エコに逆行する「ドリーム・カー」に乗るなら今のうち!
人生も還暦を迎えると、やり残したことを数えるようになる。例えば、ぼくの愛車遍歴でいえば、1965年型「フォード・マスタング・コンバーチブル」。若いころに取材して以来、「いつかはオーナーになりたい!」と憧れ続けてきたドリーム・カーだ。数年後には世の中が電気自動車になることが現実的になってくると、ますます差し迫った課題に感じられた。
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初代の面影を継ぐ5代目マスタングを128万円でゲット
しかし、ビンテージカーの価格高騰は周知のとおり。予算内で程度のいいタマは出てこない。ようやく見つけた400万円の個体を福島まで見にいったが、残念ながら胸はときめかなかった。むしろ試運転をしてみると、マニアでもないぼくが50年以上前のクルマを維持できるか不安が大きくなった。屋根はあるとはいえ、マンションの駐車場じゃ満足なメンテもできそうにない。
「やっぱり無理か」と、夢を諦めかけたとき、突如、いいアイデアが浮かんだ。それが2005年デビューの5代目マスタング。初代のデザインを再現し、当時「リビングレジェンド」と呼ばれて話題になったモデルだ。そういえば、アメリカで大ヒットして街なかでよく走っていたなぁ。さっそく調べてみると、180万円くらいが相場のようだ。しかし、エアロパーツがついていたり、おかしな色に塗装されていたりで、なかなか「これだ!」という一台に巡り合わない。そもそも、国内ではファストバックやクーペまで選択肢を広げてもタマが少ない。
探し始めて1年以上経ったとき、ポンと現れたのが現在の愛車だ。2009年式の前期型で、V6 4.0L搭載、走行距離は9万1000km。プライスは破格の128万円だった。安価の理由を聞いてみると、在庫車のテイストを変える計画があり、処分のため値下げしたばかりとのこと。試運転も問題なし。インテリアも走行距離のわりにきれいだ。やっぱりクルマって出会いだよなぁ。もちろん、即決しました。
車高を落としピンストライプを入れてイメージアップ
純正の5スポークはイメージどおりだったが、いかんせん車高が高すぎる。ここは譲れないポイントなので、さっそく「MOONEYES」にサスペンションをオーダーし、お友達の「習志野自動車」で作業をしてもらった。9万円なり。ボディのツヤはまずまずだが、フロントバンパーだけやたら傷みが激しい。脱着して再塗装し、7万円。さらに、シンプルなピンストライプを入れてもらった。これが1万6000円。
おお、かなりカッコよくなったぜ! ちょうど春先だったので、コンバーチブルでのドライブが楽しい。友達を乗せて走ると、「コンバチ、いいっすね」「オレ、初めてですよ、コンバチ」と評判も上々。「だろ~」と、得意満面になりました。
燃費はV6アメ車としては上々(?)の6~7km/L
エコエコの時代に逆行するように選んだアメ車だが、満足度はかなり高い。まず、エンジン音がいい。最近のクルマの吐息のような微音はいただけません。お前、大丈夫? と聞きたくなる。そして、FRならではの加速感。遠くまで出かけたくなる、運転の楽しさを取り戻した感じだ。
もっと取り回しに苦労するかと思ったが、意外と小回りが効くのもいい。細い路地に迷い込んでも困ることはない。強いて言えば、バックのときの視認性が最悪。たまに代車で軽自動車に乗ると、「こんなに見えるのか!」とびっくりするが、それくらいで文句を言うつもりはない。気になる燃費は市街地走行で6~7km/L。前車の「VWポロ」に比べればかなり劣るものの、年間走行5000km未満なのでオッケーとした。
ほどほどに壊れるけれど欧州高級ブランドに比べれば安い世界
さて、アメ車は壊れないのか? う~ん、壊れます……。故障の洗礼を受けたのは、乗り出しから半年後。ある日、ファンベルトがキュルキュルと鳴り出した。「習志野自動車」に調整を依頼すると、現代車はテンショナーという部品で自動調整しているとのこと。部品交換を頼むと工賃込みで、4万4000円なり。ところが、しばらくすると一旦止まったはずのキュルキュル音が再開。調べてもらうと、クランクプーリーの一部が欠けているのを発見。多分、ファンベルトが緩んだときに負担がかかったのだろう。部品交換&工賃で4万8000円の出費となった。
次の故障は、右のリヤウインドウ。左に比べて上がってくるスピードが遅いなぁ、と思っていたら、ある日、まったく上がってこなくなった。レギュレーターとモーターの交換を宣告された。誤算だったのは、リヤシートまですべて下ろさないとドアパネルを取り外せないこと。窓ガラス屋さんに頼んで、工賃が5万円もかかってしまった。部品代3万5000円で、計8万5000円とあいなった。
国産車に比べて故障は多いかもしれないが、気に入ったクルマを所有する喜びには換えられない。周囲を見まわすと、還暦を迎えた友人、知り合いたちがコンバーチブルや大型バイクに乗り始めている。自動車に乗る楽しさを知っている世代だからこその贅沢かもしれない。
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