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新型エクストレイルの見どころは“エンジン”にあり!──VCターボとは?

掲載 更新 4
新型エクストレイルの見どころは“エンジン”にあり!──VCターボとは?

4月19日、日産は、新しい「エクストレイル」を上海モーターショーで発表した。新型の特徴を世良耕太が解説する。

パワートレインはどうなる!?

日産自動車は4月19日、上海モーターショー2021で新型エクストレイルを発表した。「発売は2021年下期を予定」としているのみで、車両スペックの詳細は明らかにしていない。日産は同時に、「最新のe-POWERを中国における最量販セダンである『シルフィ』を皮切りに、2025年までに6車種に搭載する」と、発表した。

というわけで、中国で販売されるエクストレイルがどんなパワートレーンを積んで登場するのか? は、はっきりとわからない。公開された画像からヒントを探してみよう。インテリアの画像を見ると、シフトレバーは電気自動車の「アリア」(発表はされたが未発売)や「e-POWER」(シリーズハイブリッド方式)を搭載する新型「ノート」が採用した形に似ている。レバーの台座はノートのように宙に浮いた構造になっているので、パワートレインと機械的につながっておらず、電気的につながったバイ・ワイヤであることがわかる。

となるとやはり、ガソリン・エンジンで発電した電気でモーターを駆動して走るe-POWER? と、想像したくなるが、ステアリング・ホイールの奥にあるデジタルなメーターにはエンジン回転数を示すグラフィックがあり、6000rpmからレッドゾーンが始まることを示している。極めつけはバックドアで、「VC-TURBO」のバッジが付いている。

これらの情報から判断するに、中国版のエクストレイルは可変圧縮比ガソリンエンジンの「VCターボ」を搭載すると判断して間違いない。先代エクストレイルがそうだったようにエンジンは横置きなので、組み合わせるトランスミッションはCVTだろう。

ターボ・エンジンの課題

VCターボは世界広しといえども日産だけが実用化している、圧縮比可変システムを備えたエンジンだ。マルチリンク式可変圧縮比機構(Multi-link Variable Compression Ratio System:VCR)を採用することにより、圧縮比を14.0から8.0まで連続可変で制御する。良好な燃費と高出力を両立するのが狙いだ。

排気が持つエネルギーを利用してタービンをまわし、同軸にあるコンプレッサーを高速で回転させて吸気を加圧するターボチャージャーは、出力を向上させる手段として生まれ、発展してきた。空気の圧力を2倍に高めれば、排気量を2倍にしたのと同等の空気をシリンダーに取り込むことができて、そのぶん出力は向上する。

その代わり、燃費の悪化を覚悟する必要があった。出力を高めようとターボの働きを強くすればするほど、ノッキングしやすくなるからだ。ノッキングとは、点火プラグからの火炎伝播が届く前に燃焼室端部の混合気の温度と圧力が高くなって自着火を起こす現象だ。急激な圧力上昇をともなうため、“キンキン”という耳障りな音を発するだけでなく、ピストンの損傷など重大なダメージにつながるおそれがある。ターボエンジンは圧力の高い空気をシリンダーに取り込んで圧縮するので、混合気の圧力と温度の観点で、ノッキングを誘発しやすくなる。

ノッキングを回避する代表的な手段は圧縮比を下げることだ。2000年代前半まで現役だった日産の「VQ30DET」、3.0リッターV型6気筒ガソリンターボ・エンジンの圧縮比は9.0だった。ノッキングが問題になるのは急な上り坂を全開で走るような、いわゆる全開全負荷の状況で、市街地や高速道路を淡々と走るような部分負荷ではさほど問題にならない。この領域では本来、自然吸気エンジンと同等の高い圧縮比に設定することができる。

圧縮比は燃費と密接な関係があり、高くすればするほど、燃費は向上する。本来ならノッキングの心配がない部分負荷では自然吸気エンジンのような高い圧縮比で運転して燃費を稼ぎ、高負荷領域ではノッキングを回避するために低い圧縮比に切り換えたいところだ。

しかし、圧縮比は機械的に決まってしまうため、条件が厳しい側、すなわちノッキングしやすい側に合わせるしかなかった。従来のターボ・エンジンは圧縮比が低く、出力と引き換えに燃費を我慢せざるを得なかったのだ。

VCターボの特徴

燃費を我慢しないで済むようにしたのが、VCターボだ。自然吸気エンジンの燃費と、ターボ・エンジンの出力を両立する技術である。

日産のVCRはクランクシャフトとコンロッドの間に独自のリンク機構を介在させ、電動アクチュエーターによってリンクの位置関係を変え、ピストンとクランクシャフト間の距離を変化させる。距離の変化は約6mmにすぎないが、容積比を14.0から8.0の間で連続可変するには充分。ピストンとクランクシャフトの距離がもっとも大きいとき(ピストンが最も高い位置までストロークするとき)の圧縮比は14.0、ピストンとクランクシャフトの距離が最も小さいとき(ピストンが最も低い位置までストロークするとき)の圧縮比は8.0ということになる。

VCRを備えたVCターボは、ノッキングの心配が小さい部分負荷では14.0の高圧縮比で運転して燃費を稼ぎ、過給によってノッキングの心配が大きくなる高負荷領域では8.0の低圧縮比に切り替えて高い出力を引き出す。14.0と8.0の2段階切り替えではなく、運転状況に応じて連続可変で切り換える。日産のエンジニアはかつて筆者の取材に対し、「圧縮比を可変にすることで10%程度出力は上がり、燃費は良くなる」と、述べた。

マルチリンク式のリンク機構を設けることにより、圧縮比を可変にできること以外にもメリットが生まれた。上死点付近でピストンがゆっくり折り返すようなリンクの幾何学的配置にすることでエンジンの振動レベルを下げることができ、4気筒エンジンに不可欠のバランサーシャフトを採用せずに済ませることができた。

また、従来エンジンの場合、コンロッドは大きく首を振るような動きをするが、VCターボはピストンを支持するリンクが直立に近い状態で下降するため、ピストンの首振り運動が小さくなってシリンダー壁面との摩擦が小さくなり、振動も抑えられる。その結果、直列4気筒エンジンにもかかわらず、V型6気筒エンジンのようなスムーズな振動特性を実現出来るという。

日産のVCターボは北米で販売するSUVのインフィニティ「QX50」などが搭載する。2.0リッター直列4気筒ガソリンターボの「KR20DDET型」で、最高出力は200kW(272ps)、最大トルクは390Nmだ。中国版エクストレイルもこのエンジンを積むのだろうか。それとも新たなバリエーションか……。また、日本市場への投入時期や、投入するパワートレーンに関しては明かされていない。エクストレイルは北米ではすでに「ローグ(Rogue)」の名称で発売されており、2.5リッター直列4気筒ガソリン自然吸気エンジンを搭載している。中国へはVCターボを投入。では日本は? 発表を楽しみに待つことにしよう。

文・世良耕太

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みんなのコメント

4件
  • 2022年に欧州で発売するので、日本では2023年の年末までには発売するかな〜。

    フェアレディZは2024年以降に気が向いたら発売しま〜す。

    日本市場とかどうでもいいんで笑

    by 日産自動車
  • そこでなぜ日本も発売も同時に公表しないのかよくわからん 名前が違うだけのローグも含めて三度発表して同じ話題を繰り返してどうすんだ? 車種が多いと株主に錯覚させるためか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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