そのスタイリング、その速さはロータリーだから実現した
サバンナRX-7のスタイリングは、ロータリーエンジンの長所をフルに生かして生み出された。コンパクトなロータリーエンジンだからこそ可能になったスタイリングということができる。
【復刻版カタログ】ロータリーがデザインしたと宣言した初代マツダ・サバンナRX-7(SA22C型)の肖像
低いボンネットとシャープなウェッジ型ノーズは、ロータリーエンジンならでは。十分なスペースとは言い難いが、2+2キャビンをこのサイズの中に押し込めることができたのも同様である。また、高性能と省燃費を両立させる優れた空力特性を実現したのも、いうまでもなくコンパクトなロータリーエンジンに負うところが大だ。
RX-7のスタイリング上の大きなポイントはリトラクタブル・ヘッドランプである。コスト的にも技術的にも難しさはあったに違いないが、強力なパフォーマンスを無言のうちに印象づける武器になっている。
価格は最下位のカスタムが123万円。最上位のリミテッド(AT)は173万円だ。その性能と内容に対して、十分魅力的な価格設定といえるだろう。
カスタムは6.45-13のクロスプライタイヤを装着し、シートは全面ビニール地、時計もリアスタビライザーも付かないが、144万円のGTになると、ほぼ必要な装備は揃う。最上位のリミテッドになると、ハロゲンヘッドランプ、リモコンミラー、アルミホイール、AM/FM付き4スピーカー・カセットステレオ、全面ファブリックシート、分厚いフロアカーペットなどが標準装備される。下位のモデルとは比較にならない豪華さだ。
RX-7の前車軸後方に積まれるロータリーエンジンは12A型。573ccの単室容積を持つ2ローター式だ。動力性能はいうまでもなく優れている。0→400m加速を15.8秒で駆け抜ける速さは、スポーツカーの名に恥じない。強力なロータリーパワーは、高速域でも鋭い車速の伸びを見せ、180km/hに達するまでの時間はごく短い。
しかもロータリー特有の電動モーターのような滑らかさと、優れた静粛性を伴ってのことだ。このパフォーマンスは実に魅力的である。ただしトルクは、さほど強力ではない。レシプロエンジンの持ち味とは少し違う。低回転域でも持ち前のスムーズさによって扱い勝手は悪くないが(ただし低回転域で時として発生する不整燃焼によるギクシャクした動き、つまり、カーバッキング現象は、今後に残された改良点である)、RX-7の本領を発揮させるには、ある程度高回転を多用する走り方が必要になる。
ハンドリングは素晴らしい。コンパクトなロータリーエンジンを、前車軸の後方(つまりフロントミッドシップ)に置いたレイアウトは、前後荷重配分をほぼ50対50にすることを可能にし、合わせて重心を通るZ軸回りの慣性モーメントを小さく抑えている。
スポーティな設定の足と前後スタビライザーは、ロールを極端に小さくし、シャープなハンドリングを実現した。ステアリング特性はごく弱いアンダーで、いかにもスポーツカーらしい、軽快かつ機敏な身のこなしをする。RX-7でワインディングロードを走るのは楽しみそのものだ。しかし、限界時の挙動は少し激しい。ある程度のキャリアとテクニックを持っているドライバーでなければコントロールしにくい……という側面もまた持っていることを頭に入れておいたほうがいい。とくに雨の日は要注意である。
乗り心地も合格点。サスペンションは巧みに設定され、操縦安定性と乗り心地を高いレベルで両立させている。路面の不整はよく消化吸収され、不快なゴツゴツ感はない。しっかりとしたフラットな乗り心地は快適である。
RX-7は、足回りの限界点の特性が、もう少しマイルドでコントローラブルな性格になれば申し分ない。パフォーマンスとシャープなハンドリングは国産車の中で群を抜いており、スポーツ性という点で文句なく頂点に立つクルマである。
※CD誌/1979年3月号掲載
【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員
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みんなのコメント
なんでこう言うの今ないのかね?w