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超モーレツな猛牛よ!! 超ド級なランボルギーニ・クンタッシの意外な歴史【いのうえ・こーいちの名車探訪】

掲載 更新 32
超モーレツな猛牛よ!! 超ド級なランボルギーニ・クンタッシの意外な歴史【いのうえ・こーいちの名車探訪】

 スーパーカーの頂点にあった「カウンタック」である。カウンタックという名前が「和製英語(和製イタリア語か?)」だというのはご存知だろうか。そもそも、クンタッシということばはランボルギーニのあるイタリアはビエモンテ州の方言で、びっくりしたなあ! というような意味だ。

 クンタッシが登場したとき、Countachという綴りをどうカタカナにするか、某誌と某誌の編集長が「談合」して「カウンタック」にしたそうな。

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 響きもよく、それゆえブームの折に子供たちが「カウンタック!」「カウンタック!」と叫んだこともあって、すっかりお馴染みなっているのだが、いかんせん、日本でしか通用しない。そこで、世界共通のクンタッシと呼ぼうではないか、という意見も多く、ここでもクンタッシで進めたい。

文/写真:いのうえ・こーいち

■世界中がびっくりしたなあ!

「スーパーカーは人を驚かせるような存在でなくてはいけない」と語っていたデザイナー、マルチェロ・ガンディーニ。その通り、常に人々を驚かせ続ける車となった

 直接伺ったことがあるのだが、クンタッシのデザイナーである天才マルチェロ・ガンディーニさんは、スーパーカーは人を驚かせるような存在でなくてはいけない、と仰る。

 その通り、ガンディーニ作品はいつも話題を投げかけてきた。1960年代後半から70年代は、カロッツェリア・ベルトーネのチーフデザイナーとしてランボルギーニ・ミウラをはじめ、ウラコ、ランチア・ストラトスHF、フィアットX1/9などを送り出した。

 ミウラにせよストラトスにせよ、ショウで発表された当初は「とても現実性のないもの」と雑誌などで酷評されたりしたものだ。

 クンタッシも1971年春のパリ・サロンで発表されたときは、その斬新さで大きな話題となった。鮮やかなイエローカラーのプロトティーポは、のちのちの生産モデルに較べて、ずっとシンプルで美しいスタイリングだった。

 このモデルは生産化に先立ってクラッシュテストに供され、消滅してしまった。昨2021年になって、ランボルギーニ熱心家によってまったく新しくこのプロトタイプが再現され、大きな話題となったりした。

■ふたたび世界一の称号を

大きな特徴であるシザースドアはデザインの遊び心というより必要に迫られての策という面が大きい

 それまでのランボルギーニ・ミウラを超えるスーパーカー、そして宿敵フェラーリをも凌ぐ世界一のスーパーカーというのがクンタッシの至上命令であった。先のミウラはV12DOHCエンジンを横置き搭載するミドシップ、というこれまでにないメカニズムで、280km/hという最高速度で世界最速を豪語していた。

 それまで頂点に君臨していたフェラーリも黙ってはいられない。早速それまでSOHCだったエンジンをDOHC化したり、大排気量のフェラーリ365GTB/4「デイトナ」を登場させていた。

 クンタッシは世界一を取り戻すために、いくつかのアイディアが込められていた。ひとつはエンジンを縦置きミドシップとすること。それはこののちのパワーアップの余裕を考えてのことでもあった。プロトタイプがLP500というネーミングであったのも、エンジンを5.0Lに拡大搭載していたことを表わしていた。

 しかし、なん台かの生産プロトタイプを経て1974年に市販されたクンタッシはLP400、つまりミウラと同じV12気筒DOHC3929ccであった。というのもランボルギーニ社は財政的に苦しくなっており、新エンジンを開発する余力がなかったから、といわれる。

 先の、LP500プロトティーポをクラッシュテストに充てたのも、まさしく苦肉の策だったのだ。

 そのエンジンは5段のギアボックスと直結され、一般とは逆にギアボックスを前方に向けて搭載された。キャビン内に大きなコンソールがあるのも、じつは室内にはみ出したギアボックスのカヴァなのである。

 そのためにドライヴァの着座位置は前方になり、そのために普通のドアではヒンジが設けることができず、例のシザースドアは単なる遊びではなく必然的に採用されたものなのだった。

 かくして、375PSのパワーにより、最高速度300km/hを謳うランボルギーニ・クンタッシは世に出された。その頃、負けずとミドシップ化して発売されたフェラーリ365GT4BBは302km/hを主張するという、なんとも意地の張り合いのような、それだけ「世界一」の称号は魅力的だった、ということだろうか。

■クンタッシの20年

製造時期によって大きく5つのモデルに分けられる。詳しくはギャラリーで!!

 あれだけ独創的なクンタッシだけあって、ずーっとあの形のまま生産がつづいたような印象があるが、生産されたクンタッシはチェンジによって大きく5つのモデルに分けることができる。

 1971年にプロトティーポが発表されてから、最終のクンタッシが1990年7月にラインオフした20年間は、ひとつの歴史的時代の移り変わりでもあった。

 最初の生産モデルLP400は1978年までに150台が生産された。プロトティーポで一番の問題とされたエンジンの冷却のために、いくつものエアスクープを設けられてはいたが、もっともシンプルなクンタッシとして人気が高いモデルだ。

 1978年にオーヴァフェンダなどで武装したLP400Sに変化するが、これは「ウルフ・スペシャル」として知られるものを量産化したもの、という。

 カナダの石油王であったウォルター・ウルフが特別仕様として注文したもので、ホンモノの「ウルフ・スペシャル」には強化された5.0Lエンジンが載せられていたが、市販車は3929ccのままであった。

 1982年までに237台のLP400Sを送り出した後、待望の新エンジンが開発される。人手に渡り一時は倒産状態にあったランボルギーニ社をフランスの実業家、パトリック・ミムランが買収したのだ。4754ccに拡大されたエンジンは、余裕を持って375PSを発生し、LP500Sとして321台が生産された。

 それで満足してはいなかった。さらに排気量を5167ccにアップすると同時に、気筒あたり4ヴァルヴ化した465PSという圧倒的パワーのエンジンを開発。それを搭載したその名も「クアットロヴァルヴォーレ」を1985年のジュネーヴ・ショウで発表する。

 ようやく初期のクンタッシが求めていた性能が実現できた、ということか1988年までに624台と生産台数を伸ばした。

 そしてクンタッシの25周年を記念した「25thアニヴァーサリー」が登場するや、1990年までに657台を産む、クンタッシの中で最大数を量産するという、ちょっと皮肉な結果にもなったのだった。

【著者について】
いのうえ・こーいち
岡山県生まれ、東京育ち。幼少の頃よりのりものに大きな興味を持ち、鉄道は趣味として楽しみつつ、クルマ雑誌、書籍の制作を中心に執筆活動、撮影活動をつづける。近年は鉄道関係の著作も多く、月刊「鉄道模型趣味」誌ほかに連載中。季刊「自動車趣味人」主宰。日本写真家協会会員(JPS)

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みんなのコメント

32件
  • ここは日本だ
    カウンタックと呼べ!
  • またクンタッシやクンタッチ論争か。 もうランボルギーニ本社も日本に輸出した車種はカウンタックと認めてる筈ですよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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