BMW CS1コンセプト(2002年)
(この記事は『退屈しない自動車デザイン 大手を負かしたクリス・バングルは「先駆者」か「破壊者」か』の後編です。オペルやフィアット時代の作品については前編で紹介しています)
【画像】クリス・バングル渾身の2人乗りオープンカー【初代BMW Z4を写真でじっくり見る】 全26枚
2002年のジュネーブ・モーターショーで発表されたCS1コンセプトは、なぜBMWがデザインの全面刷新を図ったか、その理由を教えてくれるものだ。BMWは新しいセグメントへの参入と、過去に断念したセグメントへの復帰によってラインナップを拡大しようとしていたのだ。
同じような見た目のクルマが3台あるのも望ましくはないが、それが7台以上に増えるのはもっと良くない。初代1シリーズはそうした新規モデルの1つであり、その姿を予告したのがCS1である。
BMW Z4(2002年)
初代Z4は、フレイム・サーフェシングの最良の例であった。プロポーションはZ3(そしてそれ以前の全BMW製ロードスター)とほぼ同じだが、デザインの細かい部分はまったく新しいものであった。
横顔を見ると、連続したラインがボンネットからヘッドライトの上を通り、前輪を通って車体側面に伸びている。さらに後輪を通り、リアバンパーに達する。ドアの前には斜めにプレスラインが入り、上下のラインと合わせて「Z」の文字を構成している。
BMW 5シリーズ(2003年)
バングルの指揮の下、5シリーズは劇的な変貌を遂げた。E39世代のデザインは控えめだが、その後継車はワイドなキドニーグリルとフェンダーに伸びるヘッドライトを備えた、より表情豊かなフォルムになった。トランクリッドは7シリーズよりも繊細だった。
E60世代の5シリーズに無関心でいられた者はいなかった。そしてBMWの歴史上初めて、5シリーズと7シリーズの外観が明らかに異なるものとなった。それがバングルの目指した境地である。
BMW 6シリーズ(2003年)
Z9グランツーリスモ・コンセプトはE65世代7シリーズに影響を与えたが、スタイリングの点では2003年に登場した新生6シリーズが最も直接的な量産バージョンと言える。バングル率いるデザイナー陣は、6シリーズの短いホイールベースに対応するためにプロポーションを作り直し、ガルウィングドアの採用は見送った。
BMW X3(2003年)
BMWがSUVに深く踏み込んでいく中で、バングルは1990年代に使われていたマトリョーシカ的(見た目は同じでサイズだけ違う)スタイリングには戻れないと主張した。初代X3は、当時発表を控えていた5代目3シリーズと多くのパーツを共有していたが、フロントのキドニーグリルを除いて、デザインの共通性はなかった。
また、単なるX5の小型版でもなかった。スポーティかつハンサムなデザインと、SUVセグメントの成長に関するBMWの的確な予測が相まって、X3は大成功を収めたのである。
ロールス・ロイス・ファントム(2003年)
1998年にBMWがロールス・ロイスを買収したことで、バングルは新たな部門を統括することになった。英国ブランドであるロールス・ロイスは、姉妹会社ベントレーとの分裂騒動で工場とV8エンジンを失っていたため、潔癖症で知られるターゲット層を怒らせないような新しいデザイン・アイデンティティを採用する必要があった。
バングル指揮の下、デザインに当たったマレク・ジョルジェヴィッチは、エレガンスとタイムレスを探求し、過去のデザインの殻に閉じこもる必要はないということを証明した。
BMW 1シリーズ(2004年)
CS1コンセプトに酷似した1シリーズが、新たな市場セグメントへと踏み込んだ。バングル率いるデザイナー陣は、フロントとリアエンドをトーンダウンさせたが、彫りの深いサイドとアーチ状のロッカーパネルは残した。この基本デザインから、2つのハッチバックモデルに加えてクーペとコンバーチブルが生まれ、バングルの筆致の弾力性を示した。
BMW 3シリーズ(2004年)
BMWの主力モデルである3シリーズは、上位モデルほどには過激なデザイン変更を行わなかった。簡単に言えば、新しいことに挑戦して失敗するリスクを冒す余裕はほとんどなかったということだ。会社の存続は3シリーズの継続的な成功にかかっていたのだ。それでもバングルのデザインチームは、5シリーズや7シリーズの縮小版ではなく、独自の外観を持たせた。
BMW X6(2008年)
X6はバングルのチームの新たな挑戦だった。大胆さの欠如、あるいは常識への配慮ゆえに、それまで誰も手を出さなかったセグメントへの先駆的な挑戦であった。バングルは通常、BMWの各モデルを差別化するために多大な努力を払うが、初代X6と2代目X5は正面から見るとほとんど同じだ。
BMW GINAコンセプト(2008年)
正式名称は「GINAライト・ビジョナリー・モデル」で、変形する布製の表皮で作られた22世紀風のコンセプトカーである。ヘッドライトは目のように開閉し、リアスポイラーは可動式で、ロッカーパネルが筋肉質なフォルムになるなど、フレキシブルなボディをまとっている。
GINAコンセプトはまた、バングルがBMWに残っていたら同社のデザイン言語がどのような方向に進んでいたかを示唆するものでもある。
BMW退社後のバングル
2009年2月、バングルは突然BMWを退社し、自動車業界から足を洗った。BMWは後任として、バングルとともに複数のプロジェクトに携わったオランダ人デザイナー、エイドリアン・ファン・ホーイドンクを起用した。
BMWは声明の中で、「当社の成功に対する彼の貢献は決定的なものであった。そして、彼はチームと共に未来への明確で美的な道を切り開いた」と述べている。
バングルはその後イタリアに移り、クリス・バングル・アソシエイツというデザイン会社を設立した。息子のデレクもここで働いている。2010年、インターネット上ではバングルがフィアットに復帰するという噂が流れたが、これは誤りだった。彼は2012年、マスターデザイナーとしてサムスンに入社した。中国企業とも仕事をしており、その最初の成果は2017年のロサンゼルス・モーターショーで発表されたEV「Redspace」のプロトタイプ(写真)である。
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