現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【フレンドリーで特別なスーパーカー】アウディR8 RWDへ試乗 540psの後輪駆動 後編

ここから本文です

【フレンドリーで特別なスーパーカー】アウディR8 RWDへ試乗 540psの後輪駆動 後編

掲載 更新 2
【フレンドリーで特別なスーパーカー】アウディR8 RWDへ試乗 540psの後輪駆動 後編

完璧なほどにリニアなV型10気筒エンジン

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)

【画像】アウディR8とライバルモデル 全116枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


アウディは、R8にアルミ製構造を与えることで、サスペンション設定の自由度を高めている。ダンパー自体は固定式で、ボタンで減衰力を変えることはできない。しかし、変える必要性はほとんど感じない。

ビルシュタイン製のスプリングレートは、ライバルと比べて、最も柔らかい設定ではないことにも驚く。マクラーレンのように、道路と呼応するかのごとく流暢に走るわけではないが、荒れた路面を柔らかく吸収する能力は英国の道路にもピッタリ。

多くのグランドツアラーと呼ばれるモデルより、快適だ。ここだけを見ても、アウディR8 RWDは四輪駆動のR8とはかなり異なる。

それはつまり、安楽に速く運転できることも意味する。望んだ通りのスピードで走らせることができる。一緒に暮らしやすい側面の1つとなっている。

自然吸気のV型10気筒エンジンは、パフォーマンス重視のランボルギーニ・ウラカンRWDに積まれるものと、アクセルレスポンスに違いはある。しかしパワーデリバリーは、完璧なほどにリニア。

フロントタイヤが駆動しなくても、濡れた路面でもトラクションに不足はない。7速デュアルクラッチATも、指摘が難しいほどの仕上がり。唯一、プラスティック製でずんぐりとしたシフトパドルが、このマッチングにはふさわしくない部分だろう。

その気になれば、ダブルウイッシュボーン式のサスペンションと電動パワーステアリングを介して、重心移動を活かした流れるような運転を楽しめる。気持ち良い領域は、高い部分にあるけれど。

後輪駆動化で派手なドリフトも楽しめる

アウディらしく、肉付きの良いレザー巻きのステアリングホイールへは、ほとんど路面のテクスチャが伝わてこない。充分に楽しいが、残念な部分だ。

しなやかな乗り心地を得ていながら、姿勢制御にも優れている。ただし、特に垂直方向の制御は、ミドシップ・スポーツカーのベストほど歯切れが良いわけでもない。もっとも、それはサーキットでの話で、一般道では問題になるほどの差ではないだろう。

後輪駆動のR8 RWDが獲得したもう1つの特徴が、より直感的な回頭性。切り始めでとても敏感なステアリングレスポンスや、可変レシオの悪影響はない。クワトロのR8より、ややリア寄りの前後重量バランスが好感触へ貢献している。

ちなみに1595kgの車重のうち、リアタイヤに掛かる割合は60%だという。不意を突かれることなく、高い満足感のまま、大陸を高速で駆け抜けられる。日常性を高めている、もう1つの要因といえる。

加えてR8 RWDは、はるかにエキサイティングな運転も可能。これは、クワトロ版R8では楽しむことができない、チャレンジ領域だ。

後輪駆動となったことで、2速や3速で曲がるコーナーでは、望めばリアタイヤを豪快にスライドできる。たとえトラクションやスタビリティ・コントロールの制御が程々に入る、スポーツ・モードでも。限界領域でのアンダーステアはほとんど発生しない。

ハンドリングも乗り心地も改善

ここでの課題は、ステアリング。先述の通り、路面の状態を感じ取るのが難しい。しかも、ドリフトし始めると、スイッチを弾かれるように急激に流れる。ミドシップ・モデルの典型ではあるが。

コーナーの頂点を過ぎたところで、適切にアクセルペダルを操作すれば、ステアリングをほとんど操作せずにクルマを流していける。見事な挙動で、ドリフトアングルはスロットルの開度で自在に調整できる。

このバランスを引き出せた瞬間が気持ちイイ。ただし、エラーマージンはポルシェ911や、アストン マーティン・ヴァンテージより間違いなく狭い。同価格帯として、結果的に比較検討したくなる。

ESPの効きの設定が厳しい理由でもある。湿った路面のコーナーでは、ESPの警告灯が点灯することも多いが、点かない場面もあるのだ。楽しむには、ドライバーの技術が試される。ライバルのミドシップ・モデル以上に、簡単には自己満足を得られないのでご注意を。

フロントのドライブシャフトをなくすことで、ハンドリングは甘美になり、乗り心地の良さも引き上げられたR8 RWD。それはフェイスリフト前の、限定モデルのR8 RWSでも同様だった。

日常的な利便性も魅力。とても親しみやすいスーパーカーでもある。フロントノーズの車高は充分あり、視認性も良い。車内は静かで快適で、1日中運転していても疲れない。巡航時の燃費は9.6km/Lだったから、満タン時の航続距離は800kmにも及ぶ。

よりチャレンジングで親しみやすい

R8 RWDは四輪駆動版より1万5000ポンド(198万円)も安い。最高出力は29psほど低く、電磁サスペンションも備わらないが、どちらもR8自体の魅力を高めてはいない。筆者が契約するなら、R8 RWDとなる。

自然吸気V型10気筒エンジンが生み出すトルクは潤沢。いつでも引き出せる。総合的に見て、アウディR8 RWDは、とても秀逸なグランドツアーだといえる。

反面、RWDに限らず、R8はステアリングに伝わる感触が少ない。NAのV10も素晴らしいが、エンジンとの一体感を味わいたいのなら、マクラーレン570Sや991型のポルシェ911 GT3の方が適している。

状態の良い中古車なら、R8 RWD以下の価格で見るけることも英国では可能だ。雨天時も頻繁に運転するなら、クワトロ版R8とどちらが良いか、じっくり検討するべきだろう。

だが、アウディR8 RWDを気に入る理由はいくらでもある。より楽しいアウディR8は、間違いなくRWDの方。

チャレンジングで、親しみやすい。そして、R8の中で一番特別なスーパーカーだ。

アウディR8 RWD(英国仕様)のスペック

価格:11万6280ポンド(1534万円)
全長:4426mm
全幅:1940mm
全高:1240mm
最高速度:323km/h
0-100km/h加速:3.7秒
燃費:7.9km/L
CO2排出量:289g/km
乾燥重量:1595kg
パワートレイン:V型10気筒5204cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:540ps/7900rpm
最大トルク:54.9kg-m/6400rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

こんな記事も読まれています

ホンダ「新型軽バン」登場! まさかの“2シータータンデム仕様”に「真っ黒テールゲート」採用!? 斬新すぎる「カラバリ」に反響大
ホンダ「新型軽バン」登場! まさかの“2シータータンデム仕様”に「真っ黒テールゲート」採用!? 斬新すぎる「カラバリ」に反響大
くるまのニュース
「Honda E-Clutch」の対抗馬登場!?  BMW Motorradがオートメイテッド・シフト・アシスタントを発表! 自動化されたクラッチとギアシフトにより新しいライディング体験を実現
「Honda E-Clutch」の対抗馬登場!? BMW Motorradがオートメイテッド・シフト・アシスタントを発表! 自動化されたクラッチとギアシフトにより新しいライディング体験を実現
バイクのニュース
三菱ふそうがトルコで『eキャンター』新型を販売開始へ
三菱ふそうがトルコで『eキャンター』新型を販売開始へ
レスポンス
三菱自動車が欧州市場向けコンパクトSUV「ASX」を大幅改良。販売は本年6月より開始
三菱自動車が欧州市場向けコンパクトSUV「ASX」を大幅改良。販売は本年6月より開始
カー・アンド・ドライバー
2024年4月の外国メーカー車販売、11.3%減で4カ月連続の前年割れ 輸送遅延の影響も
2024年4月の外国メーカー車販売、11.3%減で4カ月連続の前年割れ 輸送遅延の影響も
日刊自動車新聞
【ガチンコ勝負】ミッドサイズスポーツカーの対決!「アウディ RS5 クーペ」対「BMW M4クーペ」AT対MT、AWD対RWD その勝者は?
【ガチンコ勝負】ミッドサイズスポーツカーの対決!「アウディ RS5 クーペ」対「BMW M4クーペ」AT対MT、AWD対RWD その勝者は?
AutoBild Japan
六甲アイランド~神戸山手線を直結 阪神高速「5号湾岸線 湊川延伸」が工事進行中! 橋脚ニョキニョキ! 夢の「神戸中心街スルー」どこまで完成した?
六甲アイランド~神戸山手線を直結 阪神高速「5号湾岸線 湊川延伸」が工事進行中! 橋脚ニョキニョキ! 夢の「神戸中心街スルー」どこまで完成した?
くるまのニュース
日野自動車がジャパントラックショー2024に出展へ…BEVやFCV
日野自動車がジャパントラックショー2024に出展へ…BEVやFCV
レスポンス
アウディ陣営移籍ヒュルケンベルグ、ハースF1離脱は「簡単な決断じゃなかった」小松礼雄代表が引き留め交渉も
アウディ陣営移籍ヒュルケンベルグ、ハースF1離脱は「簡単な決断じゃなかった」小松礼雄代表が引き留め交渉も
motorsport.com 日本版
生産終了から7年 いまでも人気の絶版“原付モンキー”を米国で発見 38年前の“日本にない特別なホンダ・モンキー”とは
生産終了から7年 いまでも人気の絶版“原付モンキー”を米国で発見 38年前の“日本にない特別なホンダ・モンキー”とは
VAGUE
日産モータースポーツ&カスタマイズはZでスーパー耐久のST-Qクラスに出場
日産モータースポーツ&カスタマイズはZでスーパー耐久のST-Qクラスに出場
Auto Prove
県ごとにわかれていたディーラーが同一経営に! ホンダが直資系販売店を統合する狙いとは?
県ごとにわかれていたディーラーが同一経営に! ホンダが直資系販売店を統合する狙いとは?
WEB CARTOP
トヨタが新型「FF最大セダン」登場! 斬新“サメ顔”の特徴は!? 洗練内装にも注目!  カムリの日本発売は無い? 中国で試乗
トヨタが新型「FF最大セダン」登場! 斬新“サメ顔”の特徴は!? 洗練内装にも注目! カムリの日本発売は無い? 中国で試乗
くるまのニュース
スズキの兄弟車「GSX-8S」と「GSX-8R」 デビュー間もないけど、すでに永久保存版な予感
スズキの兄弟車「GSX-8S」と「GSX-8R」 デビュー間もないけど、すでに永久保存版な予感
バイクのニュース
BMWモトラッド、「自動シフトアシスタント」発表
BMWモトラッド、「自動シフトアシスタント」発表
レスポンス
【BMW Motorrad】最新ギア&ガーメントを紹介!アプリと同期できるナビ、春夏用の通気性がいいジャケットなど  
【BMW Motorrad】最新ギア&ガーメントを紹介!アプリと同期できるナビ、春夏用の通気性がいいジャケットなど  
モーサイ
気にしたことなかったかも…信号機の電気代っていくら?
気にしたことなかったかも…信号機の電気代っていくら?
月刊自家用車WEB
テスラ モデル 3【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
テスラ モデル 3【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン

みんなのコメント

2件
  • ランボルギーニのベースか。
    ドイツイタリアは随分中身の共用を仲良くやってますよね。VWもカイエンも・・

    スープラがBMだ・と揶揄する時代じゃないのかも知れないな。

  • もう話題にもならなくなったR8。
    R8ももうすぐ廃盤ですね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

3091.03508.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

568.72258.0万円

中古車を検索
R8 (クーペ)の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

3091.03508.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

568.72258.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村