クーペとほぼ同等のドライビング体験
執筆:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
【画像】思わずため息 ベントレー・コンチネンタルGT ハイエンド2+2コンバーチブルと比較 全126枚
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
コンチネンタルGT スピード・コンバーチブルの2436kgという車重を、シャシーは見事に制御。アンダーステアは、驚くほど効果的に抑え込まれている。しかし、狙い通りコーナリングラインへ落ち着くまでに、クーペより若干遅れる印象がある。
といっても、クーペでもコンバーチブルでも、より日常的な基準で評価すれば、ほぼ同等のドライビング体験を享受できるといっていい。スポーツ・モードでも、ステアリングホイールが過度に重くなったり、フィードバックが増えすぎることもない。
直感的にボディを導いていける。ただし、カーブが続く道での取り回しが難しい、幅が広く背の高いボンネットを備えた、大きなクルマであることに変わりはない。フロントガラス左右のAピラーは太く、斜め前方の視界が良いともいい難い。
綿密に練られたシャシーバランスで、磨かれた操縦性は味わえる。だが、このボディサイズが故に、急速に立ち上がる大きな慣性は避けられない。コンチネンタルGT スピードの能力を探求したいなら、充分なエスケープゾーンが必要になってくる。
正直なところ、GT スピード・コンバーチブルの能力を受け止められる道は、2021年の世界中を探しても殆ど見つからないだろう。ベントレーのオーナーが、そんな道を探求する時間を割くことも、珍しいことだと思う。
少なくとも、GT スピード・クーペは、コンバーチブルよりドライバーとの一体感が強いことは間違いない。より多くの充足感を得られる。
完璧なラグジュアリーモデル
ラグジュアリー・モデルとして、コンチネンタルGT スピード・コンバーチブルは完璧。2台を比べればボディ剛性や乗り心地の違いも見えてくるが、オーナーが心配するようなレベルにはない。
コンフォート・モードにして贅沢なシートに身を置けば、大きな隆起部分も路面が剥がれたような鋭い入力も、ボディを一切振動させずに受け流してくれる。サイドウインドウを上げれば、オープン状態でも暴風に悩まされることもない。
表面が荒れたアスファルトでは、肉薄なタイヤと開放的なボディのおかげで、ロードノイズの共鳴が届くこともある。しかし、サスペンションをコンフォートにしていれば、そんな場面も極めて限定的だ。
それ以外のほぼすべての路上を、コンチネンタルGT スピードはハイスピードで安楽に駆け抜ける。恐らく競合に該当するであろう、いくつかモデル以上に安楽に。
W型12気筒ツインターボ・エンジンの最高出力は、659ps。数字通りに強力だが、パワーデリバリーは若干穏やか。ターボブーストが立ち上がるまでの、少しのタメもある。
音響としては、このクラスの中で最も聴きごたえのあるエンジンとはいえないだろう。サウンドは充分に心地良いが、魂に響くような音色というわけでもない。
トランスミッションは8速デュアルクラッチATだが、高回転域でのシフトダウンを稀に拒否する場面があるようだ。少しのターボラグと同様に、気になる部分といえる。
ただしそれは、アクセルペダルをフロアまで蹴飛ばして、フラットアウトするような時に限る。コンチネンタルGT スピードのオーナーが楽しむような典型的な速度域で、水を指すようなことは一切ないはず。
明確な違いを備えるコンチネンタルGT
コンチネンタルGT スピードに、ステアリングホイールを握った時のエンターテイメント性を求め、シャープな操縦性がご希望なら、クーペの方をオススメしたい。ベントレーが意図した動的能力を、完全に発揮させることが可能なボディといえる。
違いを、一層味わうことができるだろう。超高速域で、ヘアスタイルを激しく乱されることもない。
反面、コンバーチブルへ強く惹かれたしても、GT スピードとしてオーナーを落胆させることはないことも確か。だが、少し手頃な価格の付いたGT V8コンバーチブルを選んだ方が、サウンドも良いし、より幸福を感じられるかもしれない。
浮いたお金で、オプションも上乗せできる。すべての方へ当てはまる意見ではないと思うけれど。
開発目的やその完成度に、疑問の余地はない。ベントレーは豪奢さはそのままに、シャシーとドライブトレインに焦点を当て、動的能力の明確な違いを体感できるコンチネンタルGT スピードを生み出した。
仮に700psへチューニングしたW12エンジンを載せただけでは、これほどの仕上がりには届かなかっただろう。
ベントレー・コンチネンタルGT スピード・コンバーチブル(欧州仕様)のスペック
英国価格:23万900ポンド(3509万円)
全長:4850mm
全幅:1964mm
全高:1399mm
最高速度:334km/h
0-100km/h加速:3.6秒
燃費:7.1km/L
CO2排出量:320g/km
車両重量:2436kg
パワートレイン:W型12気筒5950ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:659ps
最大トルク:91.6kg-m
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック
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