日本に上陸した新型Eクラスのディーゼルモデル「E220d」は、実にメルセデス・ベンツらしい1台だった。今尾直樹がリポートする。
“ちょっと大きなCクラス”
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2月下旬に千葉県富津市のゴルフ場をベースに開かれたメルセデス・ベンツの新型Eクラスの試乗会で、最上位モデルの「E350eスポーツエディションスター」にほんのちょっぴり乗ったあと、E220dアヴァンギャルドに乗り換えた。E350eはPHEV(プラグイン・ハイブリッド)で、中低速ではモーターで駆動する。めちゃくちゃ静かで、しかもエアサスペンションを備えている。おかげで、前245/45、後ろ275/35の20インチという大きなタイヤを履いているのに乗り心地が極上で、“ちょっと小さなSクラス”、という印象を受けた。オプションてんこ盛りの試乗車には後輪操舵も付いていて、低速での回頭性も素晴らしい。
先進装備満載のE350eから乗り換えると、E220dのパワーユニットはディーゼルということもあり、ちょっと小さなSクラスというより、“ちょっと大きなCクラス”、という感じがした。と、なにやら自分だけが新しい発見をしたような書き方をしておりますが、これは当たり前なのである。EクラスはSとCの間に挟まれた中間モデルなのだから。
では具体的に、新型Eクラスの中核を担うE220dアヴァンギャルドはどうだったのか。具体的に見てみよう。まずはエクステリアである。フロントマスクはメルセデスEQシリーズみたいにツルンとしており、LEDが可能にした波目のデイタイムラニングライトが新しい眼差しをつくっている。格納式のドアはキーを持っていると自動的に飛び出す。飛び出さない場合は、格納されたままのドアハンドルをスーッと撫でてやる。そうすると、音もなく飛び出す。
内装はダッシュボードの助手席の前にまで大型の液晶スクリーンが鎮座している。「MBUXスーパースクリーン」と呼ぶこれはオプションで、仮にこれを選ばずとも、ドライバーの目の前の計器とセンター・コンソールはスクリーンで覆われている。視覚的には内も外も21世紀的で、次世代の自動車というムードを醸し出している。
一方でメルセデスは、新型W214にロングノーズでファストバック風ショートデッキ、キャブフォワードならぬキャブバックワードという、フロントにエンジンを縦置きする後輪駆動のスポーツカーのようなシルエットとプロポーションを与えている。21世紀のデジタルテクノロジーと20世紀的な伝統美の融合を図っているのだ。少なくとも1980年代以降で、これほどボンネットの長さを強調したメルセデス・セダンは初めてだろう。もしあるとしたら、現行Cクラスがそうかもしれない。
まるでガソリンエンジンのようこのようにE220dアヴァンギャルドはスタイリッシュな内外装に、21世紀的デジタルテクノロジーを搭載し、20世紀的内燃機関をフロントに搭載している。でもって、このISG(Integrated Stater Generator)を備える2.0リッターのディーゼルがE220dのキモであることは疑いない。
ボア×ストローク=82.0×94.3mmのロングストローク型で、総排気量1992ccの直列4気筒はアルミブロックにツインカムヘッドを載せ、コモンレール方式を採用して、ボルグワーナーのヴァリアブルタービン・ジオメトリー(VTG)ターボチャージャーを組み合わせ、最高出力197ps/3600rpmと 最大トルク440Nm/1800~2800rpmを発生する。これに17kW(23ps)/1500~2500rpmと205Nm/0~750rpmのマイルドハイブリッドのモーター(兼ジェネレーター)が発進&加速時にエンジンをアシストしている。これが効いているのだろう。まるでガソリンエンジンのようにレスポンスよく反応し、スムーズで、よくまわるように感じる。しかも、ふわあっと湧き出るトルクは大排気量エンジンを思わせる。
9ATはほとんどニンジャのようにシフトのアップとダウンを繰り返し、エンジン回転をつねに1500rpm以下に保っている。ひとたびグッとアクセルを踏み込むと、ディーゼルらしからぬ野太い快音を発して、4000rpmあたりまで一気にまわる。耳を澄ませていると、アクセルオフしたときに、ゴロゴロいっているような気はするものの、タコメーターがなければ、これがディーゼルだと気づかないのではあるまいか。
ピュア機械式のサスペンションは、ストロークこそたっぷりしているけれど、乗り心地はやや硬めにセットされている。それというのも、試乗車には例によってオプションのAMGラインパッケージが装着されているからだ。こちらを選ぶと、ホイールが標準の18インチから19インチに格上げされ、前後異サイズの前245/45、後ろ275/40というビッグでファットな超扁平になっちゃうのだ。
そこまでやる必要があるのか? と、問われれば、「義経」である。落語の「青菜」の隠居の真似で答えると(真似する必要はないけど)。こんなにビッグでファットな超扁平で、しかも可変ダンピングもエアサスも持たないのに、乗り心地が悪いわけではないのだから。速度が低いとピレリPゼロの当たりの硬さがちょっと気になるものの、ボディがしっかりしていて、そのことに感心する。高速巡航ともなれば、俄然スムーズでしっとりして、素晴らしい。
やっぱりメルセデス・ベンツはいいなぁおまけに静かだ。100km/h巡航は9ATの8速ギアで1500rpm弱。アウトバーンに多い制限速度130km/hだと9速トップで1500rpm弱である。エンジン回転が低いこともあるし、風切り音を抑えるべく、AピラーとCピラーの構造を含めて、空力を徹底したという。おそらく、それが効いている。ちなみにCd値はセダンで0.23、ステーションワゴンで0.26を誇る。
静粛性に関してはこのあと乗ったE200ステーションワゴンを明らかに上まわる。ワゴンはキャビンと荷室がつながっているから致し方ないわけだけれど、セダンの長所はそこにある。乗り心地もE220dのほうが、ディーゼルエンジンの重さもあってだろう、しっとりしているように筆者は感じた。
ブレーキはいつ何時でも効く感じがする。素晴らしい。やっぱりメルセデス・ベンツはいいなぁ、と思わせる。
Cクラスと直接比較したら、また印象は異なるにしても、E220dはホイールベースが2960mmとCクラスより95mmも長くて、オプション満載の試乗車は車重が1920kgもあるのに、運転感覚としてはそういうボディの大きさや重さをまるで感じさせない。ちょっと大きなCクラス、ぐらいの感じで操ることができる。どっしりとしたW124みたいEクラスではなくて、21世紀のEクラスのW214は弁慶並みのサイズなのに義経のように軽やかなのだ。
最後に内燃機関のファンにとって朗報である。メルセデス・ベンツは今年2月、2030年の完全EV化を撤回し、EV化は市場の動向による、という見解を打ち出している。つまり、ディーゼルエンジンはこれまでの予想よりももうちょっと延命するかもしれない。参考までにカタログ燃費をご紹介しておくと、WLTCモードでE200の14.3km/L、E350eの12.7km/Lに対して、E220dは18.5km/Lと頭抜けている。内燃機関のファンならずともメルセデスの方針転換は納得がいくのではあるまいか。
文・今尾直樹 写真・田村翔 編集・稲垣邦康(GQ)
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