軽自動車にはほとんどの車種にNA(自然吸気)エンジンと、ターボの2種類のエンジンがラインアップされている。
ではNAエンジン、ターボエンジンのどちらがいいのだろうか?
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そこで、軽のNAエンジンは非力で走らないのか? 軽にターボは不可欠なのか? 価格面も含め、軽のNAエンジン搭載車とターボエンジン搭載車を比較してみた。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカー編集部
背の高いワゴンタイプはほぼ全車にNAとターボをラインアップ!
軽自動車を選ぶ際、標準モデルかカスタム系、NAかターボかで悩む人は多いのではないだろうか?
今は新車として売られるクルマの40%近くが軽自動車になった。しかも軽乗用車については、45%がN-BOX、スペーシア、タントといった「スーパーハイトワゴン」で占められる。
全高が1700mmを超えるボディで車内が広く、後席のドアはスライド式だから乗降性も良い。
次の売れ筋がN-WGN、ワゴンR、ムーヴのような全高が1600~1700mmの「ハイトワゴン」で35%程度だから、軽乗用車の80%は背が高い。
これらの背の高い軽乗用車では、ほぼ全車にNA(自然吸気)エンジンとターボが用意される。ムーヴキャンバスのように、NAエンジンのみの車種(スペーシアはハイブリッドのみ)は珍しい。
そして新型タントの開発者は「標準ボディではNAエンジンのXが売れ筋だが、上級のカスタムはターボのRSが60%くらいを占める」という。
カスタムでRSの比率が高い背景には「カスタムを買うなら最上級のターボ」という気持ちもあるが、動力性能と車両重量のバランスも影響している。
NAとターボの走りの違いは?
新型タントのターボエンジンは64ps/10.2kgmと、NAエンジンに比べると実に12ps/4.1kgmも上乗せとなる
例えば新型タントの場合、軽量化を行ったとはいえ、NAエンジンを搭載する標準ボディのXとカスタムXの車両重量は900kgに達する。
全高が1700mmを超える背の高いボディに各種の安全装備、スライドドアの電動機能などを装着すると、ミライースのような背の低い軽自動車に比べて車両重量が250kgくらい増えてしまう。小型/普通車でいえば、1.3Lエンジンを搭載するコンパクトカーに近い重さだ。
ところがエンジンの排気量は660ccだから、コンパクトカーの約半分になり、動力性能が不足するのは当然だ。そこで背の高い車種では、ターボを装着するグレードが豊富に用意される。
通常の動力性能に大きく影響するエンジンの数値は最大トルクだ。軽自動車のターボでは、この数値がNAエンジンの1.6~1.7倍に増える。
新型タントであれば、NAエンジンの最大トルクは6.1kgm(3600回転)、ターボは10.2kgm(3600回転)だ。
ターボの数値はNAエンジンの167%に達する。ターボの最大トルクは1LのNAエンジンと同程度だから、車両重量に見合う動力性能が得られる。
その一方で燃費の悪化率は小さい。新型タントのWLTCモード燃費は、NAエンジンが21.2km/Lで、ターボは20.0km/Lになる。ターボの数値はNAエンジンの94%だから、悪化率は約6%だ。動力性能が1.7倍近くに達することを考えると、ターボの効率は優れている。
このような結果になる理由は、軽自動車の排気量が車両重量に対して極端に小さく、エンジンに過剰な負担を強いているからだ。
NAエンジンではアクセルペダルを踏み込み、高めの回転域を多用するが、ターボであれば比較的低い回転域から余裕のあるトルク(駆動力)を発揮する。エンジンの負担も軽減され、動力性能の割に燃料消費量を抑えられる。
NAとターボの価格差は平均6万~8万円
軽自動車では、各メーカーともに、ほとんどすべての車種でエンジンが共通化されるから、ターボは登録車に比べると価格が安い。
ターボを装着したグレードに、アルミホイールやパドルシフトなどの装備が加わる場合もあるが、これらを差し引くと大半のターボの正味価格は10万円以下に収まる。軽自動車のNA車とターボ車の平均的な格差は6万~8万円だ。
N‐BOXのターボ車が約15万~約20万円高いワケ
N-BOXは標準、カスタム系ともにNAとターボが用意されている
NAエンジンのカスタムG・Lホンダセンシングは169万8840円 。ターボエンジンのカスタムG・Lターボホンダセンシング(写真)は 189万5400円。その価格差は19万6560円
しかし、日本国内の最多販売車種となるN-BOXはターボ車の価格はNAに比べ15万3360~19万6560円ほど高くなっている。なぜN-BOXの価格差は平均な価格差より高いのか、見ていきたい。
N-BOXは車両重量が900kg前後に達するから、パワー不足を補う手段としてターボの装着が効果的だ。ターボの最大トルクは10.6kgmに達するため、NAエンジンの1.6倍に相当する。
一方、JC08モード燃費は5~7%しか悪化しないから、N-BOXではターボを装着するメリットが特に大きい。
価格差の一例を挙げよう。カスタムG・Lターボホンダセンシングの価格は、NAエンジンのカスタムG・Lホンダセンシングに比べて19万6560円高いが、NAエンジンにオプション設定される右側スライドドアの電動機能(オプション価格は5万4000円)も加わる。
シート生地も上級化して後席にはセンターアームレストが備わり、ステアリングホイールが本革巻きになってパドルシフトも装着した。さらにアルミホイールは14インチから15インチに拡大される。
これらのターボに加わる装備を価格に換算すると約11万円相当だから、ターボは8万~9万円と見積もられる。この価格は、ターボエンジンの平均的な相場とされる6万~8万円にほぼ合致する。
なおN-BOXの場合、後席のセンターアームレストはターボの専用装備だ。さらにシート生地がプライムスムース&トリコットに上級化されるのは、カスタムのターボに限られる。
つまりN-BOXのターボは、居住性や内装の質感を高めたいユーザーにとっても、魅力的なグレードとなっているのだ。
■N-BOXの場合
●NAエンジン搭載車
658cc直3:58ps/6.6kgm
JC08モード燃費:27.0km/L
価格:ベンチシート仕様/Gホンダセンシング=138万5640円、G・Lホンダセンシング=149万5640円。スーパースライドシート仕様/G・EXホンダセンシング=159万6240円ほか
●ターボエンジン搭載車
658cc直3ターボ:64ps/10.6kgm
JC08モード燃費:25.6km/L
価格:G・Lターボホンダセンシング=169万5600円(ベンチシート仕様)、G・EXターボホンダセンシング=174万9600円(スーパースライドシート仕様)、G・スロープLターボホンダセンシング(188万5600円)
◆NAとターボの価格差/同グレードの比較で15万3360~19万6560円
新型タントはXグレード比較でターボが9万7200円高
右がタントカスタム、左がタント。それぞれNAとターボエンジンをラインアップしている。Xグレード同士の比較で、ターボはNAに比べ9万7200円高
■新型タント
●NAエンジン搭載車
658cc直3:52ps/6.1kgm
JC08モード燃費:27.2km/L、WLTCモード燃費:21.2km/L
価格:L=130万6800円、X=146万3400円
●ターボエンジン搭載車
658cc直3ターボ:64ps/10.2kgm
JC08モード燃費:25.2km/L、WLTCモード燃費:20.0km/L
価格:Xターボ=156万600円
◆NAとターボの価格差/Xグレード比較で9万7200円
同じ車種でも標準ボディとカスタムではターボの正味価格に差が生じることもある。新型タントの場合、標準ボディのXターボはNAエンジンのXに比べて9万7200円高い。装備の違いはATレバーのメッキボタン程度だから、ほとんど減額にならない。
同じタントでも上級のカスタムにターボを組み合わせたRSは、NAエンジンのXに比べて8万1000円の上乗せだから、標準ボディよりも安い。
しかもRSではステアリングホイールとATレバーが本革になり、アルミホイールのサイズもカスタムXが14インチ、RSは15インチに拡大される。こうなるとターボの正味価格は実質6万円で、標準ボディのターボに比べると約4万円安い。
これはもともとカスタムの価格が標準ボディよりも全般的に割高で、ターボの価格上昇を吸収して低く抑える余裕があるためだが、ターボの価格も戦略的に決まることが多い。
デイズルークスのターボはたった3万2400円高
背の高い軽ハイトワゴンに属するデイズルークス
■デイズルークス
●NAエンジン搭載車
659cc直3:49ps/6.0kgm
JC08モード燃費:22.0km/L
価格:S=131万7600円、X=143万6400円、ハイウェイスターX=163万9440円、ハイウェイスターX Gパッケージ=171万1800円、ハイウェイスター X Vセレクション=170万4240円
●ターボエンジン搭載車
659cc直3ターボ:64ps/10.0kgm
JC08モード燃費:22.2km/L
価格:ハイウェイスターXターボ=167万1840円、ハイウェイスターGターボ=176万5800円
◆NAとターボの価格差/同グレード比較で3万2400円
その意味で一番注目されるのはデイズルークスだ(新型のデイズではなくスライドドアが付く背の高いルークス)。ハイウェイスターXターボの価格は、NAエンジンのハイウェイスターXに比べて3万2400円の上昇に抑えた。
しかもターボでは前輪のディスクブレーキが放熱効果の優れたベンチレーテッドタイプになるから、ターボの正味価格は3万円弱に収まる。
先代デイズと現行デイズルークスでは、NAエンジンのパワー不足が指摘され、エンジン負荷の違いによってデイズルークスの2WDではターボのJC08モード燃費がNAエンジンよりも少し優れている。NAエンジンは22.0km/Lだが、ターボは22.2km/Lだ。
そこでデイズルークスでは、動力性能と燃費の両面からターボが推奨され、NAエンジンの不利を補うことも視野に入れてターボの価格を割安に抑えた。
NAとターボの違いをあまり感じない? むしろNAのほうがいいクルマ
デイズはNAエンジン、NAエンジンのハイブリッド、ターボエンジンのハイブリッドの3種類のパワートレインが用意されている
■デイズ
●NAエンジン搭載車
659cc直3:52ps/6.1kgm
JC08モード燃費:29.4km/L、WLTCモード燃費:21.2km/L
価格:S=127万3320円、X=132万5160円
●NAエンジン+スマートシンプルハイブリッド
659cc直3:52ps/6.1kgm
モーター:2.0kW/40Nm
JC08モード燃費:29.8km/L、WLTCモード燃費=21.2km/L
価格:ハイウェイスターX=146万9880円、ハイウェイスターXプロパイロットエディション=156万7080円
●ターボエンジン+スマートシンプルハイブリッド
659cc直3ターボ:64ps/10.2kgm
モーター:2.0kW/40Nm
JC08モード燃費/25.2km/L、WLTCモード燃費:19.2km/L
価格:ハイウェイスターGターボ=154万9800円、ハイウェイスターGターボ・プロパイロットエディション=164万7000円
◆NAとターボの価格差/7万9920円(ハイウェイスターXとハイウェイスターGターボと比較)
このように軽自動車のエンジンにはターボが適するが、車種によってはあまり違いを感じなかったり、むしろNAエンジンのほうが快適なこともある。
その代表が新型になったデイズとeKシリーズだ。NAエンジンの最大トルクは6.1kgmだから平均水準だが、実用回転域の3600回転で発揮されるために扱いやすい。
一般的に軽自動車のNAエンジンは、アクセルペダルを踏み込むとスロットルが大きめに開き、少し騒がしいノイズを伴って唐突にスタートしがちだが、デイズとeKシリーズのNAエンジンは自然な印象だ。スロットルの早開き制御はしているが、あまり意識させない。
しかもエンジンの回転上昇が滑らかで、耳障りなノイズも抑えた。パワフルではないが、上品に回るから、何となく心地好くなって穏やかに走る気分にさせる。4000回転を超えると速度上昇が少し活発になり、パワー不足も感じない。
これに比べてターボは最大トルクが10.2kgm(2400~4000回転)だから、幅広い回転域で1Lエンジン並みの性能を発揮するが、回転感覚が少し粗くノイズも気になる。
デイズのターボの正味価格は、アルミホイールのインチアップなどを補正して約6万円だから買い得だが、運転感覚の違いにより、パワー不足をあまり感じないのであればNAエンジンを推奨したい。
NAかターボか? 選ぶ基準は?
個性的な顔のek x(ekワゴンはNAのみ)にもターボ車が用意されている。NAエンジン+ハイブリッドのMは141万4800円、Gは155万5200円。ターボ+ハイブリッドのTは163万6200円。NAとターボの価格差は8万1000円。ターボ、NAを選ぶ基準はあるのか、悩みどころ。実際に自分が使う状況、例えば高速道路やバイパスなど高速域を使う場合や、加速フィールのよさを求めたいならターボ車を選ぶべきだろう
以上のように軽自動車のターボは、ほかのカテゴリーに比べて大幅に安い。しかも動力性能の向上率は高く、燃費の悪化率は小さいから全般的に推奨されるが、運転感覚の違いと価格の割安感は車種によって異なる。
選び方として、自宅付近に坂道が多かったり、高速道路やバイパスを使う場合はターボを推奨する。車両重量に対する排気量の不足を明確に感じることが多いためだ。販売店の試乗車で、実際に近所の坂道を走るとよい。
平坦な市街地を中心に使う時は、NAエンジンとターボエンジンを乗り比べる。「NAエンジンで十分」なのか「ターボが欲しい」と思うのか、比較してみよう。
軽のターボはパワー不足を補う実用型 積極的に選ぶとよい!
ターボを選べるグレードの価格もチェックする。デイズルークスのようにターボがハイウェイスターのみの設定だと、割安に装着されても価格は167万1840円と高い。予算超過になることもあるだろう。
その点で三菱ブランドが扱う姉妹車のeKスペースなら、標準ボディのターボも用意され、各種の装備を充実させながらTセーフティパッケージは162万円だ。
このほか先に述べたターボの正味価格も確認する。多角的に検討して、NAエンジンとターボを選び分けたい。
選ぶ時に注意したいのは「ターボはスポーツ指向のメカニズム」という先入観を持たないことだ。軽自動車は車両重量の割にエンジン排気量が極端に小さいから、ターボはパワー不足を補うための実用装備になる。積極的に選択するとよいだろう。
なお軽自動車の開発者は「エンジンの排気量を800cc前後に増やせば、ターボを装着しないで優れた動力性能と燃費を両立できる」という。
全幅も100mmほど拡大すれば走行安定性と乗り心地を大きく向上できるが、必ず増税と引き替えにされてしまう。
すでに40年以上も続いている最高出力64馬力の自主規制も含めて、軽自動車はデリケートに扱わないと、ユーザーの不利益を招いてしまう。
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