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80スープラがトヨタ変えた!? 30年前のクルマがなぜ? 名車がクルマ作りに活きた3つの理由

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80スープラがトヨタ変えた!? 30年前のクルマがなぜ? 名車がクルマ作りに活きた3つの理由

 今から30年前となる1993年に登場したのが直6、3LNA&DOHCターボを搭載した国内では2代目となる80型スープラ。2002年に生産終了となった後もトヨタ内部で富士スピードウェイでのドライバー用トレーニング車として長らく使われた。なぜ長らく80スープラをトヨタが選んだのか、レーシングドライバーとしての知見から松田秀士氏が語る。

文/松田秀士、写真/トヨタ、ベストカー編集部

80スープラがトヨタ変えた!? 30年前のクルマがなぜ? 名車がクルマ作りに活きた3つの理由

■今でも中古市場で人気の80スープラ

現行型GRスープラ(左)と80スープラ(右)

 80スープラが登場したのは1993年。2023年は80スープラ生誕30周年となるのだ。注目だったのは直6、3LのNA(自然吸気)とDOHCターボエンジンを搭載していたこと。80スープラは日本では2世代目となるが北米を含めたグローバルでは4世代目となる。

 グローバルでの初代スープラは1978年に北米で販売されたモデルでセリカのボディを流用していたためセリカスープラという名称だった。日本ではセリカXXとして販売されたのだが、北米で「X」は映画の成人指定であるX指定の意味を持ち、XX(ダブルX)は本格成人映画。それでスープラの名称が用いられたのだ。

 さて、ここからのお話は現行3世代目(日本では)GRスープラのひとつ前にあたる80スープラについて。現行GRスープラはBMW Z4との姉妹車という位置づけだが、トヨタ純潔のスープラは紛れもないA80型スープラ。販売されたのは1993~2002年。いまだその人気ぶりは衰えることがなく、中古車市場でも高値で取引されている。

■人気の秘密はヤマハ製? との噂もある直6DOHC!

前期型で最高出力280ps、最大トルク44.0kgmを誇った直6、3LDOHCツインターボの2JZ-GTEエンジン

 その80スープラの魅力はまず直列6気筒のエンジン。ヤマハとの共同開発との噂があるが、エンジン形式にGが入っているものはヤマハが開発したDOHCヘッドを搭載したエンジンだ。80スープラに搭載されたのはどちらも3Lの2JZ-GEと2JZ-GTE(Tが入るとターボ)でどちらもGが入っているのでヤマハ製シリンダーヘッド。

 特に2JZ-GTEはシーケンシャル方式のツインターボが採用されていた。シーケンシャルターボとは当時ポルシェ959などにも採用された低速用と高速用の2段階の過給方式を採用したターボのことで、高回転で突然パワーが発生するいわゆるドッカンターボ対策として、小径ターボと大径ターボをプライマリーとセカンダリーに配して中低速域からフラットなトルクを出すことが目的の技術。

 したがって、この2JZ-GTEツインターボエンジンを搭載したスープラは人気なのだ。その出力はいわゆる当時自主規制の280psを発生し、最大トルクは後期モデルでは451Nmを発生していた。BMW製エンジンを搭載した現行スープラ3L直6ターボの最大トルクが500Nmだから80スープラのエンジンが当時としては非常に高いレベルにあったことが窺える。

 ちなみに現行ターボモデルの最大出力は387psと80スープラの280psを凌駕するが、これは当時の自主規制ゆえ。最大出力はトルク×回転数から割り出されるものなので自主規制がなければ350ps程度は発生していたものと思われる。

 それを証明するかのように、ドリフト用などにチューニングしたエンジンには1000psも発生するつわものもいた。つまり、それだけ素性に優れたエンジンだったわけで、筆者自身ピックアップのよさと高回転域の抜けるような吹き上がりは非常に魅力的だったと記憶している。

■ベースはZ30ソアラだが、低重心化と前後重量配分の改善を実施

ゲトラグ製6MTを採用していた80スープラ(写真は輸出仕様)

 このエンジンにゲトラグ社製の6速MTがドッキングされ、もちろんエンジン縦置きのFRだからシフトレバーもトランスミッションに近く、剛性があってカチッと決まるスポーティな操作感も魅力だったのだ。

 80スープラのシャシーはZ30系ソアラのシャシーを流用している。前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用していて、フロントアッパーアームはアルミ鍛造でローマウントに改良。ソアラとの違いは全長が短くなったことにより、ガソリンタンクがトランク下に搭載されている点。

 ソアラはトランクを隔てるリアバルクヘッドがあるのでリアシート背後に配されていた。つまり、80スープラではガソリンタンクの低重心化と前後重量配分の適正化が行われたわけだ。

 その80スープラのハンドリングはレーシングドライバーの筆者から見ても当時としてはかなり進んでいた。タイトコーナーのターンインではブレーキの残し方によってはオーバーステアにも持ち込め、立ち上がりではリアガソリンタンクの重量を利用したトラクションがあった。

 ま、ガス満にしていればの話だが、ガソリンの量にハンドリングが左右されるところはポルシェ911のようで(RRのポルシェ911はタンクが前だが)ドライバーを選ぶようなプロっぽさも魅力だった。

 トラクションのあるリアサスだが、トルクがあってピックアップの鋭いエンジン特性のおかげでパワーオーバーに持ち込むことも難しくなく、その後のオーバーステア状態のコントロール性も悪くなかった。

■故・成瀬弘氏のテストドライバートレーニングに3度呼ばれた筆者

モリゾウの師匠であり、トヨタのマスターテストドライバーだった故・成瀬弘氏に呼ばれ、筆者は3度テストドライバートレーニングの場に招かれたという

 アクセルとステアリングで操る自在感が楽しかった数少ないFRモデルだったといえる。それゆえに2002年に生産終了となった後も、トヨタ内部で富士スピードウェイでのドライバートレーニング用として長く使われてきたのだ。

 余談だが、筆者は当時のトヨタマスターテストドライバーだった故・成瀬弘氏が催すトヨタ車内のテストドライバートレーニングの場に3度呼ばれたことがある。ちょうど筆者がインディ500(米国)に参戦していた時期で、超高速でのレースの世界観やセッティング、コントロールを伝えてほしかったのだろう。

 場所は袋井テストコース×2度、そして最後は真冬の圧雪された北海道の士別テストコースだった。どのトレーニングも筆者がドライブする横にテストドライバーが座り、筆者の好きなように走るというスタイル。

 当初は80スープラのベースともなった先代型となる70スープラを使用し、シャシーやエンジンにファインチューンが施されており、速度リミッターは解除されていた。成瀬氏の考えで前後を繋ぐシャシーが可能なかぎり真っすぐでなくてはいけないと、そのようにシャシーチューンが施されていたように記憶している。

 特に袋井の高速ターンでのハンドリングはすこぶるよかった。そして士別での圧雪ワインディング路ではスタッドレスタイヤで常にドリフト状態でコーナーを曲がる。筆者はサイドブレーキなど使わずフットブレーキと慣性でリアを流すドライビングスタイルなのだが、70も80も(確か両方に乗ったと記憶している)自在に曲げることができ、そのハンドリングに感動した。

 軽量かつローパワーのスポーツカーは日本にも存在するが、80スープラはミドルクラスのパワーマシンとして唯一ドライビングを学べるスポーツカーだったと考える。

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みんなのコメント

40件
  • トヨタの車が残れないのはトヨタの社風にあると思います。
    トヨタイズムのテレビコマーシャルでのこの言葉
    『元に戻したってしょうがない…』との言葉は、製造工場が浸水して泥まみれの工場に対しての言葉だったのかもしれないけど、「機械を修理する」考えが無いのだと思いました。
    資材などが不足している中で、トヨタは使い捨ての考え方だと思います。
    壊れた物は直さず、新しい物ヘ替えなさい。
    車の修理も、封印してアッセンブリー交換ですよね。
    修理出来ないと新車購入を促す。
    これじゃトヨタの古い車は残らないと思います。
    部品も作らないしね。
    名車はたくさんあるけど、残せないのが実状ではないでしょうか。
  • トヨタ車は、例えば見えない配線等の取りまとめ方は大雑把だった。
    日産車は、見えない配線も丁寧に取り回していた。
    そんな粋な日産車が好きだった。
    でも、見えないところは適当に、そしてみえるところや目立つところを大袈裟に声を出して売り続けたトヨタが世間から評価された。
    と、思っていたが、それも一面にしか過ぎず、日産車しか知らなかった私が、初めてカローラに乗った時は正直驚いた。
    その操作の簡易さ、静かさ、燃費の良さ。
    当時、収入もあったので、Y31シーマとカローラを所持したが、カローラは素晴らしい車だった。
    スープラは乗ったことがないが、当時のトヨタの人達が開発したのだからきっと素晴らしい名機に違いない。
    車はその時代の技術者の心が形になったもの。
    今の自動車、例えば、プリウスが30年後 走っていると良いね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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