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「日産よ、あの頃を思い出せ!」スパルタンさが刺さりまくるマーチスーパーターボという傑作

掲載 更新 54
「日産よ、あの頃を思い出せ!」スパルタンさが刺さりまくるマーチスーパーターボという傑作

マーチRをベースに装備を見直したストリートスペシャルバージョン!

車高調に機械式LSDを組み込んだ峠仕様がアツい!

「日産よ、あの頃を思い出せ!」スパルタンさが刺さりまくるマーチスーパーターボという傑作

大きな開口部を持つフロントバンパー、フォグランプを内蔵したフロントグリル、ボンネット上のエアインテーク、リヤゲートのテールスポイラー。さらに、前後フェンダーには樹脂製モールが追加され、全幅も拡大されている。

そんな勇ましい外観が与えられたK10こそ、“日産の当たり年”と言われる1989年1月に登場したマーチの史上最速モデル、スーパーターボだ。

エンジンは前年発売された競技ベースモデル、マーチR譲りとなる930ccのツインチャージド直4SOHCのMA09ERT型。110ps/13.3kgmというスペックも共通だ。エンジンルームは狭く、スーパーチャージャー装着のためにパワステが犠牲になったというが、MA10ET型を搭載するマーチターボはパワステ標準装備だから、おそらく本当の話だ。

違いがあるとすればミッションで、5速MTは型式こそマーチRと同じRS5F31Vながら、ギヤ比とファイナル比が見直された他、3速ATも用意。早い話、スーパーターボはマーチRのストリートバージョンという位置付けだった。装備を徹底的に簡略化したマーチRに対して車重は30kg増えたが、それでも770kg(5速MT車)。

メーカーが送り出した市販車としては、圧倒的なパフォーマンスを誇ってたことは言うまでもない。

そんなスーパーターボをベースに峠仕様として仕立て上げられたのが取材車両。足回りはニスモのレース用を装着して、リヤスタビライザーを径が太いマーチR純正に交換している。

絶対的な制動性能が不足していてフィーリングもよくないブレーキは、フロントにRNN14パルサーGTi-R純正キャリパー&ローターを移植することで強化。また、LSDは純正ビスカス式に代えて機械式を組むなど、トラクション性能の向上も実現している。

この仕様で、峠ではEK9シビックRやDC2インテRと互角以上に渡り合えるというから、スーパーターボの実力は侮れないし、そこには車重の軽さが大きく効いてるのも間違いない。

フロントには幅広な14インチのダンロップ製Sタイヤを装備。

リヤは1サイズ細い13インチのスポーツラジアルという組み合わせがいかにも走り屋な雰囲気。これはターンイン時の回頭性を高めるためのセッティングだったりする。

マフラーが交換されてるくらいでエンジンは基本的にノーマルだが、それでも速さは十分だ。純正のデュアルテールに対して、大口径のシングルテールとされた社外マフラーは、メインパイプ径を拡大することによってパワーとレスポンスを向上させている。

ダッシュボード中央の3連メーターを始め、ダッシュボードは基本的にマーチRと共通。スーパーターボではステアリングホイールやシフトノブが異なる他、ステアリングチルト機構も備わる。

タコメーターは垂直ゼロ指針、スピードメーター、水温計、燃料計は水平ゼロ指針となるメーター。6400rpmからイエローゾーン、7000rpmからレッドゾーンとなるタコメーターからわかるように、MA09ERT型はSOHCながら高回転志向のエンジンだったりする。

運転席はサポート性に優れるフルバケットタイプに交換。着座位置が低すぎないため、前方の見切りも悪くない。助手席はサイドサポートが大きく取られた純正シート。


6点式に左右サイドバーが追加されたロールケージ。センターアーチから後方に向かうリヤバーはホイールハウス前部に落とし込まれるが、後席も一応は使える状態だ。


ボンネットに備わるのはトップマウントされるインタークーラー冷却用のインテークダクト。ボンネットとは別体構造となる。

また、ラジエターの冷却性能を高めるため、左フォグランプを外すのがスーパーターボ乗りの間での常識だ。ちなみに、ヘッドライトは純正でイエローバルブだった。

過給はまずスーパーチャージャーによって行われ、4000rpmでプーリーに内蔵されたクラッチが切れると、そこから上の領域はターボチャージャーが担当。両者の切り替えはかなりアナログで負圧によって作動するバイパスバルブが行っているけど、段付き感がまるでなく、非常にスムーズにスーパーチャージャーからターボへと移行する。

後に登場する13B-REWやEJ20のシーケンシャルツインターボのようなトルクの谷間も皆無なのは言うまでもない。30年も前に、こんなエンジンを市販した日産は本当に凄いと思う。

コーナリングは“重ステ+Sタイヤ+バキバキに効く機械式LSD”の組み合わせで、とにかく腕力を求められる。ステアリングへのキックバックは強烈だし、LSDが差動制限を始める瞬間のトルクステアも盛大だが、それに耐えながらアクセルペダルを踏み込んでいくと、グイグイ前に引っぱっていってくれる。その加速感は、とても排気量930ccのクルマとは思えないほどに力強かったりするのだ。

衝突安全の問題もあってクルマは肥大化の一途を辿り、コンパクトカーもその波に思いきり飲み込まれている。そう思うと、本当の意味で“ホットハッチ”が存在したのは80年代末~90年代初めが最後だろう。EP82スターレットGTターボ、G100SシャレードGT-XX、AA34SカルタスGT-i、DEJPFフェスティバGT-X…と、たしかに役者が揃ってた。

その中でも世界的に珍しいツインチャージドエンジンを載せたEK10マーチスーパーターボは、一際、個性的だった名車中の名車だと思うのだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:EK10
全長×全幅×全高:3735×1590×1395mm
ホイールベース:2300mm

トレッド(F/R):1350/1355mm
車両重量:770kg
エンジン型式:MA09ERT
エンジン形式:直4SOHC+スーパーチャージャー+ターボ
ボア×ストローク:φ66.0×68.0mm

排気量:930cc 圧縮比:7.7:1
最高出力:110ps/6400rpm

最大トルク:13.3kgm/4800rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/トーションビーム
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR175/65R13

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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みんなのコメント

54件
  • 当時、「マーチスーパーターボ」の登場は衝撃的だった。
    元がレース専用車の公道向け=エボリューションモデルなのに、
    普通にTVCMで宣伝してましたから…
    このジャジャ馬感は当時走行性能で人気のEP71スターレット以上で、
    発進はホイールスピンの抑止、コーナーはアンダーステアとの戦いという
    乗り手を選ぶ車でしたね。
  • 嘘を書いたらいかん、マーチターボに乗ってたがパワステは付いてない、標準装備ではない、オプションだ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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