スバル・レヴォーグ 先代からの変更点
text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
【画像】あなたは見分けられる? 新旧レヴォーグの内外装【比較】 全301枚
北米市場のニーズに対応すべく車格アップと車体サイズの拡大を図ってきたレガシィ。初代からは1クラスも2クラスも上のモデルになってしまった。
そこで本来のレガシィに相当する2L級の新型車として開発されたのがレヴォーグ。つまり、黄金期のレガシィ・ツーリングワゴンの実質的な後継モデルである。
次期モデルはスポーツ性の高さを表現したスタイルやターボの採用など、従来車の基本コンセプトをそのままに継承する。
しかし、プラットフォームもパワートレインも新世代型に一新。スバルのオンロード4WD車の次世代を予感させるモデルとなった。
走行関連ハードウェアの注目点はスバル車では初採用となった電子制御サス(可変ダンパー)と完全新設計のパワートレイン、そして新型アイサイトとアイサイトX。
スバル車でサス周りの上位設定と言えばSTIチューンのビルシュタイン製ダンパーだったが、電子制御サスを最上級仕様(STIスポーツ)に採用したのは興味深い点。
また、従来は1.6Lと2Lの構成だったが、次期モデルは1.8Lの1タイプとなっている。
アイサイト関連に関しては次世代型の先行搭載だが、走行性能関連はレヴォーグらしい快適性や実用性、ファントゥドライブをまとめ上げる少数精鋭型のハードウェアラインナップと言える。
動力性能以上に変化を感じたところは
新開発パワートレインは車種設定上では従来1.6L車代替となっているが、実用域では従来2L車相応の余力、高負荷域では従来1.6L車プラスαの伸びやかさを併せ持っている。
切れ味とか迫力を楽しむタイプではなく、実用域での扱いやすさにターボらしい昂揚感をトッピングした感じだ。
がんがん踏み込んで攻め立てるような走りには向かないが、スポーツ&ツーリングを品よく纏めている。
なお、JC08モード燃費は従来の1.6L車を多少上回る程度だが、超希薄燃焼やさらなるロングストローク化により実用燃費はカタログ値以上に改善されたとのこと。
動力性能以上に変化を感じたのはフットワーク。従来車のハンドリングと言えば回頭の操舵追従最優先。前オーバーハングの重さをロールで逃がして回頭性を向上させるため、回頭と求心旋回力(横G)のタイムラグが大きく、また直進時も鼻先の動きの収まりが今ひとつだった。
それがスバル車特有のファントゥドライブでもあったが、次期モデルでは旋回力の応答遅れもロール収束も改善された。
とくにSTIスポーツのスポーツ+モード(サス制御スポーツ)は回頭と旋回力の一致感のある好ましい操縦特性となった。
このストローク制御の変化は乗り心地にも好影響し、スムーズな動き出しと腰の据わった収束性で落ち着きある乗り味をもたらしていた。
アイサイトX ありがたみを感じる時
運転支援機能の目玉商品が手放し運転機能を取り入れたアイサイトXである。
新型アイサイトをベースに3D高精度電子地図、ドライバーモニタリングシステム、ステアリングタッチセンサーを追加し、自車位置測定はGPSに加えて日本版GPSの「みちびき」も併用し測位精度の向上を図った。
売り物の手放し走行は高速道路で50km/h以下、前走車追従時、つまり高速渋滞限定。他にはカーブ前速度制御、料金所前速度制御、渋滞時発進アシスト、自動車線変更の機能がある。
特設路でこれらの機能を試してみたが、手放し自動操舵は興味深いものの、運転待機を維持を前提にすればそれほど有り難みもない。文字通りの手持ち無沙汰。
一方、カーブ前と料金所前の自動減速はACCの機能向上として有用性が高い。地図参照の先読み制御は安心感も高く、システム任せで状況に応じた滑らかな走行が可能である。
ベースとなるアイサイトは市街地を中心とした衝突回避機能の向上が見所。右左折時の車両/歩行者/自転車も対象に加えている。
交差点死角からの左方直交車や右折時歩行者を対象としたデモ走行では、自動制御のドンッ踏みブレーキで見事に回避。ありがちな状況だけに有り難みも殊更。
他にも追突回避操舵支援や車線変更時等の側後方接近車回避支援機能等が追加されている。
300~350万円スポーティ系でトップ
一昔前ならステーションワゴンはユーティリティで乗用車をリードする存在だったが、その地位はクロスオーバーSUVに取って代わられ、シューティングブレークに象徴されるユーティリティも良好なプレミアム&スペシャリティなモデルの意味合いが濃い。
レヴォーグはそういった現代的なワゴンに有り様に沿ったモデルだ。
次期モデルでは積載性の向上を図っているが、総合的なキャビン実用性に大きな変化はない。
新旧で大きく変わったのは走りだ。とくにサスストローク速度の抑制が利いたフットワークは乗り味の車格感を向上。振動騒音面の雑味も減って全体的に洗練された印象が強い。
回頭性優先のスバル流ファントゥドライブも程よく残されている。さらにグレードアップしたアイサイトとアイサイトXである。
価格詳細は未発表だが、標準モデルのGTが税込み約310万円。従来の1.6GT-Sと同等。ちなみに電子制御サス仕様のSTIスポーツは約370万円、アイサイトX搭載車は約40万円高である。
アイサイトX込みでは価格のハードルも高くなるが、性能や走りの質感、アイサイトの機能などの向上がそのまま買い得度に上乗せ。
適応用途や嗜好に大きく影響されるものの300~350万円を主力とするスポーティ系ではトップレベルのコスパである。
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みんなのコメント
売れ行き次第で日本のモータリゼーションの成熟度が分かるんじゃないですか。
高い=ハイパワーの図式はもう過去の物と言う。
売れると思いますよ。