ジャガーが遂に発表した新型「タイプ00」はいかに? 実車をイギリスで見た小川フミオがリポートする。
ベントレーより少し下のポジションを目指す
ジャガーが新型タイプ00(ゼロゼロ)と、名付けた豪華なBEV(バッテリー式電気自動車)を、2024年11月に披露した。全長5.0mを超える余裕あるサイズの2ドアクーペで、なにより、「これがジャガー?」と、驚くデザインだ。
新型タイプ00がメディア向けに公開されたのは、ジャガー・カーズが本社を置くイギリス・ゲイドンにて。12月に予定されている「デザイン・マイアミ・バーゼル2024」での一般公開に先駆けてだ。
集まったメディアの前でベールをはがされた姿は衝撃的だった。今までのジャガーのイメージとあまりに違っていたので、場内は一瞬、水を打ったように静まりかえった。
最初の驚きは2ドアクーペだった点。ジャガーはまず4ドアGTとして(2026年に)バッテリー駆動のEVを発売予定としていただけに、その先に登場すると思われるクーペが姿を現したことが、驚きだった。
デザインも、斬新すぎた。フロントには、ジャガーのシンボルともいえた大きなラジエター冷却用開口部がなく、細いスリットが無数に入ったフラットな長方形がその位置に据えられている。ヘッドランプも細いスリットで、点灯して初めて存在が知れる。
リヤにまわっても、フロントと同様の長方形のモチーフが大きな存在感を主張。ファストバックのキャビンは、通常ガラスのウインドウがはめこまれる位置もスリット模様のボディパネルで、後方確認はカメラで行う。
「プロポーションは、ジャガーの伝統を守りました」と、ブランドデザインダイレクターのリチャード・スティーブンが、現場で説明した通り、23インチの大径ホイールと組み合わされた大きなタイヤを四隅に配し、ロングボンネット、後輪の上に座るような後退した着座位置は、まさにイギリスのスポーツカーそのもの。
キャビンとはディヘラルドドアを開けて出入りする。「ローデンローズ」と、呼ぶ塗色の車体と組み合わされたインテリアは白色中心。内外装とともにブラス(真ちゅう)を思わせるメタリックな質感のプレートがアクセントとして使われている。
ただし、これは“デザインビジョン”なのだと、スティーブンは言う。つまり、オールラインナップをフル電動化するジャガーは、そのタイミングで、これまでより上の市場への移行を画策しているそうだ。「ベントレーより少し下のポジション」という言葉が、スティーブンから出た。
そこで、“ジャガーはここまで大胆なことをするつもりがある”という声明が今回の新型タイプ00なのだ。ちなみにタイプ00の数字の意味は、ひとつめのゼロは温室効果ガス排出量ゼロ。もうひとつのゼロはここがリセット。あたらしいジャガーが始まると意味をこめて名付けたという。量産化されてもおなじ車名になるかは不明。
「ジャガーはかつて期待を裏切る大胆なモデルで名声を博しました」。チーフクリエイティブオフィサーのジェリー・マガバンは、1961年発表のスポーツカー、「Eタイプ」を例にあげる。「タイプ00はその”伝統”を守ったのです」と、続けた。
そして、前出のスティーブンは、「ジャガーは決して大きなブランドではありません。そこで市場の注目を集めるには、大胆で、かつ自分たちの信念を強く打ち出すプロダクトが必要なのです。市場に多少の変化があっても、ゴールはBEVだと思っています。私たちは“超”がつくぐらい高級なBEV専用のブランドになるという方針を変えていません」と、話す
「これからブランドをどうしようというのかと、周囲から尋ねられるたびに、私は『信念を貫き通す』と、答えてきました」
ブランドロゴを新しくし、「リーパー」と呼ぶジャガー・マスコットのデザインも「スマートメディアでの展開を念頭に」(担当デザイナー)と、二次元的なデザインへ変更。新しいジャガーが狙うのは、「より若くて、デジタル環境に慣れ親しんだ富裕層」(スティーブン)だそう。
もちろん、430マイル(約690km)に達する一充電あたりの走行距離など、BEVの重要な性能はしっかり追求。価格は未定だが、2万英ポンド、1英ポンド=190円として約¥38,000,000だ。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)
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