この記事をまとめると
■名車に長年受け継がれているデザインの特徴を3つ紹介
「R」でさえもメジャーに感じる! NSXの見かけたら奇跡レベルの「激レア」グレードたち
■ジープの「台形フェンダー」やランドクルーザーのボンネット凹みは機能的な意味がある
■NSXのロングテールはトランクを確保するためではなく空力性能に関係していた
名車に受け継がれる伝統的な形状の意味を考える
当たり前の話だが、自動車のスタイリングはかっこよく作ればいいというものではない。求められている機能を満たしつつ、そのうえで魅力的なルックスにしていくものだ。実際、量産車のデザインは、スタート段階でパッケージを決めることから始まるのが常だ。もちろん、スーパーカーやエキゾチックカーのようにスタイリングこそ最優先という商品企画であれば、スタイリングのためにパッケージが犠牲になることもあるだろうが……。
さて、そうした機能がカタチを作り上げるという意味で、象徴的なのはジープファミリーに共通するフロントの「台形フェンダー」がある。いまやフォルムとして台形フェンダーを採用しているのはジープ・ラングラーくらいだが、それ以外のクロスオーバーSUVスタイルのジープファミリーにおいてもフェンダートリムに台形モチーフが採用されている。
この台形フェンダーは、第二次世界大戦時に開発された初代ジープにルーツがある。
フェンダーの上部を平らにした理由については「そこにタイヤを載せても安定させることができ、ジープを重ねて運べるようにするため」という話がまことしやかに伝わっている。たしかに、「第二次世界大戦/ジープ/輸送(WW2/JEEP/Shipping)」とネット検索すると、初代ジープを重ねて運んでいる画像を見つけることができる。そのとき、フェンダーにタイヤが乗っているのは間違いない事実だ。
とはいえ、車体を重ねて運ぶための設計上のポイントとしては、フロントウインドウを畳める仕様にしていることのほうが意味は大きい。
さらに、木箱にジープを詰めて運ぶ際に外したタイヤがキャビンに収まるパッケージであったり、ステアリングホイールを外せる仕様にしていたりなどなど、軍用らしく輸送を考慮して設計されている。
そうした狙いのひとつとして上部が平なフロントフェンダーが採用されたというのは偶然ではなく必然であったろうし、それがジープの伝統になっているのは自然な話だ。
単なるデザインではない機能的に意味ある形状
さて、ジープに匹敵するクロカン四駆の国産ブランド、ランドクルーザーは、これから「意味あるカタチ」を伝統にしようとしている。
2021年夏にフルモデルチェンジしたランドクルーザー(300系)のエンジンフード中央には凹み形状があるが、これは単なる意匠ではない。トヨタいわく『衝突安全性能と前方視界の両立』のために設けられた凹みなのである。
しかも、これは現行ランドクルーザーが初採用した形状ではなかったりするのは、ご存じだろうか。じつは生産終了したランドクルーザープラド(150系)においても、2017年9月にマイナーチェンジした後期型から、エンジンフードの先端を凹ませることで『前方視界に配慮した形状』としている。
ランドクルーザー250では、ここまであからさまな凹みを設けているわけではないが、やはりエンジンフードの中央付近は低くなっているのが確認できる。サバイバル性が期待されるランドクルーザーだからこそ、少しでもリスクを減らすよう前方視界を確保するデザインとしていることに意味があるといえる。
ところで、国産車の歴史において、かなり誤解されていると感じるのはホンダのスーパーカーNSX(初代)のフォルムだ。
そのロングテールについては「ゴルフバッグを収められるトランクを設けるため」という話が都市伝説的に広まっているが、ロングテールは空力特性を考えての形状というのが公式見解だったりする。
それはホンダだけのアイディアというわけではない。1980年代の名レーシングカーとしてル・マン24時間耐久でも勝利したポルシェ956LHが知られているが、名前の最後につくLHは「Langheck(Long Tailの意)」の略称であり、高速での空力性能を高めるためにロングテールを採用したというのは有名な話だ。
なお、初代NSXの後期型においてはコブ状の固定式ヘッドライトに変わったことが一部のファンから不評だったりするが、あのヘッドライトカバー形状や、同時に変更されたフロントバンパー形状は、いずれも空力から導き出されたデザインであり、そこにも機能的な意味があったことは言うまでもない。
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