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なぜトヨタ型の“本格派“じゃない? 世界でマイルドハイブリッドが急増する訳

掲載 更新 26
なぜトヨタ型の“本格派“じゃない? 世界でマイルドハイブリッドが急増する訳

 欧州で48Vバッテリーを使った「マイルドハイブリッド」が急増している。

 日本仕様の欧州車も、2021年モデルからマイルドハイブリッドメインになっていく傾向。日本であればハイブリッドと言えばトヨタの「THS II」に代表されるフルハイブリッドだ。日産「e-POWER」やホンダの2モーター式(e:HEV)もフルハイブリッド。

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 マイルドハイブリッドは、トヨタなどのハイブリッドに対して、モーターの出力は低く、あくまでエンジンが主体となる、いわば簡易型のハイブリッドシステム。それにも関わらず、なぜ今、欧州を中心とする世界で急増しているのか。国沢光宏氏が解説する。

文:国沢光宏/写真:BMW、SUZUKI、Daimler AG、TOYOTA

【画像ギャラリー】本格HVに対するもうひとつのハイブリッド「マイルドハイブリッド」が世界で急増中

■なぜマイルドハイブリッドは急増している?

スズキのコンパクトSUV、イグニスもマイルドハイブリッドだ

 なぜマイルドハイブリッドなのか? 理由は簡単。2021年から欧州のCAFE(企業平均燃費)が厳しくなるからです。販売している全ての乗用車の平均燃費をWLTCモードで17.6km/Lにしなければならない。

 規制値未達となったら罰則金を支払わないのだけれど、けっこう金額になってしまう。大雑把に言って、17.6km/Lを10%下回る15.8km/Lだとすれば16万円!

 逆に考えると、15.8km/Lのクルマを17.6km/Lまで引き上げたら16万円払わなくて済む。皆さんが自動車メーカーならどうするだろう?

 一番簡単なのは、16万円以下の投資で燃費を10%改善させることだと思う。マイルドハイブリッドを見ると、正しく最低減の投資で燃費を改善しようというシステムなのだった。

 48Vのマイクロハイブリッドは非常にシンプルな構成になっている。日産やスズキのマイルドハイブリッドなどと同じく、オルタネーターをモーターとしても使う。

 減速時は発電機として回生エネルギーを取り、加速時に電気を流しモーターにします。14馬力くらいのモーターであれば、10~15%くらい燃費を改善させる効果を持つ。

 リチウムイオン電池を使うことにより、ハイブリッド用バッテリーも小型化できる。欧州車が採用しているシステムを見ると、普通の12Vバッテリーくらいのサイズしかない。

 また、配線に代表される電装関係のパーツは、高価な高電圧用じゃなくて通常規格で済む。つまり大がかりなアイドルストップ装置といったイメージ。

 オルタネーターを大型化し、小さいリチウムイオン電池と組み合わせることで燃費改善が出来てしまうのだった。10%改善で16万円の罰則金を払わなくて済むワケ。

■マイルドHV化はユーザーのコスト負担増も「なし」

メルセデスベンツは新型Sクラスにも追ってマイルドHVを追加すると公表している

 さらにユーザーからすれば燃費が10%良くなることで燃料コストも下がる。欧州なら20万km走ることだって珍しくないため、燃費良くなったぶんで回収可能。

 何と! ユーザーは16万円高くなったとしても、燃料コストの差でカバーできてしまう。環境にやさしく、総合コストで有利という理にかなったシステムだと思う。この状況、燃費悪いクルマでも同じ。

 10%燃費良くなれば、罰則金も車両価格の増加分より確実に少なくなります。ベンツSクラスや、車重1700kgある燃費悪いSUVだって採用する。

 ということで欧州車はCAFEが厳しくなる2021年仕様から軒並み48Vのマイルドハイブリッド車を増やし始めたのだった。

 日本勢も欧州仕様のマツダやスズキは大量生産によってコストダウンされたボッシュやコンチネンタルなどが開発&供給するヨーロッパ製のマイルドハイブリッドシステムを導入している。

■なぜ日本勢はフルハイブリッドが中心なのか

日本のメーカーはCAFEをクリアするためフルハイブリッドを導入しなければならない。RAV4クラスになるとマイルドハイブリッドではCAFE規制値をクリアできない

 翻って日本はどうか? ヨーロッパCAFEの場合、規制値を超えたら罰則金を支払う。けれど日本CAFEだと罰則金無し。だったら緩いのかとなればそんなことありません。

 国交省がクルマの認可権を持っており、基準をクリアしていなければ型式指定を受けられない(輸入車に対しては甘いため1車種あたり100万円払えば型式指定してくれる)。

 そこで日本のメーカーはCAFEをクリアするため、10~15%じゃなく30%以上の燃費改善効果を持つフルハイブリッドを導入しなければならない。厳しい課題ながら、鍛えれば鍛えるほど技術は伸びる。

 直近を見ると、トヨタなどRAV4クラスであってもヨーロッパCAFEをクリア出来るほどの素晴らしい燃費になった。

 参考までに書いておくとRAV4クラスの欧州車はマイルドハイブリッドを導入したってCAFE規制値の燃費に届かない。

 マイルドハイブリッドを導入した上で、1台当たり20万円以上の罰則金も支払わなければならないのだった。総合的に考えると日本勢が得意とするフルハイブリッドは圧倒的に強いと思う。

 実際、欧州市場を見ると今年になってトヨタのハイブリッドが爆発的に伸び始めている。来年はさらにトヨタ優位になると思う。

 ここまで読んで「なぜヨーロッパ勢はフルハイブリッドを作らないのか?」と考えるだろう。どうやらマイルドハイブリッドで時間稼ぎをしながら、電気自動車にバトンタッチしようとしているようだ。

【画像ギャラリー】本格HVに対するもうひとつのハイブリッド「マイルドハイブリッド」が世界で急増中

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みんなのコメント

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  • 欧州メーカーはこれまでハイブリッドを馬鹿にして大して投資せず、ロビー活動でディーゼル有利な法制度を作ることに腐心してきたから。

    今からフルハイブリッドを開発しようとしてもとても追いつけないし、サプライヤーからのパーツをポンづけできるマイルドハイブリッドやバッテリーコストは高いけど開発はより楽なEVでしばらくお茶を濁そうとしているんじゃないかな。きっと数年したらEVはライフサイクルでみると環境に悪いからとしれっと掌を返すと思う。
  • トヨタがストロングハイブリッドの基礎特許を固めてるのと、ヨーロッパのメーカーはFCV→EV移行がエコカーの流れだったしね。
    マイルドハイブリッドはBOSCHが持ってるので、既存エンジンとのマッチングも取りやすい。
    まぁたかが2馬力のモータージェネレーターで「ハイブリッド」なんて言わないで欲しいが。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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