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【津川哲夫F1新車私的解説】王座奪還の使命を背負う『W13』。メルセデスの個性的かつ不変の空力コンセプト

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【津川哲夫F1新車私的解説】王座奪還の使命を背負う『W13』。メルセデスの個性的かつ不変の空力コンセプト

 2月18日、2022年の新車発表7台目となるメルセデスの『W13』がお披露目された。レッドブルがFIAフレームの展示で留めた一方、メルセデスは発表会に実戦型の『W13』を登場させた。

 もう少し革新的な要素を期待していたが、外観の処理はここ数年続いてきたメルセデスのエアロコンセプトを継承することになった。『W13』は2022年から施行される新規則にあわせて、通常進化させてきたというのが最初に抱いた印象だ。

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 メルセデスのエアロといえば、フロアのベンチュリー効果の安定確保だが、2022年型車両はグランドエフェクトカーなので、方向性の修正はそこまで必要なかったのかもしれない。

『W13』は極端に湾曲したフロントウイングが特徴的だ。ノーズ周りのフロントウイングエレメントは後方に向かって立ち上がりの少ないフラットな面を持っている。ウイング上下の空気流をフロアベンチュリーへ送り込み、フロントのダウンフォースは、大きく盛り上がったウイングエレメントのアウター部分が受け持つという個性的な手法だ。

 リーディングエッジも特徴的で、フロア下へ空気流を取り込むリーディングエッジは高く持ち上げられ、若干後方へ下っている。ベンチュリートンネルの入り口には3枚のスピリッターが設けられ、その先端は前方へ飛び出しており、バージボード的効果が狙われているのかもしれない。

 またサイドポッド前端外側はスッパリと切り落とされ、えぐったようなカットになり、ポッド上面には低めの“フェンス”が設けられている。ポッドエッジの先端に当たる空気流をアウトウォッシュ(翼端板からタイヤの外側へ向かう気流)に送りだす意図もありそうな処理が実にメルセデス的だ。

 不思議なのはポッド下部で左右にはみ出すフロアエッジ部。よく見るとフロア上面が平らではなく、明らかにデコボコがある。数年前のエキゾーストブローのようなダクトでも隠されていそうな……トリック的な開発を得意とするメルセデスだけに、果たして二重フロアへのダクト埋め込みはあるのだろうか?

 サイドポッドは後方に続かず、コクピット後端で既にフロアへと消え、後はエキゾーストバルジを持つほどタイトなエンジンカバーへと続く。バックエンドのコークパネル部も可能な限りギヤボックス側へ絞られ、タイヤとギヤボックスの間に大きな空間を与えている。

 大きめのインダクションボックスはエンジン後部へ続くが、そこから大きく下に落ち込む。厚みはここで消滅し、コクピット後方に伸びるショルダー部は排熱を受け持ち、位置を下げることなく後端に続く。排熱開口部は確保しているが、ボディワークに数多くの排熱オプションが存在しているはずだ。

 リヤウイングも個性的でフロント同様、深い3D形状のW型に。DRSフラップは幅が広く、立ち上がりも大きい。メルセデスの得意とするフロアベンチュリーでスピードに応じたダウンフォースを確実に受け、前後のダウンフォースバランスを前後のウイングで確保。『W13』でもメルセデスお馴染みの空力コンセプトに変りはないようだ。

 あとは新しいパワーユニットのパフォーマンスと信頼性、耐久性の確立。それこそが2022年シーズンのメルセデスの行く末を占う大きな要素になるだろう。

《プロフィール》
津川哲夫(つがわてつお)
1949年生まれ。F1メカニックを志して1977年に単身渡英。トールマン、ハース、ベネトンなどのチームでメカニックを勤め、1990年シーズンでメカニックを引退。その後、F1中継でピットレポートやセッション解説、そして雑誌やwebメディアでメカニック経験を活かしたメカニカルな視点でF1の魅力を伝え続けている。

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