近づく約四半世紀のエンドロール
GT-Rである。もちろん今回のコラムのテーマだが、その選択理由は前回壮大な前置きとして書かせて頂いたので、いきなり本題に入ることにしよう(気になる方は下にスクロールして、前回のコラムをご覧ください)。
【画像】これでラスト? 日産GT-R2025年モデル 全55枚
日産GT-Rの2025年モデルは、今年の3月14日に発表された。その特徴は以下のとおりだ。
・『プレミアムエディション』に、青を基調とした専用特別内装色『ブルーヘブン』を新設定
・『プレミアムエディションTスペック』と『トラックエディション・エンジニアードbyニスモTスペック』のピストンリング、コンロッド、クランクシャフトなどに、今まで『ニスモ・スペシャルエディション』のみに採用していた、高精度重量バランス部品を採用。レスポンスの精度を高めた
・この2モデルには、赤文字で匠の名が刻まれたアルミ製ネームプレートと、ゴールドのモデルナンバープレートを、新たにエンジンルーム内に採用
価格帯は1444万3000円~2289万1000円と、随分遠い世界に行ってしまったが、モデル概要や台数を考えれば、これでも安いという見方もある。最終モデルになるかは明言されず、もしかしたらさらにラストの限定車もあり得るが、約四半世紀続いたそのヒストリーは、間違いなくエンドロールが近づいているというのが業界の予想だ。
ヘタなSUVよりも乗り心地がいい
さて、日産自動車の地下駐車場で対面した2025年モデルは、『プレミアムエディションTスペック』だった。ボディカラーはアルティメイトシルバーだ。
乗り込むと、タイトなシート、メーターと一体化され上下方向のみ動くステアリング、メーターまわりのカーボン、ショートなシフトノブ、3連の調整スイッチなど、次から次へと目に飛び込んできて、おお、と気が引き締まる。
ノーズを擦るのが怖くて、そろりそろりと駐車場の坂道をあがり、地上へ出た。恐る恐るアクセルを踏んでいるから、当然ながら動きも重い。低~く唸りながら、GT-Rはゆっくりと走り出す。
それまで普通のSUVに乗っていたせいもあり、ステアリングは重いというか、しっかりと手ごたえがある。スケジュールの都合上、そこから一気に120kmくらいを走ることになっていて、これで長距離はキツいか? と思いきや、わりと早めの段階で、ヘタなSUVよりも乗り心地がいいと驚いた。正確には足の処理、収まりがよくて、長年作ってきた熟成を感じさせるではないか。
運転席から見ると、ボンネットが意外と盛り上がっていることに気が付いた。武骨なイメージとは異なる、流麗さすら感じる。そしてボンネットの下には、『VR38DETT(3.8LV型6気筒DOHCツインターボ)』! 前回書いた我が家にあったY31型グロリア・グランツーリスモの『VG20E(2リッターV型SOHC6気筒)』とは、記号性からして段違いだ。
これは気持ちよく走れるスポーツカー
2008年に初めて乗った時は恐ろしく速いと思ったが、今はそれほどには思えなかった。しかしこれはあくまで相対的な話で、570psと言われて驚かないのは、完全にこちらがマヒしているだけだ。ボディサイズも同様で、当時はかなり大きく感じたが、全長4710×全幅1895×全高1370mmは、現代のスーパースポーツカーとしては、それほど大きくない部類となった。
しばらく高速道路を普通に乗っていたら、左の太ももがじわじわと熱くなり、触るとセンターコンソール付近も熱いことに気が付いた。6速デュアルクラッチと4WDのパワートレインがあるのだから当然かもしれないが、え、イマドキ? とちょっと驚いた。インターフェイスも古さを感じさせ、車両価格だけみれば、それに見合ってない気もする。しかしデザインも含めて、基本的な部分は確かに古いが、それは決してネガではなく、むしろ『心地よい古さ』と書くことに抵抗は覚えない。
翌日、撮影を兼ねて峠を目指した。するとワインディングでの身のこなしがよく、「これは気持ちよく走れるスポーツカーだなぁ」と印象がどんどんよくなっていく。
頂上付近で、インバウンドの方々がレンタルしてきたと思しき、インプレッサなど国産スポーツカーたちに出会った。そういう『頭文字D』的な世界においてGT-Rは天上車と言えるが、実はそうではなく、『GT』らしく、シレッとスマートに乗るほうがいいのではないかと思えてくる。
「あ、このクルマにはまった」
V6ツインターボの加速感。適度に重いステアリングと高いトレース能力。熟成された素晴らしい足まわり。4WDならではの安定感。合計300kmくらいを走行し体が馴染んできたら、GT-Rと一体になる、「あ、このクルマにはまった」と思う瞬間があった。そこから、思春期の頃から憧れてきた日産スポーツカーの頂点ともいえる、GT-Rへの愛おしさが止まらなくなり……。
約四半世紀、GT-Rは様々な時代を乗り越えてきたが、電動化の時代を迎え、いよいよこういったエンジン車のスポーツカーでは未来がないのかもしれない。でも、このボディサイズで、この作り方で、もう一度エンジンを搭載するスポーツカーを作ってほしいと、コクピットで左の太ももにじわじわと熱さを感じながら、そう願う自分がいる。
そして思い浮かんだのが、『愛と青春のGT-R』というタイトルだ。ないものねだりとはわかっていても、もっと愛に満ちたGT-Rの青春感を浴びていたいと思った。
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みんなのコメント
どこぞの雑誌社が今までモデルイヤー出る度に
ラストラスト騒いでましたけどね