アタマの穴が「星」形状のボルトとは?
バイクは何千個ものパーツで構成されていますが、主要なパーツの組み立てには「ボルト」が使われています。ボルトは多くの機械に使われており、バイクではかつては六角ボルトや「+(プラス)」「-(マイナス)」ネジが主流でした。そして1980年台頃からは、六角穴付きボルト(キャップスクリュー)も増えてきました。
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ところが最近は「星」形のような、6個の突起のある穴が開いたボルトをよく目にするようになってきました。キャップスクリューと似ていなくもないですが、明らかに穴のカタチが異なります。このボルト、いったいどんな呼び名で、どんな工具を使って回すのでしょうか?
一般的な呼び名は「トルクス」だが……
このボルトは、一般的には「トルクス(英語ではTORX)」と呼ばれています……が、じつはトルクスは商標登録された製品名です。TORXは1967年にアメリカのテキストロン・カムカー社が開発し、アキュメント社が商標登録しています。そのため、アキュメント社のライセンスや技術指導を受けた製品でなければ使用できない規格となっています。
というワケで、このタイプのネジの一般名称は「HEXALOBULAR INTERNAL(ヘクサロビュラ・インターナル)」や、6個の突起と耳たぶを意味する「ヘックスローブ(ヘクスローブ)」と呼びます。
とはいえ、現在の日本のバイク界では、この形状の穴のボルトを「トルクス」と呼ぶことが常態化しているようです。
バイクでトルクスのボルトを最初に使ったメーカーは定かではありませんが、BMW Motorradは1990年代からブレーキやエンジン周りの一部に使っており、年を追うごとに使用箇所が増えています。またハーレー・ダビッドソンや、日本メーカーもヤマハやスズキがトルクスを使っています。
トルクスのボルトを使うメリットは?
昔からの「+」や「-」のネジ(ボルト)は、ドライバーを強く押し付けながら回さないと、ドライバーの先端が外れて(押し戻されて)ネジの頭をナメて(破損して)しまうことがあり、とくに固く締まったボルトやサビたボルトを緩める時が危険でした。それに対して六角ボルトやキャップスクリューは、ボルトの頭(または穴)と工具が接触する部分が増えたため、ナメる危険は減りました。
とはいえ六角ボルトやキャップスクリューは、ボルトと工具は基本的に「点接触」になります。しかしトルクスのボルトは工具と「面接触」になるため、工具が外れたりボルトの頭の穴をナメる危険がいっそう少なくなり、ボルト自体の耐久性も高いという特長があります。
また、ボルトを回す力(トルク)がネジの中心にかかりやすく、トルクの伝達効率が良く、シッカリ締められることもメリットです。
そして近年増えてきたとはいえ、トルクス穴のボルトは相応に珍しいので、部品を盗難されにくいというメリットもあります。その意味では穴の中心にピンが付いた(突き出した)「イジリ止めトルクスネジ(ボルト)」も登場しています。これはカスタムパーツの取り付けに使用することで、盗難抑止効果が見込まれています。
もちろん専用の工具が必要だが……
トルクスのボルトを締めたり緩めたりするには、もちろん専用の工具が必要です。ちなみに従来の六角ボルトは、ボルトの頭の対辺の幅=工具のサイズ(対辺の幅が10mmなら10mmのスパナを使用)で、キャップスクリューも同様に、六角穴の対辺の幅が六棒レンチのサイズなので解りやすいのですが、トルクスのレンチの場合は「T10」や「T25」……という具合に「T○○」というサイズ表記になります。
しかも、たとえばT25の場合はボルトの頭の穴の向かい合う突起の先端の寸法が4.43mm(0.173インチ)という具合で、工具の表記と穴のサイズがイコールではなく、少々難解です。
またトルクスのボルトのサイズによっては、ワンサイズ小さいレンチ(たとえばT27のボルトに対してT25のレンチ)でも「ちょっと緩いかな」ぐらいで回せなくもありません。もちろん、それではボルトとレンチの両方を傷めてしまいます。
メンテナンスや整備に不慣れな人がトルクスのレンチを使う際には、近似サイズのレンチを何本かあてがって、ボルト穴とレンチが確実に合うことを確認してから使うようにすれば間違いないでしょう。
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みんなのコメント
昔はキーシリンダーとかだけだったけど、近年は外から見えるところにも使われるようになったね。
キャップボルトより工具としっかり噛み合って頭を舐めにくいから、ちゃんと工具を揃えてる人にとっては使いやすい。