シールの弱点だった充電性能を改善
BYDが日本国内でも発売中のEVセダン、シールの2025年モデルの発売を中国国内でスタートしました。シャオミSU7やテスラ・モデル3に対抗するために驚異的なコスト競争力を実現。日本市場に導入される可能性や時期についても含めて解説します。
価格競争力は十分! スペックも凄い! 驚異のEV「BYDシール」を「テスラモデル3」と徹底比較してみた
まず、シールについては、いよいよ日本国内でも納車がスタートしている最新セダンであり、私自身もすでに4000kmほど走らせて、EV性能や快適性を徹底的に検証済みです。結論としては、日本国内で発売されているEVセダンとして圧倒的にコストパフォーマンスが高い一台として、非常に完成度が高いと結論づけていました。
その一方で、中国本土でも、このシールの該当するプレミアムセダンセグメントは、もっとも競争の激しいセグメントであり、このカテゴリーでもっとも人気なモデルとして君臨しているのがシャオミSU7です。
SU7は21.59万元、日本円で445万円から発売中です。最長830kmものゆとりの航続距離、独自の自動運転システム、Hyper OSと名付けられた独自OSの採用、何といってもシャオミというブランド価値も相まって、テスラ・モデル3に代わる新たなベンチマークとなっています。
さらに、そのテスラ・モデル3、Zeekr 001、007、Galaxy E8、ファーウェイLuxeed S7、IMモーターL6など、極めて競争力の高いEVセダンが、おおむね20万元程度、日本円で410万円程度の価格帯にひしめき合っていることから、このプレミアムセダンセグメントで販売台数を稼ぐことは至難の業となってしまっています。
実際にシールも、2022年8月の発売当初は月間1.5万台級というセグメントトップクラスの販売台数だったものの、2024年に突入してからは月間1000台程度へと販売が低迷してしまっていたわけです。
いずれにしても、テスラを中心として、Zeekr、NIO、Li Auto、ファーウェイ、シャオミなどが群雄割拠するプレミアムセグメントにおいて、大衆車ブランドのBYDがどのように反転攻勢していくのかに大きな注目が集まっていたわけです。
そして、そのような背景において、BYDが2025年モデルとしてシールのモデルチェンジを実施してきました。シールは3月25日にもHonor Editionとして2024年モデルを発売していたことから、2024年は、2023年Champion Edition、2024年Honor Edition、そして最新の2025年モデルと、3種類を購入可能というモデルチェンジラッシュの状況です。
他方で2025年モデルでは、フルモデルチェンジとしてEV性能や装備内容を飛躍的に改善してきており、一気に注目度が高まっています。
今回の新型シールは全部で4グレード展開ですが2024年モデルと比較して、バッテリー容量がわずかに減量されており、その分航続距離も650kmと、50km短縮されています。
しかし、もっとも改善されているのが充電性能です。これまでのe-platform 3.0から、e-platform 3.0 evoへプラットフォームを刷新。炭化ケイ素インバーターを採用。毎分2.3万回転可能な新型モーターを採用し、最高速を時速240kmにまで引き上げることに成功しました。
その上、それらのインバーターやモーターなどを統合した12-in-1方式のパワートレインを採用することで、これまでの8-in1よりもさらに統合。SOC10%から80%まで25分間で充電可能であり、さらにSOC80%から100%まで18分間に短縮。また、冬場における充電性能も、自己加熱パルス充電システムを導入し、バッテリー温度の昇温スピードを230%向上させ、充電時間を40%短縮することに成功。いずれにしてもシールの弱点ともなっていた充電性能に大きなテコ入れがなされた格好です。
ハイエンドモデルと同様のADASを採用
そして、この新型シールでもっとも重要なアップデート内容が、自動運転システムの刷新という点です。シールには正面ルーフ部分にLiDARが追加されながら、BYDのハイエンド自動運転システムDiPilot 300を採用。これは、現在Denza N7やYangwang U8など、ごく限られたハイエンドモデルにしか採用されていない、現状のBYDの最高峰ADASです。
通称God’s Eyeと名付けられたこの自動運転システムは、高速道路上だけでなく、市街地における信号や右左折、交差点への対応、障害物の回避挙動など、あらゆるシチュエーションをカバー可能なADASです。
じつはシールのSUVバージョンであるSea Lion 07にはDiPilot 100を採用。これは高速道路上における追い越しや分岐、障害物の回避挙動などにしか対応することができません。よってシールでは、シャオミSU7やZeekr 007などの市街地NOAを採用するプレミアムEVと張り合おうとしてきているわけです。
実際に、それらの主要な競合車種となり得る、シャオミSU7、テスラ・モデル3、Zeekr 007、Luxeed S7とのEV性能を比較してみると、650kmもの航続距離、230kWもの超急速充電、ゼロヒャク5.9秒、最高速240kmもの動力性能を踏まえると、これらの競合に劣らない性能を実現しているように見えます。
また、標準装備内容を徹底的に比較してみると、今回の新型シールは15.6インチのタッチスクリーンとともに、ヘッドアップディスプレイ、そのインフォテインメントシステムを駆動するのが、プロセスノード6nmのSoCを採用する最新のDi Link 100。セントリーモードを追加実装。さらに助手席側にもランバーサポートを追加。
静粛性向上のために、リヤにも2重ガラスが採用されたことで全面2重ガラス化を実現。ガラスルーフには旧モデルと同じくオプション設定で調光機能を搭載可能で、さらにフレグランス機能を追加実装。
そしてDiPilot 300を採用することで、高速道路だけでなく、市街地におけるNOAにも対応。これはたとえばテスラ・モデル3では130万円級のオプション設定です。
そして、乗り心地のさらなる改善のために、BYDの独自内製電子制御サスペンションシステム、Disus-Cを採用。いずれにしても競合のEVセダンと比較して、あらゆる観点で飛躍的に完成度を高めてきている様子が見て取れるでしょう。
このように、今回BYDがシールのフルモデルチェンジを行い、シールの弱点とされていた充電性能、装備内容を改善したことで、競争力が増したことは間違いありません。果たして、BYDがいまだに苦戦を続けるプレミアムセグメントでどれほどの販売台数を実現できるのか。シールの販売台数の行方には注目です。
そして、我々にとってもっとも気になるのは、この新型シールが日本市場にいつやってくるのかという点です。これはおそらく2025年末ごろになるのではないかと推測します。
というのも、まず日本国内に導入されるのはSea Lion 07の方でしょう。すでに公道でのテスト走行の様子も目撃されていることから、個人的には2025年早々の導入になるのではないかと推測しています。
なんといっても、日本ではようやくシールの納車がスタートしたばかりであることからも、少なくとも1年以上は、新型シールが導入される可能性は低いと推測可能でしょう。
いずれにしても、この新型シールを待つのか。それとも現行シールを割安な値段設定で購入するのか。スペックと導入時期、値段を総合して判断するのがベターでしょう。
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みんなのコメント
リサイクルの確立すらできてない乗り物が新型だろうが旧型だろうが環境汚染粗大ゴミの多量生産がヤバい
日本企業とは違い見込み生産のアテが外れたらどうすんだろ?
アメリカではテスラ旧型モデル3の在庫車が廃モールに多量放置されてニュースだったけど、中国はお得意の埋めるのかな?
農産物への被害も出るのかな?