F1に昇格する切符を掴むためには、ジュニアカテゴリーで結果を残し、運を掴むだけではなく、各F1チームの育成プログラムいずれかに所属していることが大きな要因となっている。
カート時代からF1チームの育成ドライバーとなるケースは珍しくなく、過去にはルイス・ハミルトンがマクラーレンの秘蔵っ子としてカートを戦っていた。直近では日本人のカートドライバーである松井沙麗がウイリアムズの育成プログラムに加入した。
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充分なサポートを受けることができるという面でも、F1を目指す若手ドライバーとしてはカートなどキャリアの早い段階からその流れに乗ることも重要だが、育成ドライバーに選ばれるためには何が求められるのだろうか?
ウイリアムズレーシングの育成プログラム“ウイリアムズ・レーシング・ドライバーアカデミー”を率いるレーシングディレクターのスヴェン・スミーツは、ドライバーのパフォーマンス以外の部分も重要な評価対象となると明かした。
そしてウイリアムズの場合は、F1チャンピオン候補を発見するためにカートコースで多くの時間を割き、若手ドライバーのスカウトを行なっているとスミーツは語った。
「もちろん、常に見ている。アカデミーでの半分の時間はカートに割いているよ」とスミーツは言い、次のように続けた。
「(ウイリアムズ育成の)ドライバーがF1アカデミーやFIA F3、FIA F2に出ていれば、彼らとより多くの時間を過ごすことになるが、この先10年~12年でチャンピオンになるドライバーを探すためには、現在10~12歳の子どもを探す必要がある。彼らがF1にたどり着くためには8~9年の下積みが必要だからね」
「カートコースへ行き、レースを見て、勢いのある若手がどうしているのかを最大規模のカートチームふたつと毎週話をする。カートには多くの時間を割いているよ」
ではF1チームは、どのようなポイントから原石とも言える将来有望なカートドライバーを見つけるのだろうか? 評価基準をスミーツに尋ねると彼は次のように答えた。
「色々な要素が組み合わさっている。まずは、カートチームに聞く。彼らのもとではアレックス・アルボンやシャルル・ルクレールが小さい頃にカートで走っていて、多くのドライバーを見てきた」
「我々は彼らからのアドバイスをもらい、ウイリアムズからレース週末にスタッフを送って、ドライバーの両親と話し合いをする。というのもパフォーマンスは重要な要素のひとつだが、教養も重要な要素だからだ」
「内面に良い教養が育まれているか、内省的かどうかを我々は非常に重要視している。チームが良くないからと言って自身のパフォーマンスを顧みず、チームを批判する10代の子どもを目にしても、そこから変わることもできる。しかし常に自身のパフォーマンスが関係している」
「『自分は手を尽くしたのか?』というところから考え始めなければならない。『チーム内で何が間違っていたのだろうか』などと考え始めることができるのは、自分が全てやりきったと正直に答えを出してからだ。こういった教養は若い頃から自然と身についているモノだと思う」
「色々なことが絡み合っているが、ウイリアムズに来た後は通常、ジェームス(ボウルズ/チーム代表)と話をする。我々がアカデミーに加入すべきだと考える全員とジェームスは会って話をしたいと考えているからね」
「30分か45分くらい話をして、何人かはシミュレータに乗せる。あまりにも若いととても難しいのでeスポーツ用のシミュレータを用意する必要があるが、彼らの中にはゲームがとても上手いドライバーもいる。現代っ子の彼らが上手いというのは既に分かっていることだけどね(笑)」
「カートチームが鍵を握っているが、我々もスカウトを送っている」
ウイリアムズの他にも、規模の大小はあれ、ほとんどのF1チームが育成プログラムを有しているが、その形態には変化が表れているとスミーツは考えている。有望な若手を大量に囲い込むアプローチから、少数精鋭で徹底的に育て上げるアプローチに変わりつつあるのだ。
ウイリアムズの育成プログラムの他にはない強みをスミーツに訊くと、彼は次のように答えた。
「我々と他との違いは、同年代のドライバーを沢山抱えないことだと思う。年代別にひとり、もしくは最大でもふたりのドライバーを迎え入れたら、我々はそれで締め切る。そのひとりかふたりのドライバーに集中して、彼らに全力を尽くすのだ。6名も迎え入れて、ひとりは良くて5名は解雇ということはしない」
「若い層でも、20名のカートドライバーを育成に入れるということはなく、2歳差程度で2~3人を育成に入れる。それが我々と他の一番の違いだと思う」
「他のアカデミーでも非常に似た方針に切り替え始めているのを目にしている。引き入れるドライバーを減らす一方で、それぞれに集中することで10~12歳という年齢からしっかりとしたサポートを行なうのだ」
ここ最近は、こうしたアプローチをレッドブルも取り入れており、2023年末にはレッドブルジュニアの“大量解雇”が行なわれた。
「これまで(レッドブルは育成ドライバーを)沢山抱えていたが、今では多くが去っていった」とスミーツは言う。
「彼らもそういうことを見ていたのだと思う。というのも、我々は予算の中で全てを行なう必要があり、我々のやっていることに全集中する必要がある」
「5分の1の確率になるよりも、助けすぎるくらいの方が良い。我々はそう考えているし、いくつかのチームは同じように考え始めているようだ」
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