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素敵な“ダンス・パートナー”はいかが? 新型日産フェアレディZ試乗記

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素敵な“ダンス・パートナー”はいかが? 新型日産フェアレディZ試乗記

フルモデルチェンジした日産自動車(以下、日産)の新型「フェアレディZ」に小川フミオが北海道のテスコースで乗った!

コントロールする楽しさは格別

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話題の日産フェアレディZがついに登場した!6月下旬からの発売を受けて、7月にジャーナリスト向けに試乗の機会が提供された。期待を裏切らないキモチのいいスポーツカーだ。

最高出力298kW(405ps)、最大トルク475Nmの3.0リッターV型6気筒エンジンをフロントに搭載した後輪駆動。シャシーは従来型をベースにしているものの、よりパワフルなエンジン搭載で、しっかり補強を入れるとともに効率的に軽量化。新開発の9段ATか、6段MTが選べる。

日産自動車が道東にもつテストコースで私が乗ったのは、ベーシックモデルと、上級グレードの「バージョンST」。前者は6段マニュアル変速機と、18インチタイヤを装着。リアにスポイラーはない。

バージョンSTは、ダイムラーが開発した9段トルコン式オートマチック変速機搭載モデルに乗った。日産自動車が特許を買って「8割ほど設計しなおした」(トランスミッションの担当者)という変速機だ。タイヤサイズは19インチだった。テールエンドに小さなスポイラーが品良く設けられている。

ひとことでいって、気持ちのいい仕上がりだ。ひとつはトルクたっぷりの加速感。発進時のごく低回転域から、スムーズに上の回転域まで吹け上がるエンジンにより、ぐんぐんと車両が加速していく感覚は、素晴らしい。このV6エンジンは、これまで「スカイライン400R」に搭載されてきたもので、Z用にさらにチューニングされている。

「開発にあたって言われたのは、最大トルクの発生回転数を、従来の5200rpmから、さらに引き上げてほしいとのことでした。それによって今回、最大トルクは5600rpmに。エンジン回転がレッドゾーンに達する最後まで気持ちよい加速感を味わっていただけるようにしています」

エンジン開発担当者はそう説明してくれた。

メーター内にはデジタルのシフトアップインジケーターが設けられている。エンジンの回転上限に達すると、照明が赤になる。ドライバーは正面を見ていても、目の端でその色が把握できる。まるでレース・カーだ。

シフトアップインジケーターは、とくにマニュアル変速機搭載モデルでは有効かもしれない。人工スウェードで巻かれたフォブ(シフターのノブ)を握り、エンジン回転を思うままにコントロールする楽しさは格別だ。

日産車をスポーティにチューニングするオーテックによると、Zの購買層のなかでMTを選ぶ人は4割いるとか。新型フェアレディZでは、マニュアルのシフターのゲート感をより明確にして、ミスシフトを誘わないようにするなど細かく手が入れられている。

ATも悪くない

いっぽうで、9段オートマチック変速機も、べつの魅力を持っている。パッと加速したいとき、ドライバーの意思に即座に反応して、適切にギアを落としすばやい加速を味わわせてくれるのだ。

私としては、低回転域からたっぷりとしたトルクをもつエンジンなので、ギアのアップとダウンにあまり神経質になる必要はないようにも思うのだけれど、なにはともあれ、気持ちのいいドライブを約束してくれる変速機だ。

ギアボックスを含めてドライブトレインの話を技術者に訊くと「高Gでドライブしても耐えられる設計」という言葉が出てきた。でも、日産自動車商品企画部でブランドアンバサダーを務める田村宏志氏によると「GT-Rが“モビル・スーツ”だとしたら、Zは“ダンス・パートナー”」だそうだ。

田村氏は、GT-RとZのチーフプロダクトスペシャリストを務めてきた人である。読者のもどこかで田村氏へのインタビューなどを読んだことがあるのでは? 定年にともない、現在の立場になっている。

気持ちよく取りまわせて、乗っていると、気分が昂揚するってクルマをめざしたということだろうか。テストコースのゆるやかなカーブが連続する個所でやや速度を落として走ると、気持ちのよい動きに自然と笑顔になってしまう。「そういうことか!」と、私も納得させられた。

欲しい人は急げ!

「従来のS30(1969年登場の初代フェラレディZ)やZ32(1989年登場の4代目)を愛してくださる熱心なファンのために作ったといっても過言ではありません」

新型Zのデザインのとりまとめをした、グローバルデザイン本部の入江慎一郎氏は上記のように語る。いっぽうで、フェアレディZは、ライバルが市場にいない独自のポジションを築いているとも。

私がみるところ、このところのフェアレディZは、ノーズがやたらぶ厚く見えて、スポーツカーに大事な“エレガンス”に欠けていたきらいがある。

新型は従来のシャシーに、さらに大きなエンジンを載せているにもかかわらず、車体先端のノーズからリアエンドにいたるまで、流麗なラインがうまくかたちづくられている。

「テールを下げるのは、スポーツカー・デザインのセオリーからいったら、あまり一般的でありません。でもそれがZのスタイリングのヘリティッジなので、そこを大事にしつつ、空力的にもしっかり405psのパワーを受け止めるようデザインしました」

入江慎一郎氏は説明してくれる。

キャラクターラインは、フロントフェンダーから立ち上がって、ドアハンドルあたりでもっともはっきりと見えるように形づくられている。見せたかったのは、内側の力のみなぎりを感じさせるようなリアフェンダーの強いふくらみだったそうだ。

フェアレディZは、まず「Proto Spec」が限定240台で発売される。「イカズチイエロー」の車体に「スーパーブラック」のルーフという2トーンの車体色をはじめ、イエローの対向ピストンのブレーキキャリパー、19インチの鍛造ホイール(ゴールド)、内装のイエローステッチといった内容。MTとATともに選べる。価格はともに696万6300円。

Proto Specのあと、「ベーシックモデル」(6MTと9ATともに524万1500円)、「バージョンS」(MTのみで606万3200円)、「バージョンT」(ATのみで568万7000円)、「バージョンST」(MT、ATともに626万2500円)とモデルが続く。

あいにく、部品の供給不足のため、日産自動車では7月19日、今回の新型フェアレディZの受注を停止と発表した。「再開は未定」(広報部)とのこと。驚く、というか、せっかく出来のよいモデルだけに一刻も早い事態の回復を祈るばかり。7月中は注文をとるともいわれているので、すぐ欲しいひとは急いだほうがいい。

文・小川フミオ

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