「ポルシェ」というと、どんなイメージをお持ちだろうか。
時代とともに変わってきているとは思うが、「壊れる」「うるさい」といったところがすぐに思い浮かぶイメージかもしれない。
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ボクにもそう考えていた時期があった。
そう、ポルシェを購入し、自分のものとして乗るまでは。
ボクは、ポルシェと名のつく車には3台乗りついできた。
初代ボクスター(986)、911カレラ(997)、三代目ボクスター(981)だ。
全て水冷世代となり、だからここでいう「ポルシェ」とは水冷世代のポルシェを指している。
ボクが最初のポルシェ・ボクスターを購入したのは2002年だから、もう15年ほども「ポルシェ歴」がある、ということになる。
そして、それだけ長くポルシェに乗っていると、周囲からいろいろと聞かれる機会も増えてくる。
そして、受ける質問の多くは「現在のポルシェとは乖離している」、ステレオタイプなものばかりであることに気づかされる。
ここで、代表的な4つの質問とボクの答えを紹介したい。
ポルシェは壊れる?
ボクの知る限りだが、ポルシェは壊れない。
ボクがポルシェを所有している間に経験したトラブルは三つだけだ。
一つめは最初のボクスターにおいて、ABSセンサーのチェックランプが点灯したこと。
これの原因は定かではないが、段差を超えた時に一瞬だけ、いずれかの車輪が浮いたために空転したようで、それがコンピューターにとって「エラー」だと映ったようだ。
ディーラー(ポルシェセンター)にてテスターを当てたところ、エラーのログは残っていたが不具合は見つからず、エラーログをリセットしたのちは一度も再発しなかった。
二つめは911カレラで経験したことだが、ブレーキペダルの裏にあるスイッチが壊れた。
このスイッチによってブレーキが踏まれたことを検知し、ブレーキランプを点灯させる仕組みとなっているのだが、これによってブレーキの動作に影響が出るわけではなく、単にスイッチが破損しただけだ。
3年乗ったのちに壊れたので、許容できる範囲だと言えるだろう。
これの修理にかかった費用は3,000円程度であり、修理費用もリーズナブルと考えていい。
三つめは981ボクスターにおけるテールランプのLED切れだ。
これは購入直後だったので無償で対応(テールランプ丸ごとの交換だ)してもらい、その後はやはり再発していない。
いずれも所有した期間や走行した距離を考えると、「かなりトラブルは少ない」とボクは考えている。
なお、上記トラブルはどれもセンサーがそれを検知し、オンボードコンピューターに表示されることでそれとわかったものだ。
ポルシェはセンサーの数が多いと言われ、ちょっとした不具合やエラーでも何らかの表示が出ることがある。
そして、こういったエラーは社外品のパーツを使用することで「出やすく」なる。
エアクリーナーをちょっと吸気効率の高いものに変えたり、マフラーを変えるだけでO2センサーがエラーを出すことがあるのだ。
やはり社外品の灯火類に交換した場合も同じだ。
ポルシェはもともと完成度が非常に高く、工場から出荷された時点で工業製品としては「完璧」に近い。
それを部分的に半端な社外品へと交換することでバランスが崩れ、そのバランスの変化をポルシェのセンサーが「エラー」として検出することがある。
実際にポルシェが「壊れた」という人の話を聞いてみると、何らかのパーツ交換を行ったことが原因で「壊れた」ケースが多いようだ。
通常の車であればパーツ交換=グレードアップとなるが、ポルシェの場合はもともと最高レベルのパーツを装備しているので、下手にパーツ交換を行うと「グレードダウン」になってしまう。
ポルシェの維持費は高い?
ボクの経験から言えば、ポルシェの維持費は高くない。むしろ安い。
まずは点検や整備にかかる費用だが、これはBMWやフォルクスワーゲンと変わらない、と言っていい。
911カレラの車検はバッテリーを交換しても17万円程度で収まったが、同じ時期に所有していたミニクーパーS(R56)の車検はバッテリーを交換しなくても15万円を要した。
燃費についても、ポルシェのそれは悪くない。いや、「優れる」と言ってもいい。
981ボクスターは実燃費でリッターあたり11キロ以上走るため、サルーンやミニバン、SUVなどに比べると良好だとボクは認識している。
一般にはスポーツカー=燃費が悪い、と思われがちだが、実はそうとは限らない。
スポーツカーにとって「軽さ」は絶対的な命題だ。
よって、サルーンやミニバン、SUVよりもスポーツカーはずっと軽い。
そして、軽いということは燃費が良い、ということにも直結する。
ただ、スポーツカーはエンジンを高回転まで回すと「気持ちいい」。
だから、ついついエンジンを回してしまう。
そうすると当然多くの燃料を消費することになるが、これをして「燃費が悪い」ということはできるかもしれない。
あとは任意保険だが、これも高くはない。
911カレラでは、信じられないことだが「エコカー割引」が適用された。
加えてポルシェはオーナーの年齢層が高かったり、大事に乗ったりするのだろう。事故率が低いと見え、料率が国産スポーツカーに比べるとかなり低い。
実際にボクは、日産フェアレディZ(Z32)からポルシェ・ボクスターに乗り換えた時、ガソリン代、点検整備費、保険など維持費が大幅に安くなったことに驚いた。
「初めてのポルシェ」だったためにボクスター購入後は「維持できるかどうか」が心配だったのだけれど、そんな心配は無用だった、というわけだ。
蛇足になるが、ポルシェはあまり改造費用がかからない。
もともとの完成度が高く、改造しなくても十分速いためだ。
ボクがそれまで乗ってきたスポーツカーは、どこかに必ず不満があった。
それはパワーであったりブレーキであったりサスペンションであったり、ボディ剛性であったりした。
だからボクはそう言ったクルマにおいて、エアクリーナーやマフラーを交換し、サスペンションも交換し、タイヤやホイールも交換し、ブレーキも交換し、ボディも補強した。
だが、ポルシェのブレーキやハンドリングに不満を抱く人はまずいないだろう。
だからポルシェでは改造する必要はなく、したがって改造費用もかからない、と考えている。
ポルシェは一般人には購入したり維持できない?
これについてもよく聞かれるのだが、購入も維持も問題はない、と考えている。
購入についてはその残価の高さに起因し、ローンを組んだとしても毎月の支払い額が低く収まるからだ。
これについてはまた別に機会を設けて説明したいと思う。
維持に関しては上述の通りで、ポルシェは維持費が輸入車にしては異例に安い。
ただし、そのポルシェとていくつか例外がある。
一つは「空冷世代のポルシェはパーツ代が高い」こと。
この世代のポルシェは現在の「ポルシェ・ジャパン」ではなく「ミツワ自動車」が輸入していた。
この時代(1997年まで)のポルシェはパーツの価格設定が基本的に高くなっている(現在は改定され、安くなっているかもしれないが)。
もう一つは、水冷世代であってもエンジンオイルの量が多く、よってオイル交換一回あたりの金額が高い。
フラット6エンジンだと8リットルくらいエンジンオイルを飲み込むので、そのぶん費用はかさむことになる(普通の車の倍くらいだと考えていい)。
今やポルシェは年間20万台以上を販売する自動車メーカーだ。
ポルシェよりも多く台数を販売するメーカーはもちろん多い。
しかしポルシェはモデル数が少なく(911、ケイマン、ボクスター、カイエン、マカン、パナメーラの6車種しかない)、その割に全体の販売台数が多いということになるが、つまり「1モデルあたりの販売台数が多い」ということだ。
そして911、ボクスター、ケイマンといったスポーツモデル間ではある程度パーツの共有がなされている。
つまりは大量生産によってパーツのコストが安くなっている、と考えていい。
余談にはなるが、ポルシェは市販車もレースカーも基本的に車体やパーツがあまり変わらない。
そして耐久性も高く、壊れにくい。
だからレースをしていてクルマが「壊れた」としても、市販車と同じパーツを使用できる場合が多く、よって費用が安い。
これが「レースをするにはポルシェが一番安上がりだ」と言われる所以でもある。
ポルシェは遅い?
時々、ポルシェは遅い、という話を聞く。
これは国産チューンドカーに乗っている人がそう捉えている場合が多いようだ。
もしくはジャーマンスリーのスポーツグレードに該当するクルマに乗っている人がそう指摘する場合もある。
これはどういうことだろう?
ボクは単純に、そのメーカーが対象とする速度域の差だ、と考えている。
例えばジャーマンスリーの発売するクルマには「紳士協定」によってリミッターが付与されている。
そして、そのリミッターは時速250キロで発動する。
しかし、ポルシェにはリミッターがない。
これは911やボクスター、ケイマン、ボクスターといったスポーツモデルだけではなく、カイエンやマカン、パナメーラにも設定されていない。
例えば同じエンジンパワーだった場合、ジャーマンスリーの車は時速250キロを上限にギア比を設定するかもしれない。
しかし、ポルシェの場合はそうではなく、時速300キロまで使えるギア比を設定する。
これがどういった差異を産むかというと、上限を下げたギア比の方が一般にクロスレシオとなり、つまり「加速が良くなる」。
こういった、対象とする速度域やリミッターの有無が「ポルシェと他メーカーの差」だとボクは考えている。
ポルシェは「ずっと高い速度域」をその生息域としているが、他のメーカーが対象とする速度域はそれよりも低い。
どの速度域においてそのクルマがもっとも生き生きとするか、というだけの話で、もし「ポルシェが遅い」と感じるのであれば、時速250キロで走ってみるといい(もちろんサーキットで)。
他メーカーの車がそこに到達するまでの加速(最初は速いが、徐々に加速が鈍くなってくる)と、ポルシェの加速(加速感が途切れずにその速度域にまで達する)との差に唖然とするだろう。
さらにポルシェは、リミッターを持つクルマが「それ以上先に」行けない速度にまで達することができる。
そして、ポルシェは「時速300キロ近く、もしくはそれ以上で走り続ける」ことができるクルマでもある。
確かに現代では時速300キロを「出せる」クルマは他にも存在するだろう。
だが、「300キロ出る」ということと、「300キロで”走り続ける”ことができる」ということとは別問題だ。
300キロで走り続けるには、直進安定性を実現するエアロダイナミクス、その速度域でも車両をコントロールできるステアリングやブレーキを持つ、ということだ。
そういったクルマをポルシェ以外で探そうとなると、そう簡単に見つかるものではない。
ただ、最新のポルシェのほとんどはターボエンジンを積むこととなった。
これによっていかなる速度域においても強烈な加速を実現するにいたっており、たとえ低速域における加速であっても現代のポルシェを「遅い」と感じる人はいないだろう。
以上がボクの感じる、ポルシェにおける世間の一般的な認識と現実との乖離だ。
ポルシェは壊れないし、燃費もいい。値下がりが小さいために残価設定ローンを使うと買いやすいし、点検にもさしてお金がかからない。
そして他の車では到達できないような速度域に到達し、そしてコントロールができる車でもある。
[ライター・撮影/JUN MASUDA]
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