の新規事業のつくり方~ヤマハ発動機の成功と失敗に学ぶ~」
レスポンス
ハミルトンへの嫌がらせ告発する怪メールに警察「犯罪行為無し」と結論。チーム側には今後に向けアドバイス与える
ハミルトンへの嫌がらせ告発する怪メールに警察「犯罪行為無し」と結論。チーム側には今後に向けアドバイス与える
motorsport.com 日本版
Wedsの注目ブランド MAVERICK(マーベリック)から新作2ピースモデル「1613M」誕生
Wedsの注目ブランド MAVERICK(マーベリック)から新作2ピースモデル「1613M」誕生
ベストカーWeb
日産“新型”「和製スーパーカー」発表! まさかの「“スカイライン”なR34仕様」! もうファイナルな鮮烈ブルーの「GT-R」アメリカに登場
日産“新型”「和製スーパーカー」発表! まさかの「“スカイライン”なR34仕様」! もうファイナルな鮮烈ブルーの「GT-R」アメリカに登場
くるまのニュース

みんなのコメント

1件
  • 世界最速のZを公道で試す。何を?法定速度迄の加速?サーキットか茨木か何処かの高速周回路が在るではないですか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

539.9920.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

33.03300.0万円

中古車を検索
フェアレディZの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

539.9920.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

33.03300.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村