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M史上最強の直6ツインターボ BMW X3 Mコンペティションに試乗 510ps

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M史上最強の直6ツインターボ BMW X3 Mコンペティションに試乗 510ps

Mディビジョンが本気で仕立てたX3

text:Tom Morgan(トム・モーガン)

【画像】BMW X3 MコンペとX4 Mコンペ 全59枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


BMWの中で近年急速に増殖中のMモデル。最新メンバーとして、X3 Mが加わった。サルーンやクーペ、コンバーチブルではなく、中型のSUVだ。

SUVのX3としては初めて、本格的にMディビジョンの手が加えられたクルマとなる。4輪駆動システムは、M5にも見られる自由自裁のトルク配分を実現した最新のもの。搭載されるエンジンは、2020年に登場すると見込まれるM3にも選ばれるであろう、最新の直列6気筒。

X3 M40iに積まれたB58型エンジンがMライトなら、X3 Mコンペティションがフロントに収めるS58形エンジンは、リアルなMだ。これまでMディビジョンが生んできたどの直6エンジンより、パワフルなユニットとなる。

ほぼ全面的に設計が見直されており、鍛造のクランクシャフト、ツイン・モノスクロール・ターボチャージャー、インダイレクト・インタークーラー、軽量シリンダーヘッドなどを採用。最高出力510ps、最大トルク61.1kg-mを発生させる。

これまでニューヨークとサーキットでX3 Mコンペティションは試乗してきた。ややアッパーモデルのX4 Mコンペティションと一緒に。英国の道で試乗するのは初めてとなる。

最高出力から察するべく、期待通りに望外に速い。直列6気筒の発するサウンドは、やや排気音を誇張気味に設定されていても、AMGのV8やアルファ・ロメオのツインターボV6ほど刺激的ではない。それでもX3の驚異的なスピードを充分に聴力でも味わえるサウンドを奏でる。

自然吸気のようにリニアなツインターボ

さらに印象的なのが、リニアに発生するパワー。ツインターボながら、回転フィールは自然吸気のようだから不思議。ライバルユニットのように、全回転域でみなぎるトルクや中回転域で弾けるパワーというものもない。回すだけ力が湧いてくる。

M5では自由に調整ができる4輪駆動システムだが、X3 Mの場合はそこまで自由は効かない。純粋な後輪駆動の設定もない。だが4輪すべてで510psを受け止めることで、2t近い車重のあるSUVを4秒ちょっとで100km/hまで加速させる。

操縦性はMらしく正確。優れたグリップ力とボディ制御が、ドライバーに操る自信を与えてくれる。ステアリングホイールの操舵感も、速度域を問わずダイレクト。後輪駆動に近いアルファ・ロメオ・ステルヴィオほどではないが、重量級のSUVとは思えない機敏な印象を与えてくれる。

反面、優れたボディ制御は日常的な快適性を多少犠牲にしている。アダプティブ・ダンパーを備えているが、英国の一般道では舗装からの入力を処理しきれず、落ち着きのない乗り心地だと感じた。

スポーティなモードに設定していても、大きなうねりやコブはうまくやり過ごせるものの、細かな振動は車内に届いてしまう。もっと酷いサスペンションを持つモデルも存在するが、一般道よりもサーキット向きの足回りだといえる。

Mスポーツ・ドライビングモードも用意

8速ATは、最もアグレッシブなモードを選ぶと変速は瞬間的に完了する。ステアリングホイールに取り付けられたシフトパドルを弾くのが楽しくなる。

ヘッドアップディスプレイには、選んだドライブモードによってはエンジンの回転数も表示してくれる。S58形エンジンのパフォーマンスをしっかり引き出すことを誘ってくれるようだ。

シフトパドルの横には赤く塗られたMスポーツ・ドライビングモード用のボタンが付く。エンジンやサスペンションなどを個別に設定して登録できるから、望めば最も過激なスロットルレスポンスに、最も柔らかい乗り心地を組み合わせることも可能。

それ以外、基本的にインテリアの雰囲気は標準のX3と大きな違いはない。センターコンソールに、小さなMスポーツのボタンが追加されているが、その程度だ。

キルティング加工された表面のシートは堀が深く、コーナーでもしっかり身体を支えてくれる。ステルヴィオのカーボンファイバー製バケットシートより、長距離移動でも疲れない包み込み感もあって座り心地はいい。

モニター式となったメーターパネルと、最新のインフォテインメント・システム、iドライブは、このクラスでも優秀な仕上がり。アウディのバーチャルコクピットほど自由にカスタマイズはできないが、ロータリースイッチもあり操作性は良い。

ドライバーの満足度はSUVで1番

高性能SUVの人気が高まる中で、BMW X3 Mコンペティションの登場を喜ぶドライバーも多いだろう。だが、それほど大きなボリュームとはいえないクラスには、華やかなライバルも数多く揃っている。その中でX3 Mコンペティションは秀抜とはいいにくい。

確かに充分には速い。だが乗り心地と操縦性は、ステルヴィオ・クアドリフォリオのダイナミックさと、ジャガーFペイスSVRの上質さとの、中間くらいにある。発するサウンドは、メルセデスAMGのGLC63が搭載するV8エンジンには敵わない。

英国の場合、舗装がきれいな区間でも乗り心地で良い印象は受けられなかった。日常的に利用するドライバーは、疲れを感じてしまうかもしれない。

それでも、ドライバーへの訴求力で最も優れたSUVとして考えれば、BMW X3 Mコンペティションは真っ先に選ばれるモデルではある。ドライバーは、ほとんど不満を感じない優れたドライビング体験を享受できるだろう。「コンペティション」と呼べるほど、楽しいわけでもないけれど。

BMW X3 Mコンペティションのスペック

価格:7万4470ポンド(1012万円)
全長:4708mm
全幅:1891mm
全高:1676mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.1秒
燃費:8.7km/L
CO2排出量:263g/km
乾燥重量:1970kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:510ps/5950-7200rpm
最大トルク:61.1kg-m/2600-5950rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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