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一晩寝ても飲酒運転に!? 知っておくべきアルコールの基礎知識

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一晩寝ても飲酒運転に!? 知っておくべきアルコールの基礎知識

 飲酒運転による死亡事故は、2007年9月に道路交通法の改正・施行された直後は大幅に減少してきたものの、2008年以降は減少幅が縮小して下げ止まり傾向にあるという。警察庁の発表によると、2020年中の飲酒運転による交通事故件数は、2522件、そのうち死亡事故件数は159件。これは恐ろしい数字だ……。

 クルマは巨大で恐ろしい凶器にもなる。ほんのちょっとなら……といった軽い気持ちでハンドルを握ることで誰かの一生を台なしにしてしまう可能性があるので、くれぐれも飲酒したら運転しないようご注意を。

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 ここで、いま一度、飲酒運転の危険性を知って、「飲んだら、乗らない。乗るなら、飲まない」という気持ちを強くしてほしい。また、自分だけではなく、身近で飲酒運転をしようとする人がいたら止める勇気も持ってほしい。

文/室井 圭、医療監修/伊藤重範(医療法人三九会 三九朗病院 循環器内科専門医・総合内科専門医・医学博士)、写真/写真AC

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「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」のワケ

立った時にふらついたり、千鳥足になったり、何度も同じことを喋るなどの行動が見られたら、すでに「ほろ酔い」を通り越し、脳は「酩酊状態」に陥っている!

 先の警視庁の調べによると、飲酒運転の死亡事故率は、飲酒なしの約8.1倍。では、アルコールを摂取するとなぜ正常な運転ができなくなってしまいのだろうか?

 アルコールには脳の機能を麻痺させる作用があり、アルコールが体内に入ると注意力や判断力が低下するだけではなく、四肢の動きが緩慢になる、動体視力が落ちる、視野が狭くなるなど、正常な運転をするうえで必要なすべての身体的機能が著しく低下してしまう。

 具体的には、ビールなら中びん1本、日本酒なら1合、焼酎なら0.6合程度を飲むと、事故の可能性は約2倍になるという調査結果も発表されている。

 「自分は酒が強いから大丈夫」と思う人も多いだろうが、アルコールは体内にごくわずかでも入ると、たとえ酔っているという自覚がなくても、脳や体はいつも通りには機能できなくなってしまう。つまり、体内に少しでもアルコールが残っている時は、運転は絶対にしてはいけないのだ。航空機のパイロットや、電車の運転手の体内アルコール濃度チェックが厳しく行われるのはこういった理由からだ。

 ちなみに、航空業界での飲酒チェックが最も厳しく、呼気検査で呼気のアルコール濃度が0であることが要求されている。

「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の違いは?

どんなに自分は酔っていない、正常に運転できていると主張しても、呼気内のアルコール濃度が基準値を超えていたら飲酒運転。無罪放免にしてはもらえない

 飲酒運転には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類があり、酒気帯び運転とされるのは、呼気(吐き出す息)1リッター中のアルコール濃度が0.15mg以上検出された状態、または血液1mL中に0.3mg以上が検出された場合だ。

 また、まっすぐに歩けない、受け答えが正常にできないなど、客観的に見て、明らかに酔っている状態の場合は、呼気中アルコールの濃度にかかわらず酒酔い運転と判断される。

 飲酒検問で呼気検査に引っ掛かり、「酒を飲んでから時間が経っている」と主張したり、その場での警官とのやり取りに問題がなかったとしても、呼気内のアルコール濃度が基準値を超えていたら罰則を免れることはできない。

 呼気中アルコールは、酒が強いからといっても体内にアルコールが残っていれば検出される。「酒が強いから少し飲んでも問題はない」なんてことはないのだ。

アルコールはどのくらいの時間、体内に残る?

 では、飲酒後どのくらいの時間をおけば体内からアルコールはなくなるのだろうか? 

 飲むアルコールの量や体格、体質、性別、年齢、体調などによりアルコールが体内に吸収されたり、代謝に要する時間は異なる。ただし、酒に含まれる純アルコール量を知っていれば、飲んだ酒の影響や分解時間などがある程度は推測できる。

 人が1時間で分解できる純アルコール量は以下の計算式で大雑把ではあるが導くことが可能だ。

体重(kg)×0.1=1時間で分解できる純アルコール量

 例えば、体重60kgの人であれば、1時間で分解できる純アルコール量は6g、体重40kgの人であれば4gということになる。

 上記の式で自分の1時間で分解できる純アルコール量を算出し、下記の表の純アルコール換算を参照すれば、おおよそのアルコールの分解時間を推定することが可能だ。

引用 : 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールの基礎知識 飲酒量の単位」(一部改変)

 ただし、算出した数値はあくまでも目安で、アルコール代謝力が低い体質だったり、体調が悪かったり、疲れがたまっていたりするとアルコールが残る時間は長くなることは留意してほしい。

 ちなみに、厚生労働省は、缶ビールやチューハイなどに含まれるアルコールについて容器にグラム単位でも表示するよう業界に求めたことで、飲んだアルコール量が把握しやすくなってきている。自宅で飲むような場合は、容器に記載されたアルコール量を確認する習慣をつけよう。

二日酔い、深酒の翌日でも酒気帯び運転で検挙される!?

翌日に運転をする必要がある場合は飲酒量を控える、深酒をしないことは必須だ

 警視庁の調べでは、飲酒運転のうち酒気帯びの占める割合は7割。検挙された人のなかには、仮眠をとったため大丈夫だと思ったと弁解する人も多いという。

 また、二日酔いの状態でもアルコールは検出されることがある。そのため、翌日に運転する予定があれば、飲酒時間、飲酒量には注意をし、飲酒量が多かったり、深酒をしてしまった翌朝には体内にアルコールが残っている可能性があるので、運転は控えよう。

 通勤などでクルマを毎日使用しているような人は、アルコールチェッカーを購入して、飲酒をした翌日に測定することをお薦めする。アルコールチェッカーは、1000円から4000円程度で市販されている。ただし、あまりに安いものは精度が低い場合もあるので安すぎるものは避けたほうがいいだろう。

 アルコールチェッカーの難点は、お酒を飲んでいなくても反応してしまうものがあるというところ。特に反応することが多いのは、マウスウォッシュ(ノンアルコールタイプのものもあり)、アルコール消毒液、入れ歯安定剤、栄養ドリンク、酒種あんパン、ガム(メントール、ハッカ臭の香料が入ったもの)、発酵食品、歯磨き粉だ。

 他に、アルコール入りのお菓子、甘酒などの酒粕を使った食品もアルコール反応が出る可能性があるので、運転前に食べることは控えよう。

アルコールを体外に早くに出す方法は?

シジミは肝臓の機能をサポートする働きを持つ栄養素は豊富だが、アルコールの排出スピードを高めてくれるものではない

 残念ながらアルコールを早く体外に出せる薬のようなものはなく、飲酒後は肝臓がしっかり働いてくれることを祈るしかないというのが現実だ。

 アルコールは肝臓で約90%以上が代謝され、残りの約数%が呼気や汗、尿として排出されるからだ。気休め程度ではあるが、トマトやカキ、シジミなど、肝臓の働きを助ける食品を食べることでアルコールの代謝を促すことはできる。

 飲酒後に水をたくさん飲むとアルコールが早く排出されるといった話を聞いたことがある人もいるかもしれないが、それは嘘。水を大量に飲んでもアルコールの分解速度が早まることはない。

 サウナなどで大量に発汗することが効果的というのも大嘘。サウナでは脱水が進むだけで、アルコールが抜けることはない。それどころか、飲酒した後の体は脱水状態になっているため、非常に危険! そのため、飲酒後や二日酔いの時のサウナは絶対に避けてほしい。

 また、眠ったからといって、アルコールが早く体外に排出されるわけではない。むしろ睡眠中はアルコールの代謝速度が遅くなると言われている。つまり、仮眠をとって酔い覚ましをすれば運転OKなんてことはあり得ないのだ。

 嘔吐するのもほとんど効果はなしだ。嘔吐した段階ですでにほとんどのアルコールは吸収されてしまっているからだ。

飲酒運転は重罪! 数年は免許再取得も困難なことも

飲酒をしている人にクルマを貸したり、クルマで来店していることがわかっているのにアルコール類を提供した場合は、貸した側、酒を提供した側も処罰を受ける場合がある

 では、最後に飲酒運転の罰則規定を見ていこう。

 呼気中アルコールの濃度が0.15mg/L以上、0.25mg/L未満の場合、免許停止、違反点数13点、免許停止期間は90日。0.25mg/L以上の場合、免許取り消し、違反点数25点、欠格期間は2年。刑罰はともに3年以下の懲役又は50万円以下の罰金。

 もういっぽうの酒酔い運転は、免許取り消し、違反点数35点、欠格期間は3年。刑罰は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金。

 ということで、飲酒運転はかなりの厳罰だ。特に、酒気帯び運転は酒酔い運転よりかなり軽いと考えている人も多いようだが、実は、相当な厳罰が科せられるのだ。

 罰則があるから飲酒運転をしないというのではなく、危険だから飲酒運転はしないという意識を持たなくては、「見つからなければ」と考えるドライバーは減らない。とにかく、事故を起こしたら、他人の命を危険にさらすだけではなく、自分の人生もアウト! たとえ一口でも酒を飲んだら、運転をしてはいけないと肝に銘じてほしい。

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