7代目を迎えた高級オープン
メルセデスは、7代目となる新型SLを公開した。従来のファブリックルーフと2+2レイアウトを継承し、4輪駆動と4輪操舵を標準装備している。
【画像】現行モデルやAMG GTとの違いは?【新型メルセデスAMG SLを写真で見る】 全104枚
R232世代のSLはメルセデスの高性能ブランドであるAMGが開発し、来年初めに欧州で発売される予定だ。ドライブトレイン、シャシー、電気系統などの主要コンポーネントは、2023年に発売予定の2代目AMG GTと共有することになっている。
スペースフレームと自立したボディ構造からなる全く新しいアルミニウム製プラットフォームを採用し、MRA(モジュラー・リア・アーキテクチャー)プラットフォームの先代SLに比べて、大幅に高い剛性を実現している。現行のGTロードスターが採用しているプラットフォームと比較しても、横方向の剛性が50%、縦方向の剛性が40%向上しているという。
AMGの最高技術責任者であるヨッヘン・ヘルマンは、「既存の構造体の上に構築することなく、ゼロからスタートすることができた」と述べ、新型SLのボディシェルの重量がわずか270kgであることを明らかにした。
AMGによると、新しいプラットフォームのさらなる利点として、エンジンとアクスルを従来よりも低い位置に搭載できることが挙げられるという。これにより、全体的な低重心化が図られ、ダイナミクスが向上した。
AMG最新世代のデザインに
初代SLが登場してから67年が経過した今回のモデルは、まったく新しい外観を採用している。
全体的なシルエットは小型のGTロードスターに似ているが、重厚な構造のフロントバンパーや、冷却の必要性に応じて開閉するルーバーを備えたパナメリカーナグリル、CLS風のシャープなアダプティブLEDヘッドライトなどを採用し、現行の6代目モデルとは一線を画すアグレッシブなフロントエンドを実現している。
また、高速走行時のフロントアクスルの浮き上がりを抑えるために、アクティブ・フロントスポイラーが装備された。エンジン前方のアンダーボディに隠されたカーボンファイバー製のスポイラーは、80km/hで自動的に40mm下がってベンチュリー効果を生み出し、ダウンフォースを強化する。
長いボンネットには2つのパワードームを備えており、初期のSLを彷彿とさせる。キャビンは、大きく曲線を描いたフロントガラスと、横転時にリアバルクヘッドから伸びる2つのロールバーで保護されている。ボディから突き出たフェンダーの下には、直径19インチから21インチのアルミホイールが装着されている。
また、4代目SL以来、初めて3層構造のファブリックルーフを採用した。先代のメタルルーフに比べて21kgの軽量化を実現したこのルーフは、センターコンソールのスイッチまたはインフォテインメント・ディスプレイで操作することができ、開閉操作の進捗状況がアニメーションで表示される。ヒーター付きのガラス製リアスクリーンを備えたファブリックルーフは、キャビン後部の専用ウェルに収納され、15秒で完全に折りたたまれるという。
リアは、大きな収納スペースを必要とするメタルルーフを廃止したことで、これまでのモデルに比べてよりスタイリッシュな印象を与えている。しかし、トランク容量はルーフを上げた状態で240L、下げた状態では213Lと、現行モデル(264Lと155L)より少なくなっている。
一方で、AMGは実用性の低下を補うために、後席に身長152cm(5フィート)までの乗員を乗せることができるとしており、これまでにはなかったファミリー向けの魅力を表現している。
4.0L V8で最高出力585ps
メルセデスAMGは、V8エンジンを搭載したSLの初期モデルとして、SL 55 4マチック+とSL 63 4マチック+の2モデルを発表したが、AUTOCARはハイブリッドのSL 63eをはじめとする複数のモデルを開発中で、今後1年以内に発表されるものと予想している。
エントリーモデルの「55」の名は、2012年に生産を終了したG 55以来の採用となる。パワートレインにはAMGの4.0L V8ツインターボエンジン「M176」を搭載。最高出力は、従来のSL 500に搭載されていた4.7L V8ツインターボと比較して26ps高い475ps、最大トルクは71.2kg-mを発揮する。
標準装備の9速トルクコンバーター付AMGスピードシフトMCTオートマチック・トランスミッションと完全可変式4輪駆動システムのAMGパフォーマンス4マチック+との組み合わせにより、SL 55の0-100km/h加速のタイムは3.9秒、最高速度は295km/hとされている。
SL 63は、AMGがより強力にチューニングした4.0L V8ツインターボのM177エンジンを搭載している。内部構造の変更やエアマニホールドの大型化、ブースト圧の向上などにより、最高出力585ps、最大トルク81.4kg-mを発揮する。9速ATと4輪駆動により、0-100km/h加速は3.6秒、最高速度は315km/hとされている。
ドライビングモードは、標準で「スリッパリー」、「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツ+」、「インディビジュアル」の5種類が用意されており、SL 63とオプションのAMGダイナミックプラスパッケージを装着したモデルには「レース」モードが追加される。
大型化・重量増もパフォーマンス向上
サイズは全体的に大型化し、全長4705mm(88mm増)、全幅1915mm(38mm増)、全高1359mm(44mm増)となっている。最も大きくなったのはホイールベースで、新しいリアシートを収めるために117mm延長され、2700mmとなった。
新しいアルミニウム製プラットフォームを採用しているにもかかわらず、4輪駆動の採用もあって重量が増加。最上位モデルであるSL 63は1970kgで、先代モデルに比べて125kgも重くなっている。
AMGは、開発の中でもSLのダイナミックな特性を高める作業に注力したと述べている。新開発の5リンク・ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションと、現行GTと同様のマルチリンク式リアサスペンションを採用。SL 55には従来型のアンチロールバーが、SL 63にはハイドロリックエレメントが採用され、いずれもアダプティブ・ダンピングが標準装備されている。
SL 63には電子制御式リミテッド・スリップ・リアディファレンシャルが装備されており、SL 55ではオプションのAMGダイナミックプラス・パッケージの一部として指定することも可能だ。
現行SLとの最大の違いはステアリングシステムにある。フロントアクスルの電気機械システムを再構成するとともに、初めて後輪ステアリングを標準装備。AMG GT Rに採用されているものと同様に、10km/hまでは後輪が前輪と逆方向に、100km/h以上では同じ方向に回転することで、「俊敏性と安定性を兼ね備えた」ハンドリングを実現しているという。
両モデルとも、フロントには390mm径のベントおよびクロスドリル付きスチール製ブレーキディスクと6ピストンキャリパー、リアには360mm径のスチール製ディスクとシングルピストン・フローティングキャリパーを装備する。また、オプションでフロントに402mm、リアに360mmのカーボンセラミックディスクを装着することも可能だ。
快適性とスポーツ性を両立
インテリアでは、EQS、Sクラス、Cクラスに続いて、11.9インチの縦型タッチスクリーンが採用されている。このタッチスクリーンは、12度から32度の角度調整が可能で、メルセデスの最新世代OSであるMBUXが搭載されている。専用のAMGディスプレイモードやソフトトップ・ディスプレイモードなど、さまざまな表示を選択することができる。
AMGツインスポーク・ステアリングホイールの後ろには、12.3インチの液晶メーターとヘッドアップ・ディスプレイ(オプション)を装備。サーキット走行中に速度、加速度、ステアリング角度、ブレーキ力など80以上のデータを1秒間に最大10回記録するAMGトラックペースプログラムもオプションで用意されている。
そのほか、タービン型エアベントや「航空機」をイメージしたインストゥルメントパネル、電動調整式スポーツシート、ルーフを下げた時の冷気を和らげるために前席乗員の頭と首に温風を当てるエアスカーフ機能などが搭載されている。
価格は未定だが、現行のAMG GTロードスターと同程度になると思われる。
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みんなのコメント
高速巡航というより大排気量で流すのを楽しむクルマだと思う。