自動車ジャーナリスト「桃田健史」氏のキャンピングカーライフをあれこれ紹介していくこのコーナー。今回は「番外編」として「コンちゃん」ことハイエースに人気のヨコハマタイヤについてのお話をお届けします。
商用車用タイヤと乗用車用タイヤの違いとは?
連載【桃田健史の突撃! キャンパーライフ~コンちゃんと一緒】第3回「初の長距離移動、福井への旅 往路編」
空前のキャンパー(キャンピングカー)ブームに沸く、日本市場。もともと、2010年代に入ってからアウトドアブームが徐々に広まり始め、SUVやミニバンの需要が伸び、また商用バンをトランスポーターとして利用するトレンドがあったところに、コロナ禍となり新たなるマーケットトレンドが生まれた。
三蜜回避やリモートワークの観点から、本格的なキャンピングカー購入や、身近なクルマで車中泊するために各種グッズを買い揃える人が一気に増えてきた。そうした中で、改めて注目が集まっているのは、トヨタ「ハイエース」だ。キャンピングカーの世界では、バンコン(バンコンバージョン)と呼ばれる領域でハイエースは圧倒的な人気を誇る。
ここで大きな課題となるのが、タイヤだ。
ハイエースのような商用バンの新車装着タイヤは、LT規格(日米のライトトラック規格、欧州ではC規格「コマーシャルヴィーク規格)であり、これを一般的なSUVやミニバン向けタイヤに交換すると車検が通らないのは当然ながら、積載量が多い場合の走行安定性や安全性に問題が生じる場合がある。そうした中で、日系メーカーではTOYOとYOKOHAMA、また海外メーカーではGOODYEARが日本国内でLT規格(C規格)における性能の高いタイヤを販売している。
さて、この度ハイエース・キャンパーアルトピア―ノ(神奈川県KTグループ・モビリティ神奈川)を使い、YOKOHAMA PARADA PA03による長期テストを行うことになった。
テストの経過については、連載企画「桃田健史の突撃!キャンパーライフ ~コンちゃんと一緒」にて報告していく予定だが、タイヤガーデン戸塚(横浜市泉区)タイヤ装着のタイミングで、オンライン会議システムを使って横浜ゴム関係者に話を聞いた。
ご対応いただいたのは、消費材製品企画部 製品企画1グループ グループリーダーの小畑恒平氏と、タイヤ第一設計部 設計3グループ グループリーダーの根本雅行氏のお二人だ。
以下、一問一答で箇条書きとする。
Q)そもそも、商用バン向けにホワイトレタータイヤを開発しようと考えたキッカケはどこにあり、実際の開発はいつからでしょうか?
現行の200系はカスタムユースが多く、乗用車感覚で使用する層が増えてきたと認識していました。ハイエース向けを意識したPARADA PA03の発売は2015年夏ですが、開発を始めたのはその約2年前です。18インチについては、2020年8月に発売しています。
Q)もう少し深堀りして、200系ユーザーのタイヤに対する意識についてどう分析しているのでしょうか?
タイヤサイズで見ると、大きく2つのユーザー層があります。ひとつは、ノーマルから1インチから2インチアップとなる16と17インチ。もうひとつが、3インチアップの18インチ以上です。
前者の場合、普段使いでの実用性と、見た目のバランスが重視されます。耐荷重と耐久性と、ドレスアップのバランスですね。選ぶブランドとしては上級志向があり、この点でYOKOHAMAブランドとの整合性があります。また、トレッドパターンでは、商用車系より乗用車系を好む声が多くあるのも事実です。一方で、18インチ以上になると、リーズナブルな価格を求める傾向が強くなります。
Q)具体的に、どういったユーザーなのでしょうか?
特に、16インチから17インチのユーザー層は、大きく2つに分かれています。ひとつは全体の60%程度を占める、個人事業主です。平日は仕事で使い、休日はプライベートで使う。カスタムを好むのは30代から40代が中心で、仕事での利便性と見た目を重視する傾向があります。もうひとつが、趣味の領域でして、サーフィンやオートバイなどのトランスポーターとして、またキャンピングカーとしての利用がこれにあたります。
Q) そうしたキャンピングカーなど、キャンパーの需要がここ最近、一気に増えてきている印象がありますが、こうした社会現象をタイヤメーカーとしてどう捉えていますか?
いまは(クルマ関連で)一番話題性があるが、このトレンドが今後も右肩上りで長く続くのかはどうかは、これから先の動向は不透明だと思います。ただし、Withコロナという観点では、中期的に定着するかもしれないですね。
Q) 海外でもPARADA PA03は発売しているのでしょうか?
はい、東南アジアで、特にタイではハイエースのコミューターとして需要があります。その他ではニュージーランドでも需要がありますね。
Q) では、話を技術面に移します。そもそも、LTタイヤの構造は一般的なタイヤと比べてなにがどう違うのでしょうか?
商用車のLT規格タイヤは、空気圧がとても高いです。乗用車では200KPa程度ですが、LT規格ではその2倍の400KPa程度に設定しています。これは積載による大きな過重に対応するためで、LT規格ではカーカスやスチールベルトなどタイヤの部材が乗用車向けと異なっています。
Q)その上で、PARADA PA03の開発ポイントは何でしょう?
ドレスアップを重視し、見た目にもこだわる商品であることです。そして乗用車向けタイヤのような、静粛性や操縦安定性などの快適性能を重視しています。
Q ) 具体的な開発プロセスはどのように行われたのでしょうか?
クルマの基本性能である、走る・曲がる・止まるを基本に、積載量が重いなど最も厳しい条件での安全性を確保するため、様々な部材を変更しながらチューニングしていきました。
Q) 結局、積載量の大きさから、ある程度硬さは必要になると思いますが、それについてはどうですか?
硬い部類ではあるのですが、いやな硬さではなく、(外部からの入力に対して)減衰の良いタイヤを目指しています。
Q)SNSなどの一般ユーザーの書き込みでは、PARADA PA03の基本構造はミニバン向けの改良という見方もありますが、実際のところはどうなんでしょう?
いいえ、基本構造としては、あくまでもLTタイヤありきです。高過重に対する高い内圧(空気圧)による部材が必要で、その上で乗用ミニバンのような(NVH:音・振動・突き上げ感)性能を出しています。
Q) 2015年発売以降、タイヤ構造などに関するマイナーチェンジはあったのでしょうか?
特にないですが、サイズのラインアップは増やしています。
Q)市場からの声はいかがですか?
静粛性や乗り心地の良さに対するポジティブな声が多く、ネガティブな声はほとんどないと認識しています。むろん、(商品性の違いから)他社との比較での声はありますが。
Q)PARADA PA03を最適に使用するため、ユーザーにどのような点に注意して欲しいですか?
タイヤの基本である空気圧の適正化に尽きますね。
Q)新たに、YOKOHAMAの独自路線として、PARADA PA03に14インチの165/55R14Cを設定しましたが、これは軽キャン(軽自動車キャンパー)の影響もあるのでしょうか?
軽キャンを含め、モーターショーや各種自動車関連イベントで軽カスタムが増えています。そうした中、タイヤガーデンや、タイヤ取り扱い店、そしてユーザーから「軽でインチアップしたい」という声が高まっておりまして、それに対応したカタチです。
以上のようなインタビューを行っている間に、PARADA PA03がハイエース専用設定のPCD 139.7インチの6ホールとしたRG-D2と組まれて、ハイエースに装着された。
そしてノーマルとの乗り味の変化を楽しみに、帰路についたのである。
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