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日産R32「スカイラインGT-R」との出会ってすべてがはじまった! 「TMワークス」はゼロヨンとともに今も成長中

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日産R32「スカイラインGT-R」との出会ってすべてがはじまった! 「TMワークス」はゼロヨンとともに今も成長中

チューナーの心に残る厳選の1台を語る【TMワークス 浜原良栄代表】

 R32の純正の速さに新時代の到来を感じ、右も左もわからぬ状態から頂点を目指した。何度もの挫折を繰り返しながら得たノウハウは現在でも貴重な宝物である。今なお走り続ける思い出の1台を語ろう。

R33「スカイラインGT-R」のおかげで「フェニックスパワー」の今がある! 最高速アタックでエンジンブローしながら得たセッティング術とは

(初出:GT-R Magazine 152号)

初の愛車もエンジンを換装、R32との出会いが転機に!

「家は農家で両親がクルマ好きというわけでもありませんでした。それでも子供のころからクルマが好きでしたね。隣に住んでいたお兄さんの影響が大きかったんだと思います」

 石川県に生まれた浜原良栄代表。サバンナRX-3に乗っていた隣のお兄さんに誘われ、中学や高校時代によく助手席に乗せてもらっていた。将来は自動車関係の仕事に就きたいと思い始めたのもそのころ。高校は当時まだ自動車科がなかったので、地元にある工業高校の機械科へ進んだ。卒業後は金沢にある日産ディーラーへメカニックとして就職する。

「でもディーラーは1年で辞めてしまったんです。高校を卒業してからすぐダルマセリカを買ったのですが、日産ディーラーには乗っていけませんでした。だから電車通勤で、駅から1kmくらい歩かなくちゃいけなくて。疲れちゃったんです」

 18歳で購入したセリカはNAだった。DOHCでもなく普通のエンジン。それを自分で2T-Gに載せ換えた。場所は自宅の納屋で。

「もう見様見真似ですよね。エンジンは解体屋でもらってきました。その後2Lの18R-Gへさらに載せ換えたんですよ。それでクルマにガタがきて、箱型のカリーナに乗り替えました。それもソレックスのキャブを付けてマフラーも交換。もちろん自分で」

ストリートゼロヨンで出会ったR32GT-Rが運命を変えた

 いわゆる「ソレ・タコ・デュアル」の時代である。日産ディーラーを辞めた浜原代表は、地元である小松市で全国展開しているガソリンスタンドに就職した。ここで整備士の免許を取得。家に帰れば納屋でクルマをイジる日々。

 20ソアラのツインターボに乗り替えたころはストリートゼロヨンが流行り出した時代。有名なスポットに初めて行ってゼロヨンにハマる。

「その後Z31型フェアレディZを購入し、トラストのTD06タービンをアクチュエータからウエストゲートに加工したり、インジェクターを追加したりレビックとか使って乗っていました。そうやって周りと競って楽しんでしばらくしたある日、ゼロヨンスポットに1台のクルマがやってきたんです」

 ドノーマルのBNR32だった。それが無茶苦茶速くて、浜原代表は度肝を抜かれた。とくに1速2速の加速は尋常ではない。時代は変わったんだとカルチャーショックだった。

「それですぐに新車でR32を買いました。25歳くらいだったと思います。農協から購入したんです」

 ガソリンスタンドで働き続けていたが、チューニングが好きでプライベーターとしてもずっと頑張っていた。社会人になって初めて務めたディーラーの工場長が納屋まで通って基礎を仕込んでくれたという。そんな修行時代が2~3年続き、工場長から「もう一人でやれる」という太鼓判をもらった。そんなある日、友人から連絡が入ったのだ。

「こういう人がいるから頼む、という話でした。R32でどうしても10秒が切れない。何とか9秒台を出したいとのことだったんです」

 すでにある程度エンジンにも手が加えられたGT-Rだった。しかし、そのオーナーがショップに聞いていた内容とは、ピストンもコンロッドもまったく別のパーツが付いていたという。そこで浜原代表は、そのR32をイチから作り直した。

「Z32エアフロを使ったロムチューンでしたね。エンジンは1mmボアアップした2.7Lで、ピストン、コンロッド、クランクはHKS。タービンは最初アペックスのRX6 TCW10という小さめのものでした。そこからTCW76、TCW77とどんどん大きくなったワケですが」

 タイヤはニットーでホイールはリーガマスター。HKSの強化5速MTを投入している。

3度目の挑戦で王者となり今でもタイムを削り続ける

 平成9(1997)年についにプライベーターからショップを立ち上げた。名前は『TMワークス』である。最初は石川県小松市安宅町の辺りに場所を借りた。このR32のために当時ネココーポレーションで借金をしてまでコンピュータのソフトを購入する。

 R32がひと通り仕上がった1999年、HKSドラッグミーティングにエントリー。地方での予選を勝ち抜き全国大会へ……の予定だった。しかしドライブシャフトを筆頭に駆動系が立て続けに壊れタイムが出ない。これでは仙台ハイランドで開催される全国大会へは出られない。仕上がりの手応えはあるのに、だ。

「それならばストリートファイタークラスではなく、プロファイターに出てみるか、ということで5万円払ってエントリーしました。トーナメントが始まり最初は9秒9くらいで、最後は9秒502。全国で4位となったんです」

 下積み時代から、ショップを立ち上げるなら何かでメディアに出ないと無理だろうと思っていたという。プロファイタークラスで全国4位とはかなりの戦績だ。しかし浜原代表は満足できなかった。翌年はストリートファイターへ出場し、セントラルサーキットでの予選で9秒3を叩き出す。これで予選は余裕のクリア。ついにストリートファイターの全国大会へ出場資格を得たのだ。

「トーナメント戦で決勝まで行きました。でもダイナモが壊れてしまったんです。走行時には暗くなっていて、ライトオンしたと同時にエンジンストップ。これで終了です」

 2位という成績に悔しさしか残らなかった。そして翌年、ついにリベンジを果たす。タイムも9秒034へ伸びた。全国でトップにまで上り詰めたのである。

「それから近くの人たちがお店に来てくれるようになりましたね。このR32がなかったら、わたしは今ここにはいないと思いますよ」

ゼロヨンに参戦し限界を知ることで技術を磨いてきた

 浜原代表にとって、やはり始まりはGT-Rだった。ノーマルでも速いR32にショックを受け、GT-Rでチューニングを学び、そしてドラッグレースで頂点を見た。

「今でもわたしの根底にはゼロヨンがありますね。タイムがすべて。R35でも一時期はドラッグレースにハマっていましたよ」

 ドラッグフェスティバルでは9秒075をマーク。R35もプロペラシャフトやドライブシャフトが壊れた。限界まで試してみないとわからない、GT-Rの弱点を知るためにもゼロヨンは必要だったのだ。

「全国大会で優勝したR32は今も走っていますよ。一時期、10年ほど眠っていたのですが。たまたまそのオーナーがフラリと来て、また走るわって。今では8秒852までタイムを縮めています」

 かつて自らのR32を手に入れた当初はブーストアップのやり方すらわからなかった。そんな状態から今では8秒台という驚異の速さを見せるRB26DETTを作るまでになった。VR38DETTを搭載するR35でも速さを誇れるまでになったのだ。

 浜原代表は話す。

「そのときの最前線のクルマを触っていくことが、生き残る道だと思っています。今ならスープラやスカイライン400Rなども対応できるような体制にしています」

 GT-Rが時代の最先端にいたからこそ、浜原代表はここまで心酔し、研究し続けた。日本で初めてR35でローンチスタートしたのは自分だと思う、と語る。新しいことへの好奇心と、速さへの執念ともいうべき情熱。今やサーキットでのタイムアタックなどにも主戦場を広げる。

「もう静かなクルマがいいです。街乗りを楽しむならブーストアップが一番いいと思う」

 そう語る浜原代表だが、限界を知っているだけにその言葉の意味は深い。極限までパワーを追求してきたからこそ、クルマが悲鳴を上げ始める限度がわかっているし、必要不必要も知っている。

 だからこそ街乗りメインだとしても、ユーザーが求める楽しくて壊れないクルマ作りができるのだろう。しかし浜原代表は決して「落ち着いちゃった」ワケではない。今でもドラッグフェスティバルでのタイム更新を狙っているはずだ。

 浜原代表にとって、GT-Rはこの先もずっと「最先端の存在」であることを願うし、きっとそうあり続けるのだと思う。

(この記事は2020年4月1日発売のGT-R Magazine 152号に掲載した記事を元に再編集しています)

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