■新ハイブリッド&プラットフォーム一挙公開
ホンダは2021年に「BEV/FCEVの販売比率を2040年にグローバルで100%」と発表しました。その目標は今も変わっていませんが、BEV移行期を支える基幹技術としてHEV(=e:HEV)の強化も進めています。
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それも既存技術の熟成ではなく、基幹となるエンジン、ドライブユニット、制御系を全て刷新させた「次世代e:HEV」を小型車用/中型車用の2タイプを新たに開発しています。
この辺りは昨今のBEV失速報道に対して慌ててHEV対応を行なったのではなく、当初からの「シナリオ通り」に進められていたと言います。そういう意味では、ホンダは究極の“伝え下手”と言えるでしょうか。
小型車用次世代e:HEVは、以前すでにくるまのニュースでお届け済みですが、今回は中型車用次世代e:HEVの紹介になります。
基本的な構成・機構は現行のe:HEVと同じですが、基幹となるエンジン/ドライブユニット/制御系は全て刷新されています。
目指したのは、「圧倒的な燃費(環境性能)」、「上質・爽快な走り(走行性能)」の更なる進化に加えて、恐らくこれまでのHEVではあまり気にしていなかった「五感に響く」と言うエモーショナルな要素も盛り込まれています。
エンジンは直列4気筒直噴2.0Lで「アトキンソンサイクル」、「高速燃焼」、「全領域での理論空燃比の実現」、「燃費の目玉を30%以上拡大」などの技術が盛り込まれており、今後のグローバル環境規制に対応可能なスペックになっています。
ドライブユニットは小型用の同軸構造に対して平行軸構造を採用。モーターはコンパクト(25%ダウン)で高出力(ユニット効率は+0.55km/L)をテーマに新開発。小型用と骨格共用技術を活かす事でコストの大幅な低減も可能にしています。
バッテリーはエネルギー密度をアップさせた小型高出力パックでリア席下に配置。そして、エネルギーマネージメントは「プレリュード」から採用されたモーターとASC(アクティブサウンドシステム)を高度に連動させた「Honda S+ Shift」を水平展開しています。
ちなみに今回はこの中型用に加えて大型用のV6エンジンと組み合わせた次世代e:HEVの開発も公言しました。このシステムにはエンジン直結Highギアに加えて、トーイング走行を考慮したエンジン直結Loギアが追加されています(走行条件に応じて自動で切り替えを行なう)。
■次世代プラットフォームも登場!?
前述の中型車用次世代e:HEVはホンダZEROの開発で培った技術やノウハウを応用して開発された、HEV/PHEV用に開発された次世代プラットフォームに搭載されます。
このプラットフォームは部位に応じて必要な剛性を切り分け(=剛性バランスの最適化と軽量化)、コーナリング時にあえてしならせる挙動を与えてタイヤの接地力の向上によりコーナリング性能を大きく引き上げる「新操安剛性マネージメント」と、衝突エネルギー吸収構造の刷新で衝突性能と軽量化(ロードパス廃止)を両立させる「新衝突ロジック」の採用により、現行モデル比で約90kgの軽量化を実現しています。
また各部をモジュラー構造にすることで共用率を最大限に高めることで車体コストを10%低減していると言います。つまり今まで以上にスピーディに数多くのモデルを生み出すことも可能だそうです。
サスペンションは形式の変更はありませんが、振動モードのコントロール(回転中心を低く取る構造)と重量物の位置の変更(リアトレーディングアーム)により路面からボディへの入力を低減する効果を備えたモノを、新たに開発して組み合わせています。
このように基礎体力を高めたパワートレイン/プラットフォームに加えて、最新の制御技術「モーションマネージメントシステム」を組み合わせています。
これはAHS(アジャイルハンドリングアシスト)の進化版で、車両の状態推定(6軸IMU)と統合制御(パワーユニット/ブレーキ/VSA)により車両姿勢を常に最適な状態に導くと言います。
今回これらのメカニズムを全盛りしたテストカーに栃木県のホンダのテストコースで試乗をしてきました。
テストカーは外観こそ北米向けの「シビックセダン」ですが、偽装テープに加えて原型が解らないほど手が入ったフロントフェイス(クッキングパパのようないで立ち…)、無理やり拡幅された前後フェンダー周りなど、まさに“魔改造”モデル。
インテリアもインパネ周りの偽装に加えてメーターもスピード表示以外は黒テープで覆われた状態でベース車の面影はなし。ただし、シフトレバーが最新ホンダ車に多いボタン式からコラムレバー式に変更されています。
パワートレインの印象ですが、EVモードの力強さと粘り強さ(なかなかエンジン始動しない)に驚きます。更にアクセルを踏むとHEVモードに切り替わりますがその連携も超シームレスです。
HEVモード時はシリーズ式なのでエンジンと駆動系は機械的な繋がりはありませんが、まるで繋がっているかのような直結感はプレリュードと同じですが、より力強く、より滑らかで精緻、そしてより官能的になっています。
例えるならば、実用トルクはしっかり確保されているのに、高回転まで全くストレスなくスカーっと回るフルバランスされた“いいエンジン”と同じようなフィーリング。ホンダのエンジンで言えば、実用域はK24A、中高速域は「アコードユーロR」用のバランサーシャフト付きのK20Aのいい所取りかな……と。
エンジンサウンドは重低音が効いたチューニングカーらしい音質で現状では少々過剰な感もありますが、エンジンのフィーリングの良さとも相まって試乗中はHEVである事を本当に忘れるレベル。試乗中に何度も「あぁ、いいエンジンだよね」と思ったくらいです。
シフト制御はアップ/ダウン共にプレリュード以上に人間の感性とドンピシャの制御でこれならパドルは不要でしょう。個人的には「GRヤリス」のDATやポルシェ「911」のPDKとガチンコで比べてみたくなりました。
これらから解るように、中型用次世代e:HEVはハイブリッドながらも下手なエンジンモデルよりも官能性は高いレベルに仕上がっており、恐らくHEV嫌いが初めて好きになれる2モーター式のHEVだと言えるでしょう。
フットワークもパワートレインと同じくらいの驚きでした。一言で言うと「熱血ではなく常にクールなホンダスポーツ」です。
もう少し具体的に言うと、穏やかなのに阿吽の呼吸で反応するステア系、ステアリングの切り始めた瞬間からノーズが自然かつ素直にインを向く回頭性の高さ、軽快なのに安定した挙動、FFを感じさせないアンダー知らずの滑らかな旋回、cm単位での調整可能なくらいのコントロール性の高さ(コースギリギリのライン取りやパイロンに寄せやすい)など、とにかく本質的な走りの良さが光りました。
実は今回の試乗車のタイヤはM+S(=グリップはそれほど高くない)でしたが、それでも安心して即座に限界まで走らせることができたのは、基本性能+統合制御の相乗効果によるモノでしょう。
試乗前に他の人の走りを見ていたら「みんなスキール音鳴らして走りすぎだよ」と思っていたのですが、実際に走らせると「そりゃそうなるよね」と。つまり、いつでも、どこでも、誰でも、理想の姿勢で意のままの走りができるのです。
乗り心地はテストコース内の凹凸路を走らせてチェックしましたが、入力の優しさだけでなく乗員に振動/ショックの伝わりにくさ、短いストロークながらも上手にいなしながら減衰する様などは、下手なプレミアムセダンよりもレベルは高いと感じました。
総じて言うと、「スポーツ」と言うよりも「GT」と呼ぶのがふさわしい乗り味です。
パワートレイン/フットワーク共に次の世代の進み始めたホンダのHEVモデル。後はこのメカニズムに見合ったデザインが欲しくなります。
直近のホンダの中・大型モデルは見た目から走りの良さが繋がりにくいクルマが多いのが残念。ユーザーはメカニズムを買うのではクルマを買うわけですので、その辺りも頑張って欲しいです。(山本シンヤ)
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シャキッとした気持ちの良い加速が味わえそう。