トラブルが多発したものの3ローターのレスポンスに感激!
開幕1週間前にエンジンブローという悲劇からなんとか間に合わせたマシン!
「パンデムエアロ&3ローター仕様のFC3SがD1グランプリデビュー!」IMSAカラーは次戦に持ち越しも手応えを掴む!
以前、スクープした岩井照宜選手が今シーズンのD1グランプリシリーズで乗る3ローターのFC3S。IMSAカラーとなって完成したマシンを撮影しようと意気込んでいたウェブオプ取材班だったが、D1会場で待ち受けていたのは、ホワイトボディにスポンサーステッカーが貼られたFC3Sのエンジンルームを開けて、バタバタと作業している岩井選手だった。
話によると、開幕戦の1週間前に行なったセッティング走行でまさかのエンジンブロー! エンジンを組み直すことに時間を取られ、マシン製作がギリギリになってしまったという。連日の徹夜作業で何とかカタチにしたものの、筑波入りした時点では、まだエンジンセッティングすらできていない状態だったのだ。
「いや~僕自身もカラーリングは楽しみにしてたし、絶対カッコよくなるって確信があったから残念ではあるんですけど、マシンが間に合わないことにはどうしようもないんで…」と岩井選手。公式練習となった金曜日は、エンジンセッティングをしつつ水温上昇トラブルにも対応しなければならないといった状態だったのだ。
それでも翌日に行われた第1戦と、その次の日の第2戦はなんとか走行。結果はどちらも単走敗退という結果ながら「ロードスターよりも仕上がりが早いと思うし、3ローターの恩恵も感じられた。手応えというほどではないけど今後が期待できるよね」と、好感触を得られたようだ。
エンジンは、クロスポート加工された3ローターの20Bエンジンに、トラストのT88-34Dタービンの組み合わせ。開幕1週間前のセッティング中にエンジンブローしたため、エンジンを組み直して会場に持ち込むのが精一杯。金曜日の練習走行を使ってセッティングする状況だった。そのため、会期中はブースト0.7~0.8キロで500ps程度に抑えた状態で戦っていたそうだ。
エンジンは可能な限り後方となるようにマウントしたため「それが良かったのか、フロントヘビーは感じなかったっすね。それよりも2ローターと比べてトルクもあるし、なによりレスポンスがすごくよくて、マッドマイクがいつもブンブン吹かしている気持ちがわかった」と岩井選手はご満悦だった。
パイピングや作り物パーツのみならず、車両全体の製作はKP61スターレットやA35シャルマン、それに昨シーズンまで使っていたNA型ロードスターも手がけてた実績を持つ山口県のメイクヒロタが担当している。
ロードスターのときから効果があったということでオイルクーラーコアをふたつ連結して装着。しかし雨の筑波大会では油温が全然上がらなかったそうで「これからの季節には良いだろうけど、今回はやりすぎてたかも」と後悔していた。
パンデムのフロントバンパーは、もともとのフレームの先にパイプフレームを組んでマウント。特徴的な4連ライトもそのパイプフレームに取り付けられている。
岩井選手のD1マシン歴のなかでも初となるリヤラジエター化。ラジエターの前方にはATL製のフューエルタンクやコレクタータンクが搭載される。
しかし導風がうまくいっていなかったからか、練習走行では1周するだけで水温が90度オーバーになってしまう。「経路の問題なのかエア抜きもなかなかできなくて…」とハッチ部分の形状変更やレイアウトなどを検討する必要があるそうだ。
車高調は326POWERのチャクリキダンパーで、バネレートはフロント10kg/mmのリヤ5kg/mmの設定。ロードスターの時は、ワンオフパーツてんこ盛りにしたおかげで補修パーツの確保に苦労したため、極力純正を生かした作りだ。最初は左右の切れ角差の少ないメイクヒロタナックルを使っていたが、第1戦終了時点で現状ではイマイチと判断して第2戦では別バージョンに交換した。
ホイールはレーシングサービスワタナベのエイトスポークRタイプで、サイズは前後とも9J×17-13となっている。キャリパーは前後ともにプロジェクトμ製に変更されており、リヤはフットブレーキとサイドブレーキが別系統になっているタイプを装着。
タイヤは今シーズンからグッドライドのサポートを受け、スポーツRSの245/40-17を前後通しで履く。マシンの開発が遅れたため事前テストができない状態だったが「前からそんな印象はあったけどこのタイヤは雨でも調子よくてすごく乗りやすかった」と岩井選手。
金曜日の公式練習では、トラブルを解消したりエンジンセッティングに費やしたりしていたからか、TSUKUBA DRIFTの初日、シリーズ第1戦の単走決勝はグループ5位の総合26位で敗退。つづく翌日のシリーズ第2戦の単走決勝でもグループ6位の総合24位と追走進出することはできなかった。
「クルマの完成が遅れたこともあるし、FC3Sと326POWERの車高調の組み合わせも、リヤラジエターも、タイヤも、全部はじめてじゃろ。はじめて尽くしでトラブルもあったから結果は残せなかったけど、僕の中では手応えや可能性が感じられたデビューだったと思う。何よりも水温対策をキチッとしないといけないから次の十勝大会はお休みする予定だけど、エビスまでには対策するしカラーリングも完成したものが見せられると思うよ!」と岩井選手。
HOKKAIDO DRIFTの欠場は非常に残念だけど、その次のエビスといえば岩井選手とロードスターのコンビでなんども単走上位通過した実績のあるサーキット(岩井選手はニガテ意識しかないといっていたけども…)なだけに、マシンの熟成を期待したいところだ。
PHOTO:Mitsuru KOTAKE & Daisuke YAMAMOTO
TEXT:Daisuke YAMAMOTO
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