新車試乗レポート [2023.06.20 UP]
BMW iX1は人気モデルになりそうな予感がする【石井昌道】
文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス
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BMWは欧州メーカーのなかで早くからBEVに取り組み、電動化に積極的な姿勢を見せている。それと同時に、BEVだけに絞っていくのはリスクがあり、エンジン車やPHEV、水素燃料電池車も含めてさまざまな選択肢を用意しておく必要があるとも表明。
いまのところ2030年に世界販売の50%をBEVにするというのが目標であり、また製造工程やサプライチェーンなどでのCO2排出量削減を推し進める。2019年に対して2030年には、クルマの使用時は40%、製造工程は80%、サプライチェーンは20%を削減。最終目標は2050年のカーボンニュートラルだ。
そのBMWの日本市場における最新のBEVがiX1。現在のところ、BEV専用モデルはフラッグシップのiXに限られ、他のモデルはエンジン車やPHEVなどとプラットフォオームを共有し、ラインアップもX1のなかの一員としてのiX1という位置付けとなる。これでBEVのラインアップは、iX、iX3、i4、i7に続いて5車種となった。
BMW iX1
X1はBMWグループのFWD系プラットフォームであるULK2を採用。
電動化も視野に入れたものではあるのだが、バッテリー容量は66.5kWhと小さくもないが大きくもない。
おもなライバルを見ると、同じくエンジン車とプラットフォームを共有するメルセデス・ベンツEQAはまったくの同容量、BEV専用プラットフォームのアウディQ4 e-tronおよびフォルクスワーゲンID.4は最大77kWh(エントリーモデルは52kWh)といったところ。WLTCモードの一充電走行距離465kmとなっていて、比較的にハイパフォーマンスなモデルとしては標準的かやや優秀といったところだろう。
いまのところ前後ツインモーターによる4WDのiX1 xDrive30しかリリースされていないが、シングルモーターでパフォーマンスを抑えたエントリーモデル等ができれば一充電走行距離は500km台になるはずだ。
モーターは前後ともに最高出力140kW(190PS)、最大トルク247Nmで、システム総合では最高出力200kW(272PS)、最大トルク494Nmで0-100km/h加速は5.6秒とエンジン車よりも俊足でパフォーマンスに不足はない。急速充電の受け入れ能力は最大130kWで、90kWの充電器の30分使用で10%→55%が可能とされている。
BMW iX1
BMWのBEVのなかではもっともコンパクトで身近なモデルとなるiX1だが、走りはBMWらしくスポーティだ。車両重量は2030kgと軽くはないのだが、ワインディングロードではじつに軽快でハンドリングが楽しいのだ。BEVならではの重量配分の良さやxDriveの制御の賢さなどが相まって、ドライバーの意志に忠実な動きをしてくれる。
アクセルオフ時の回生ブレーキは、各メーカーによって効かせ方が様々だがBMWは走行中に切り替えられるのはDレンジかBレンジの2つで比較的にシンプルと言える。i3は回生が強く、一般的な走行ならばブレーキペダルをほとんど使わないで済むワンペダルドライブだったが、Bレンジはそれに相当する。初めて乗ると回生ブレーキが強すぎて戸惑うかもしれないが、右足の戻し具合で減速度を調整できるようになればペダル踏み替え頻度が少なくて楽になり、また下手なブレーキ操作よりもよほどスムーズ。とくにストップ&ゴーの多い街中に向いている。
Dレンジはそこまで回生は強くないが、設定によって低い、普通、高い、アダプティブと4種類が選べるようになっている。
BMW iX1
普通は、一般的なエンジンブレーキ相当で自然な感覚。低いでも回生ゼロのコースティングではなく、緩やかな回生ブレーキ。高いは結構な強度になりBレンジとほぼ同等。ただし、Bレンジは0km/hまで減速できるのに対して高いは15km/h程度で減速しなくなる。アダプティブは前走車に近づくと自動的に回生強度を高めるモードで、普段は回生ゼロのコースティング状態となる。好みによって選べばいいのだが、高速道路の巡行時などはアダプティブが楽で実電費も良さそうだ。
出来れば、パドルスイッチなどで走行中にも回生強度を選択できるとなお良しと思うのだが、いまのところBMWはその気はなさそうだ。DレンジとBレンジの切り替えはシフトセレクターによって行い、操作性は悪くないが、慣れるまでは視線を移動する必要がある。
2025年には次世代BEVのノイエ・クラッセの展開が始まる予定のBMWだが、現状のBEVも選択肢が広く性能にも満足できる。なかでもiX1は日本でも使いやすいサイズと身近な価格で人気者になりそうなモデルだ。
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