スズキの軽トラック「スーパーキャリイ」に設定された、特別仕様車「Xリミテッド」に小川フミオが試乗した!
無視できない存在感
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北米でも(なぜか)クルマ好きに注目されているという日本の軽トラック。使いやすさを体験すると、なるほど、人気の理由の片鱗が見えてきそう。スズキのスーパーキャリィXリミテッドはなかでも、都市生活者までターゲットに見据えた仕様というだけあって、フツウのクルマ好きも無視できない存在感がある。
2023年12月13日に発売されたスーパーキャリィXリミテッドは、スーパーキャリィX LEDヘッドランプ装着車をベースに、ちょいスポーティなデザインを追加したモデルだ。ブラックを効果的に使っているのが特徴。2024年2月に実車に接して、デザイン、機能性、走りといったもろもろをじっくり味わう機会があった。
本来は、さまざまな作業で使われるようにデザインされた軽トラだが、なかなかスタイリッシュなのだ。ベースのスーパーキャリィは、とくに2座シートの背後にスペースがあり、荷物も置けるし、背もたれを大きめな角度でリクラインさせることも可能だ。
実際、デザイン的によくできていて、日本的といってしまうのもなんだけれど、世界に類のない高い機能性がある。しかもそれがスタイルにまで影響を与えていて、工具や調理器具にまで通じる独自の美がある。そこがいいのだ!
スーパーキャリイXリミテッドは、かつ、スタイリッシュな仕上げをした仕様である。ロードホイール、アウトサイドミラー、ドアオープナー、さらに、専用ボディデカル、フロントガーニッシュ、フォグランプベゼル(周囲の合成樹脂の部分)までブラックで統一。
リヤクオーターウインドウをもつキャビンは大きめで、見方によっては、軽のボンバンの車体をまっぷたつに切って、後ろにオープンの荷台を付け足したような印象もある。
たしかに、ポルシェでいえば「911」が2プラス2にこだわるおかげで、リヤにハンドバッグやショッピングバッグを置くスペースが出来て重宝なのと同様ともいえる。
キャリーオンは2個収まるし(私はそうやって走った)、仕事に使っているひとには、先述のとおり、シートがけっこう大きな角度でのリクライニング機構をもつため、休息時にありがたいようだ。
メーカーのスズキは、2024年1月に開催された「東京オートサロン2024」に、このスーパーキャリィXリミテッドの機能を極限まで拡張し、アウトドアを楽しむひとに向けた「マウンテントレイル」なる仕様を発表した。当面、販売の予定はないというが、さまざまな可能性を秘めたモデルとして企画されたのがよくわかった。
ジムニーのピックアップ版かもしれないスーパーキャリィXリミテッドの車体寸法は、全長3395mm、全幅1475mm、そして全高1885mm。標準モデルともいうべきキャリィとは1905mmのホイールベースも同一だけれど、全高だけ120mm高い。
エンジンは660cc直列3気筒DOHCで、最高出力は37kW(50ps)、最大トルクは63Nm。駆動方式はパートタイム式4WDで、副変速機で切り替える。「2H」「4H」「4L」となっていて、デフロック機構までそなわる。
試乗車は5段マニュアルだった。ATとの販売比率はだいたい半々だそう。これも農業従事者などが「扱いやすい」と、評価しているからだそうで、つまり、いわゆる道具感がたいへん強いクルマなのだ。
走らせると、意外なほどトルク感がある。マニュアル変速比のギヤ比も2速から上はけっこう近接していて、スポーティな感覚すらある。シフトフィールはゲートごとの節度感もあり、短いトラベルのギヤを操っている際、ミスシフトの心配はない。
たしかに、“安逸”という感想はまったく似合わないけれど、ほかになかなかない“性能”として、いい意味での道具感があり、それがクルマ好きの心をくすぐるのだ。
カントリーライフに憧れがあるひとには、荷室に野菜とか入れて、このクルマを毎日使うような生活を夢見られるんじゃないだろうか?
スーパーキャリィXリミテッドは、いってみれば、スズキ「ジムニー」のピックアップ版のような気すらしてきた。もちろん、いくら4WDとはいえ、フレームシャシーに前後リジッドサス、そして副変速機付きの4WDというジムニーの本格的なオフロード性能にはかなうべくもない。
ただそれでも、トヨタ「ハイラックス」や、あらたに日本市場に導入されて早くも人気を呼んでいるという三菱「トライトン」のようなピックアップトラックを街乗りするような、“ホンモノ”を使い倒すことの満足感は、しっかり与えてくれる。ゆえに、ジムニーに性能では太刀打ちできなくても、ある意味、双璧ともいえる存在感を感じられるのだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
結構、悪路も強いし、車重も軽いし、4駆だったら、楽しいかも。
余談になりますが昔、軽トラの副変速機付きのMTの四駆で、スタックした4トンダンプを助けたことがあります。
クラッチが壊れるかと心配になりましたが問題ありませんでした。