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【静寂な空間で際立つ】変わるクルマとスピーカーの関係 電気自動車でさらに

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【静寂な空間で際立つ】変わるクルマとスピーカーの関係 電気自動車でさらに

静かなクルマ=音を楽しむ空間に

text:Satoru Uno(宇野智)

【画像】日産とBOSEのタッグ【次世代日産担うアリアとノート・オーラ どんなクルマ?】 全140枚

editor:Taro Ueno(上野太朗)

メルセデス・ベンツは「ブルメスター」、BMWとアウディは「バング&オルフセン」、ジャガー・ランドローバーは「メリディアン」、国産車ではトヨタが「JBL」、日産やマツダが「BOSE」と、自動車メーカーが高級オーディオメーカーとタッグを組んで、モデルごとに専用オーディオを開発するようになってから随分と経つ。

ちなみに、世界初の車種専用設計のプレミアムオーディオはBOSEのもので、1983年に発売されたキャデラック・セビルに搭載された。

しかし、ここのところ急激に襲ってきたEVシフトの大波は、オーディオメーカーにも影響を及ぼすはず。

内燃機関を積んだクルマより圧倒的に静粛性の高いEVは、より最適な環境のオーディオルームにもなり得る。

EVでは、ロードノイズの車内への侵入抑止から風切り音の低減まで、綿密な設計を行い静粛性を担保する。これは、オーディオの音の良し悪しが、より明確にわかるようになっただけでなく、今まで以上に、より良い音が聴ける環境となった。

EVではないが、シリーズハイブリッドの「eパワー」専用モデルとなる日産ノート・オーラの試乗会に参加したとき、試乗車に日産と共同開発の「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」が搭載されていた。

ノート・オーラは、標準型ノートをベースに防音材を追加し、第2世代「eパワー」ではエンジン制御を見直して静粛性が向上されており、BOSEの音の良さが際立った。

試乗会にはBOSEの担当者が来ており、製品の特徴や開発工程の一部についてのひとしきりの話しを伺い取材を終えた。

その後、日産から新型高級SUVでEV「アリア」の国内予約注文開始のオンライン発表がおこなわれた。

そのアリアにも、BOSEのプレミアムサウンドシステムが採用されていることも明らかとなった。

そこで、日産へBOSEプレミアムサウンドシステムについての詳細を問い合わせたところ、BOSEのマーケティング担当者と個別のオンライン取材の機会を設けてくださった。

クルマでの「音づくり」 難易度が高い?

取材にご対応いただいたのは、BOSE シニアマーケティングマネージャーの鈴木玄氏。

まずは、アリアのプレミアムサウンドシステムを日産と共同開発するに当たっての根幹部分を成す、BOSEのカーオーディオにおける「サウンドフィロソフィー」の解説を受けた。

その「サウンドフィロソフィー」は、Spatial(空間表現)、Spectral(周波数特性)、Large Signal(大音量でのパフォーマンス)の3つで、それぞれについては以下のような説明があった。

Spatial(空間表現)は、原音に忠実で車室のサイズを感じさせない音場、コンサート会場にいるかのような感覚と興奮をもたらす。スピーカーの位置を感じさない、包み込まれるようなリスニング体験を実現する。

Spectral(周波数特性)は、音楽に繊細なディテールを与える高音域、自然なボーカルを再現する中音域、体を震わせるようなパワーをもたらすリッチな低音域をもたらす、すべての周波数帯域を忠実に再現する。

Large Signal(大音量でのパフォーマンス)は、フルオーケストラの大音量においても、空間表現と周波数特性を崩さず、不快な歪みを起こさない。

また、これらのフィロソフィーは、BOSEの成り立ちが、コンサートホール音響を再現するための研究であったことを起源とする、室内音響への取り組みがBOSEのレガシーとなっているとのこと。

カーオーディオは、家庭で聴くオーディオとは異なり、空間が狭いうえ、リスナーからみて左右非対称となるスピーカー配置、複雑かつ近い距離にある音の反射体や吸収体の数々があり、原音に忠実で再現性の高い音の再生が難しい環境となる。

よって、オーディオメーカーは、クルマでの音つくりが腕の見せどころにもなる。

アリア 「サウンドフィロソフィー」体現

BOSEの創始者、アマーGボーズ博士は、リスナーとスピーカの位置関係が常時固定されている車内環境を逆手に取り、それぞれのスピーカからの直接音や反射音を緻密に測定して制御、きわめて安定したリスニング環境を構築できることに着目した。

また、適切なスピーカー配置と信号処理やイコライザを組み合わせ、BOSEは、他社に先駆け、車種ごとに専用設計し音響チューニングを施したサウンドシステムを世に送り出した。

日産アリアでは、10スピーカーの「BOSEプレミアムサウンドシステム」が搭載される。

それぞれのスピーカーの種類と設置場所は次のとおり。
・ダッシュボード左右コーナー:65mm中高音域用スピーカー×2
・左右ミラーパッチ:19mmネオジウムツィーターx2
・左右フロントドア:165mmウーファーx2
・左右リアドア:130mmネオジウムワイドレンジスピーカーx2
・リアカーゴ:アクースティマス ベースボックス 115mmウーファーx2

特徴は、フロントの3対のスピーカーが、低域/中域/高域にそれぞれ分かれたフロント3ウェイ構成であることと、アリアの車室にあわせてスピーカーレイアウトを最適化したこと、音響チューニングにより4席すべてで自然なサウンドステージが体験できるようにしたこと。

また、広い放射角のツィーターを対向配置し、左右のバランスを取った自然なサウンドフィールドと、アクースティマス ベースボックスがもたらすリッチな重低音も特徴とのこと。

しかし、10スピーカーとは、プレミアムオーディオとしては数が少なめでセンタースピーカーもない。

スカイライン現行モデルの「BOSEパフォーマンスシリーズサウンドシステム」では、16スピーカーでセンタースピーカーも備える。

ちなみに、ノート・オーラの「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」では、センタースピーカーがないかわりに、フロントシートヘッドレストに1対のスピーカーを備えている。

また、スピーカーの配置はフロントシート重視のような印象を受ける。

「スピーカー位置」でのせめぎ合い?

スピーカー数が多いほうがいい、というものではないことを重々承知しているが、ましてや、アリアは日産のEVのフラッグシップである。

このスピーカー構成について、鈴木氏にたずねてみると、「開発は日産と協力して念入りにおこなった結果、センタースピーカーなしの10スピーカーとなった。リアシートを含めて全席で最良の音となるようスピーカー配置を考え、チューニングした」とのこと。

リアシートで聴く音も、フロントシートと同様の高い音質を確保したようだ。

筆者はさらに「日産の開発陣とスピーカー位置について、せめぎ合うことはなかったのか?」と突っ込んで訊いてみたところ、「お互いに協力して開発した」という月並みな回答が返ってきたが、鈴木氏の表情からは、ひょっとしたら一筋縄ではいかなかったのでは? と感じた。

これは、邪推かもしれないが、BOSE社としてもEVでの開発は、まだまだ数が少ないうえ、今や日産のアイデンティティにもなったEVでかつフラッグシップモデルとなると、日産とBOSEの双方でさまざまな課題があったのだろうと推察する。

出力や数ではなく 伝統に裏打ちされた技術

BOSEのスピーカーシステムは、公共施設でも多く採用されている。

山手線の駅ホームのスピーカーに、BOSE製が採用されているのをよく目にする。

騒音が多い広い空間で大音量の放送をしても、しっかりと人の耳に音を届けるのは、「Large Signal(大音量でのパフォーマンス)」のフィロソフィーが生かされた技術の1つであろう。

鈴木氏は「BOSEは、カタログスペックの数値でアピールすることをしません。他メーカーでは出力◯Wと高出力を謳い文句にしているが、BOSEはそうしていない」と付け加えた。

たしかに、大音量で聴いても破綻せず音を楽しめるBOSEのカーオーディオ製品に、出力◯Wと強調されたコピーを見かけたことがない。

少なくとも日産のラインナップでは、Webカタログに、出力の記載すらなかった。

BOSEとしては、低消費電力で大きな音を生み出す高効率のスイッチングアンプを当初から採用していた伝統に裏打ちされた技術があり、これはエンジンでいうなれば、ダウンサイジングターボのようなものだろう。

また、電力消費量がカギとなるEVにおいては、BOSEにはアドバンテージがあったと思われる。

残念ながら、アリア「BOSEプレミアムサウンドシステム」を試聴する機会は、もう少し先になりそうだ。

しかし、ノート・オーラをはじめとした日産とBOSEの共同開発オーディオシステムは、既に高い評価を受けているので、期待は高まる。

鈴木氏は、欧米では、より良い音で音楽を楽しむことを目的に、BOSEのサウンドシステムが搭載されたモデルを選択するユーザーが少なくないとも語った。

音にこだわる人で、EVを選択するユーザーは、これまで以上にオーディオの良し悪しが、選択の判断材料となるだろう。

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