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F1 Topic:トロロッソ・ホンダに一度許可された内容が直前になってFIAから却下された理由

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F1 Topic:トロロッソ・ホンダに一度許可された内容が直前になってFIAから却下された理由

 いったい、FIAは日本GP決勝レース直前にどんな伝達をトロロッソ・ホンダに伝えたのか。田辺豊治F1テクニカルディレクターは次のように説明する。

「すでにFIAから書類が出ているように、『Post shift ignition retard settings』を改善すべく、予選後に変更したいとFIAに申請しました。予選でコースイン後はマシンのセッティングは基本的に変えられないので、変更が必要なときはFIAに申請しなければならないからです。最初の申請は受け付けられず、FIAの指示に従って、必要な準備をおこなって再度申請し、FIAからOKが出ました」

F1 Topic:日本GP決勝グリッド上でFIAからトロロッソ・ホンダへ突然の伝達

 2度目の申請で、FIAがOKを出したものが、10月7日(日)の13時5分に出された書類ナンバー32の『Technical Delegate’s Report』だ。この書類は土曜日の予選後から日曜日のレース前までに、FIAの許可を得て、F1マシンの部品を交換したリストが全チーム分、掲載されている。このリストのトロロッソ・ホンダの欄には、ガスリーのマシンが『Post shift ignition retard settings』を変更したことが掲載されている。

 つまり、この時点でFIAは交換を正式に許可していた。

「ところが、グリッド上にFIAのスタッフが来て、『ダメだ。われわれが思っていた変更ではないので、レースで使用するのはやめなさい』と言われました。われわれも納得がいかなかったので、主張しましたが、スタートまで時間がなかったので、最後は従わざるを得ませんでした」(田辺TD)

 『Post shift ignition retard settings』とは、シフトチェンジ後の点火時期の遅延処理のことで、このセッティングはステアリング上のダイヤルの中に組み込まれている。

 FIAに変更を申請した際、田辺TDは「1回目は認められず、FIAの指示の下、必要な準備を行って認められた」と語っている。

 おそらく、FIAはステアリング上のダイヤルの中に、変更後のセッティングだけでなく、変更前、つまり予選で使用したセッティングも残しておきなさいと指示していたと考えられる。もしかすると、FIAは変更したセッティングに問題があると確認した場合は、元に戻すことを考えていたのかもしれない。

 点火時期の遅延処理は、点火タイミングを後ろにズラすことで爆発している時間を短くすることができ、エンジンの負荷(パワーとトルク)を抑え、オシレーション(エンジンとギヤボックスの共振)を軽減させ、エンジンの保護につながる。つまり、ホンダは安全性の観点から、FIAへ変更を申請していた。

 ガスリーはグリッドに着く際のレコノサンスラップで変更したセッティングで走行し、予選時よりもドライバビリティが改善されていることを確認して、7番手グリッドにマシンを停めた。しかし、その走行情報はFIAのスタッフも関しており、FIAはこの点火時期の遅延処理が結果的に、パワーユニット(PU/エンジン)の性能向上につながっていると判断したと考えられる。

 これに対して、レース後、レースディレクターのチャーリー・ホワイティングは、次のように説明した。

「予選後、FIAはトロロッソ・ホンダからパワーユニットのセッティングに関して、変更したいという要求を受けました。しかし、彼らの要求はトルクデマンドがあまりにもオリジナルとは異なるものだったため、われわれは認められないと拒否しました。そのあと、どの程度なら、変更できるかについて話し合い、そのレベルを指示したしていたのですが、グリッド上でわれわれが彼らのセッティングを確認すると、われわれが指示していたレベルではないものが使われていたため、オリジナルのセッティングのものに戻すよう伝達したのです。今回の一件は、トロロッソのミスだ」

 トルクデマンドとは、内燃機関のトルクの制御方法として、要求トルクに基づいてスロットル開度と点火時期とを協調制御することだ。

 ただし、今回の一件は、F1をスポーツとして見た時、法の番人であるFIAのあり方に関して、疑問が残る。

 なぜなら、このやりとりがグリッド上で口頭で行われた伝達だったからだ。筆者はそれを目撃していたから、状況をある程度把握していたが、ガスリーがそのような状況でレースを行なっていたことは、ほとんどのメディアも含め、サーキットにいた8万人以上の人たちはレース前も、そしてレース後も知らない。

 なぜなら、FIAからはレースが終わったいまも、いったん認めた『Post shift ignition retard settings』の変更を取り消したという事実を、文書として出ていないからだ。

 グリッド上で、セッティングを変えろ(元に戻せ)とFIAがチームに伝達することは、90年からF1に携わっている田辺TDも「初めてのことだった」と驚きを隠さない。

 そして、こう語った。
「今後、FIAと話し合います」

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