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【ヒットの法則428】BMW X6は新技術を盛り込んだ新発想のプレミアムSUVだった

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【ヒットの法則428】BMW X6は新技術を盛り込んだ新発想のプレミアムSUVだった

2008年1月のデトロイトショーでデビューしたBMW X6。「SUVクーぺ」という新しい発想から生まれたモデルだ。北米市場を中心にビッグサイズのプレミアムSUVの人気は高まっていたが、その斬新なスタイリングはどのように受け入れられたのか。今回はアメリカ・サウスカロライナで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)

個性的なビッグサイズSUVの中でも異彩を放つ
X6はBMWが考え、世に送り出したニッチモデル、「SUVクーペ」である。「セダンにクーペがあるのだから、SUVにもクーペがあってもおかしくない」。確かにそうなのだが、それが一般のユーザーに一体どれほどのインパクトを与えるものなのか。これまでショー会場で観察しただけでは、なかなかピンとくるものはなかった。

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そう思いながら遥々アメリカ南部のサウスカロライナ州、グリーンビルまでやって来た。まず自然光の下、様々なクルマの間に置かれたX6は、ポジティブな意味で個性的な印象を放っていた。

X5のプラットフォーム上に、まったく新しいボディが乗っているのだが、長さ4877mm、幅1983mm、高さ1690mmと、X6は長く、幅広く、そして低い。美的かと聞かれると戸惑うが、少なくとも私は気に入って、隣に並んでいたX5が重苦しいSUVのワゴンに見えてきた。しかし実際はV8エンジン同士を比べるとX6は2265kgで、X5(2185kg)より重い。

選んだ試乗車は新しい4.4L V8直噴ガソリンツインターボエンジンを搭載したX6 xDrive 50iで、最高出力407ps、最大トルク600Nmを発生する。

コクピットに乗り込むと見慣れたX5のインテリアが迎えてくれる。ドライビングポジションはX5よりやや低めだが、目前にはそれでも十分な視界が広がる。反対に後ろを振り向くと、フラットなリアゲートに寝かされたリアウインドウを通しての眺めは、トンネルの中から外を見ているようである。リアシートがセパレートになって二人しか乗れないのは、後方視界を確保するためかも知れないと勘ぐってしまう。ちなみにリアコンパートメントは低くスラントしたルーフにもかかわらず180cm以下の身長であれば、ロングドライブでも十分に寛げる。

前後はもちろんのこと左右にもトルクを配分
シェーバーのような形をしたセレクトレバーの脇にあるボタンを押して手前に引くと、軽いショックでDレンジに入る。アクセルペダルをわずかに踏み込んだだけで、長さ4.9m弱、重量2.3トン近くの巨体がZF製6速オートマチックを介して思ったより軽快に発進する。

最大トルクは1750rpmから得られるので、その後の加速は豪快だ。メーカーのデータによればスタートから100km/hまでの加速は5.4秒、最高速度は250km/hでリミッターが介入する。

アメリカンハイウェイでの65マイル走行は、鼻歌交じりで快適極まりない。また路面の悪い箇所に飛び込むと、アダプティブドライブシステムがハイスピードでクルマの動きを感知し、ダンピングを最適化すると同時に、電子制御のスタビライザーでロールを抑制する。

このX6で標準装備されているダイナミック パフォーマンス コントロール(DPC)はxDrive と組み合わさり、トルクベクトリングを行う。すなわちエンジンパワーは前後だけでなく、左右にもアクティブに振り分けられる。

例えば、コーナーでの加速中にアンダー傾向が出ると後輪外側タイヤに駆動力が加わるので、X6はドライバーのステアした方向へニュートラルに進んで行く。しかもスロットルオフでもトルク伝達は行われるので、挙動は常に安定している。ただ、このシステムの作動を確認しやすいのはドライよりもウエット路面だ。

X6のドイツにおける価格はトップモデルのX6 xDrive 50iが7万3800ユーロ(約1190万円)、X6 xDrive 35iが5万6800ユーロ(約910万円)、そしてディーゼル搭載のX6 xDrive 30dは5万5800ユーロ(約895万円)、そしてX6 xDrive 35dは6万1800ユーロ(約990万円)と、当然ながらX5よりは高い設定となっている。しかし、それにもかわわらずX6のドイツでの前評判は上々で、今年の販売予定台数は既に売り切れており、今から注文しても納車は来年になってしまう。

確かにこのX6でもBMWの主張する環境サポートシステム、エフィシエントダイナミクスが採用されており、ブレーキエネルギー回生、転がり抵抗の低いタイヤなどのお陰で407psバージョンの燃費は欧州方式で100kmあたり12.5L(8.0km/L)と、ライバルよりずっと優れている。

しかし、ドイツでは来年以降、CO2税の導入が予定され、さらに4年後の2012年にはフリート燃費規制で、こうしたクルマは間違いなく課徴金が要求され、価格の上昇は避けられなくなる。そんなわけでこの手のクルマがあと何年、大手を振って走れるかはちょっと疑問ではある。

X6はもちろん日本へも今秋から輸出が始まるが、その期日と価格はまだ発表されていない。(文:木村好宏/Motor Magazine 2008年6月号より)



BMW X6 xDrive 50i 主要諸元
●全長×全幅×全高:4877×1983×1690mm
●ホイールベース:2933mm
●車両重量:2265kg(EU)
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:4395cc
●最高出力:407ps/5500-6400rpm
●最大トルク:600Nm/1750-4500rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●最高速:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:5.4秒
※欧州仕様

[ アルバム : BMW X6 xDrive 50i はオリジナルサイトでご覧ください ]

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