■欧州の排ガス規制が影響?
「日産が欧中日で新規エンジン開発終了へ」
2022年2月7日、一部報道でこのニュースが流れ、日本の日産ユーザーもドキッとしたことでしょう。
その翌日、日産は2021年度第3四半期決算発表記者会見を開きました。
質疑応答では、記者から「昨日の、欧中日で段階的に新規エンジン開発を終了するというニュースについての事実確認をしたい」との質問が出ました。
これに対し日産代表執行役最高執行責任者(COO)のアシュワニ・グプタ氏は「ICE(Internal Combustion Engine、内燃機関)は欧州向けには(新たに)開発しません。なぜならば、(欧州の次期排ガス規制である)ユーロ7が入ってきますと、お客さまは(EVに比べて)はるかに高い金額をガソリン車に支払わなければならないからです」と明確に答えました。
ユーロ7については、2020年から具体的な内容について協議が本格化してきましたが、欧州自動車工業会(ACEA)は2022年1月28日、ユーロ7を2025年から2026年に実施するとの提案書を公開しています。
欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が強く推進する欧州グリーンディール政策は、2035年までに、欧州で販売される新車はZEV(ゼロエミッションヴィークル)になることを目標に掲げています。つまり、新車販売できるのはEVまたは燃料電池車に限定されます。
これを受ける形で、ユーロ7の規定が決まったといえるでしょう。
日産は、こうした欧州市場の動向を精査したうえで今後の欧州戦略を決めたといえます。
なお、グプタ氏は「ICE」という言葉を使っていますが、一般的な解釈としてICEは純ガソリンエンジンと純ディーゼルエンジンを指し、ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車は含みません。
グプタ氏の回答は、さらに続きます。
「しかしながら、市場によっては、お客さまの声や事業の観点から、(需要があれば)例えば日本では『フェアレディZ』にツインターボエンジンを搭載し、またアメリカの『ローグ』(日本では『エクストレイル』として発売の可能性があるSUV)は1.5リッターの可変圧縮(VC)ターボを発売しています」として、仕向け地によっては、市場ニーズや法規制対応による「微調整」があったとしても、純ガソリンエンジン車の開発は継続することを約束しました。
また、別の質問に答える形で「中国では今後、e-POWERを拡充する」とも言及しています。
ただし、一部報道にあった、中国や日本でもICE新規開発の段階的な削減や終了についてははっきりとした回答をしませんでした。
あくまでも「お客さまありき」「事業性ありき」を基本路線として国や地域に今後も対応する姿勢を崩しませんでした。
■顧客第一主義に真正面から向き合う体制に
このように、日産は「お客さま第一」を最優先する経営体制に変わったという印象が強くあります。
過去十数年間の日産の歩みを振り返ってみると、ゴーン体制が進むなか、グローバルで規模拡大路線を強く打ち出したことで、新車の供給過多や生産工場の稼働率低下に陥り、例えばアメリカ市場では大幅な値引き販売によってディーラーの経営を圧迫してきました。
また、製造台数と販売台数を追う体制のなかで、既存車の継続を優先する流れが生まれてしまい、新車の市場導入サイクルがかなり長くなっていました。
内田社長体制のもとで事業構造改革計画「NISSAN NEXT」を打ち出し、経営を「量から質へ」と大きく転換していきました。
新車開発についても、約束した18か月で12モデル導入をしっかりと実現し、それらの新モデルは米国、中国、インドなど海外での販売が好調です。
日本では「ノートシリーズ」が2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得し、販売も順調に推移しています。
筆者(桃田健史)は長年にわたり、世界各国で日産を商品面や経営面など多角的な視点で定常的に取材してきましたが、この2年間で日産は明らかに大きく変わったという感想を持っています。
今回の欧州向けICE新規開発終了についても、2022年1月27日に実施したルノー・日産・三菱連合の2030年に向けたロードマップ発表という大枠のなかで、しっかりと説明がつくと感じました。
このところ、日本市場向けには輸入車のEV攻勢が強まっており、テスラの販売も拡大しています。
「リーフ」を擁して、日本はもとより世界に対しEV新時代を築いてきた日産ですが、新経営体制では、単にEV拡大路線を敷くのではなく、ユーザーの声、ディーラーの声に真摯に向き合いながら、市場全体に対するベストソリューションを提案する姿勢が明確になってきました。
日本の日産ラインナップでは当面、第2世代e-POWERがパワーユニットの中核となり、市場の期待が高い次期エクストレイルを含めたさまざまなモデルに搭載されることでしょう。
さらには新型「アリア」に継ぐ、日産らしいさまざまな新型EVにも今から期待が高まります。
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みんなのコメント
服もトレーも食べてる魚も暖まる石油ストーブも必要不可欠な物を精製してる。
その過程ではガソリンが必ずできてしまうわけで
EVに切り替えたところでガソリンダブつき問題はまったく触れられない。
ガソリン車を槍玉にあげたカーボンニュートラルは詰んでます。
なぜにこの記者、今回明らかになった事実をわざわざボカ、今後の日産によるエンジン開発継続に含みを持たせるのか?
当該の日本経済新聞記事は、日産が「日本、欧州、中国(向け)においては、今後はもはや新たなエンジン開発を行わない」と明記している。
そして翌日の日産COO答弁も、これを全く否定していない。
以上がすべて。
逆に、今後も米国向けや新興国向けについてのみは、改良型の新エンジンが開発・実用される余地だけはあると言うことだが。