最近は少ないような気もするが、以前は「なんだかよくわからない新型車」が、大手自動車メーカーから時折リリースされていた。
だが、そういった新型車はコンセプトもデザインも「なんだかよくわからない」ゆえに、もっと端的に言ってしまえば「変態的」であるがゆえに、あまり人気は出ず、割りとあっという間にカタログから消えていった。
小ベンツだけど作りはSクラス並み いまだにファンが多い190の中古車
しかし新車のカタログから消えていった変態不人気車のうち一部は、希少な中古車として(ごく一部の)変態的ユーザーからは熱烈に支持され、その相場がそこそこ高騰したりもする。
今回はそんな台数の少ない希少価値のある、変態グルマをとりあげ、今中古車市場でいくらで売られているのか、調べてみた。
文/伊達軍曹
写真/トヨタ 日産 ホンダ マツダ スバル スズキ いすゞ
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■変態グルマの勝ち組3台
東京モーターショー出展から約3年半後となる1997年3月、“VehiCROSS(ビークロス)”が発売された
いすゞビークロスの中古車情報はこちら!
具体的には、コンディションの良い個体は230万円ぐらいで売られている いすゞ ビークロス(なんとも変態的で素晴らしいデザインのSUVだ)や、登場時は大バッシングを食らって消えていったが、現在は上モノが220万円ほどで販売されているホンダCR-Xデルソル、同じく上モノは130万円ぐらいとなるスバルR1(これもすばらしく変態的な軽自動車だった……)あたりが、変態グルマ界の勝ち組といえるだろうか。
デルソルはオープンルーフが「トランストップ」と名付けられた電動式とマニュアル式とを選ぶことができ、マニュアル式のルーフは取り外しも可能だった
ホンダCR-Xデルソルの中古車情報はこちら!
スバルR1は先にデビューしたR2がゆったりと4人が乗れるのに対し、2+2ではあるが、基本は前席2人のためという、ある意味非常に贅沢なコンセプト。乗り心地も上質でいまだにファンが多いクルマだ
スバルR1の中古車情報はこちら!
で、ほかにもこんなクルマはあるのだろうか? それとも、やはり変態不人気車は中古車になっても不人気なまま、超激安相場を形成しているか、あるいはマニアックすぎて絶滅しているのだろうか?
そのあたりが気になったため、1台ずつ調べてみることにした。
■「懐かしの変態レトロ顔」編/インプレッサカサブランカ
1998年12月に5000台限定で発売された、レトロ顔のインプレッサ スポーツワゴン、インプレッサカサブランカ。当時、レトロな顔つきの軽自動車が発売され、じゃ、インプレッサでもという軽いノリで作ったがまったく売れなかった……
まずは小手調べとして「懐かしの変態レトロ顔」編である。変態レトロ顔といえば、なんといっても1998年12月に発売されたスバルインプレッサカサブランカだろう。
当時、軽自動車で人気となっていた「レトロ顔」を、何を思ったか初代インプレッサに適用。そのレトロ顔がイケメンだったらまだ良かったが、ハッキリ言って超絶ブサイクであったため、いまいち売れずに消えていったスバルの黒歴史だ。
そんなインプレッサカサブランカも、今となってはごく一部で静かな人気となり、もしかしたら中古車が150万円以上で販売されている……なんてことはなかった!(笑)
2021年6月中旬現在、大手中古車情報サイトに掲載されているインプレッサ カサブランカはわずか2台で、その価格も15万円と45万円。……これはもう相場高騰どころか「絶滅への道」を歩んでいるといえるだろう。
■「懐かしの変態レトロ顔」編/マーチボレロ
1997年、2代目K11型ベースのマーチボレロ
では同じくレトロ顔の乗用車であった日産マーチボレロはどうなっているのか?
初代マーチボレロは、1997年に2代目マーチ(K11)をベースにオーテックジャパンが作ったレトロ顔のマーチ。
超カッコいいとは言い難い造形だが、インプレッサカサブランカと比べれば「まあまあ見られるデザイン」ではある。
2004年、K12型ベースのマーチボレロ
その後、3代目マーチ(K12)をベースとするボレロも2004年12月に発売され、現行K13型マーチでも、オーテックジャパンが「ボレロ」を作っている。
まぁ現行型のことはおいといて、K11ボレロとK12ボレロは今どうなっているのか?
まずK11(2代目マーチ)のボレロは全国でわずか3台! しかも激安! 具体的には39万~45万円ぐらい! これは……絶滅へと向かうコースだろう。
だが一方のK12(3代目マーチ)のボレロはけっこう数が多い。といっても全国で18台だが、この種のクルマとしては健闘している部類に入る。
しかし、相場は激安というか普通のK12マーチと同じようなもので、10万~40万円といったところ。たぶん、このままのペースで淡々と余生を過ごすのだろう。少なくとも、高騰する気配は微塵もない。
■なぜか追加された謎のセダン/エリオセダン
2001年1月にエリオの5ドアハッチバックが登場し、2001年11月にエリオセダンが追加、2007年11月に販売終了。総生産台数はセダン、ハッチバック合わせて2万1956台
ならばスズキのエリオセダンはどうだろうか? スズキが2000年代に販売していた5ドアの小型ハッチバック「エリオ」に、なぜか追加された謎の4ドアセダンである。
……だが2021年6月中旬現在、大手中古車情報サイト――具体的にはグーネットとカーセンサーnetにはエリオセダンの物件は1台も掲載されておらず、ついでに言えば、両者の「カタログ」のコーナーでも存在を無視されている。涙。
「さすがにスズキエリオセダンは完全に絶滅したか……」と思っていたら、「みんなの中古車市場」というIT系の会社が運営している中古車情報サイトに、2004年式のエリオセダンが1台だけ掲載されているのを発見! そのプライスは、走行2.2万kmという超低走行物件であるにもかかわらず42万円。
……この価格を「激安」と言うべきなのか、それとも「ハッチバックのほうは20万円ぐらいが相場なのだから、セダンのほうはいちおう高騰してる」と解釈するべきなのかは、自分でもよくわからない。
だがいずれにせよ、このセダンの中古車は「超レアもの変態国産車」を探している変態さんにとっては、魅惑のチョイスなのかもしれない。
手前が5ドアハッチバックのエリオ、奥がエリオセダン
■変態グルマ絶滅編/オートザムクレフ
オートザムクレフはクロノス6兄弟の5番目(実は特に順番はない)。6兄弟のなかではスポーティセダンの性格が与えられ、フロントの鼻の穴のようなスモールランプが印象的だった。総生産台数は5258台
では、ここからは「真打ち」の登場である。顔や内装だけをレトロにした小手先の変態クルマではなく、エリオセダンのような謎すぎるモデルでもなく、「クルマ好きにはけっこう刺さるデザインとスペックを有していたのに、不人気ゆえに消えていったモデル」の現在地を探ってみよう。
まずはオートザムクレフ。「クロノスの悲劇」でおなじみのマツダクロノスの、やたらとたくさんある姉妹車のひとつ。クロノスはマツダ店、アンフィニ店がMS-6、MS-8、ユーノス店がユーノス500、オートラマ店がテルスター、オートザム店がクレフだった。
FFの場合は2Lおよび2.5LのV6ユニットを積む、なかなか素敵なスポーツセダンではあった。まったく売れなかったが……。
そんな真打ちマツダクレフの現在の中古車流通台数は……0台! 大手サイトだけでなくインディーズ系のサイトにも掲載なし!
■変態グルマ真打ち編/ランティスクーペ2.0タイプR
1993年9月~1997年12月まで販売されたマツダランティス。写真は170ps/18.3kgmの2L、V6エンジン搭載のランティスクーペ2.0タイプR
マツダランティスの中古車情報はこちら!
……ということでクレフの出落ちというか絶滅を見届けたうえで、本当の真打ちへと進もう。マツダランティスクーペの2.0タイプRだ。
マツダ ランティスは今なおエンスー各位からの評価が高い1993年登場の4ドアクーペ(実際は5ドアハッチバック)とセダン。
クーペのほうは、お茶の間の人々からは黙殺されたが、いわゆるクルマ好きな人種からはなかなかの高評価を得たものだ。そのタイプRは、2L、V6DOHCを搭載した最上級グレードである。
で、お茶の間はさておきマニアからは人気だったランティスクーペのタイプRだけに、今やけっこうな高値になっているかと思いきや……平均価格はたったの40.6万円! ていうか全国で3台しか流通しておらず!
……ちょっと古いクルマ全般がブームとなった最近までそれなりの数が現存していれば、それをレストアした中古車がけっこうな高値を付けていたはずのランティスではある。
だが、ブームがやってくる前に「ほぼ絶滅」という状況になってしまったようだ。さぞかし無念であったろう。南無~。
全長4245×全幅1695×全高1355mm、ホイールベースは2605mm。4ドアクーペは1994年から始まったJTCCに参戦したが苦戦。ランティスは合計4万3300台ほど販売された
■よくぞ残っていた変態グルマ感激編/サニー305 Re NISMO
6代目サニーベースのサニー305 Re NISMO(後期型)
ダイレクトイグニションのホームページはこちら!
個性的なテールレンズの形状。走行距離は8万9000km
では最後に、大トリの「日産サニー305 Re NISMO」について調査してみよう。
サニー305 Re NISMOは、6代目サニー(B12)3ドアハッチバックのDOHCエンジン搭載グレードである305Reをベースに、専用のNISMOエアロとホイール、シート、ステアリングホイールなどを装着し、足回りにも専用チューンのスポーツサスが組み込まれたホットハッチ。
いかにも(ごく一部で)人気が出そうなスペックとバックグラウンドを持つサニー305 Re NISMOだが、2021年6月中旬現在の中古車流通量はわずか1台!
「10台ぐらいのNISMOが、200万円以上ぐらいの高騰相場を形成している」という状況ではなく、むしろ「ほぼ絶滅」といえる状況にあるようだ。無念。
だがカーセンサーnetにて1台だけ、北海道札幌市の販売店「ダイレクトイグニッション」がサニー305 Re NISMOを売りに出しているのを発見した。
しかしそのプライスは「ASK」となっているため、具体的な値段がわからない。こちらの販売店が売っている他の物件の価格から類推すると「……180万円ぐらいか?」と思うのだが、自信はない。
まぁ机の上で考えても決して正解は出ないため、販売店に聞いてみるほかないということで、電話をかけてみた。
――もしもし、ダイレクトイグニッションさんですか? こちらの305 Re NISMOはどこで仕入れたんですか?
お店の人 それがオートオークションにたまたま出てきたんですよ! 弊社としてもびっくりしました(笑)。
――オークションにはたまに出てくるんですかね?
お店の人 いや~、ウチも変な車を積極的に仕入れている販売店ですが(笑)、そんな弊社の仕入れ担当ですら「現物は初めて見た!」というぐらいの超絶希少状態ですね。
ニスモステアリングにホワイトメーターを装着
――価格は「ASK」とのことですが、ぶっちゃけ、おいくらぐらいで販売されるご予定ですか?
お店の人 おおむね〇〇〇万円ぐらいと考えています。
――なるほどぉ……そのお値段って、記事に出しちゃっても構いませんか?
お店の人 いや~すみません、記事の中でもいちおう「価格は応談」としておいてもらえますか?
と言いますのは、価格を出しちゃうと「ひやかし」の方がすごく増えちゃうんですよね……すみません。
でも「本気の人」からお問い合わせをいただけたなら、普通にお値段をお伝えします。なので、もしもこの個体が本当に気になるのであれば、ぜひお気軽にお問い合わせくださいね……と書いておいてください!
――了解です! 突然のお電話にもかかわらずご対応いただき、ありがとうございました!
※ ※ ※ ※ ※ ※
結局のところ、今回取り上げた車種に関しては「相場が謎の高騰をしている」ということはなく(サニー305 Re NISMO以外)、不人気車は格安不人気車のまま、消えゆく運命の途上にあるようだった。
だが「超絶レアな人気薄車だからこそ、可愛くてたまらない!」と感じる人もいらっしゃろう。
そういった人には、これらモデルが本当に絶滅してしまう前に、諸々のアクションを起こしてみることを推奨したい。
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みんなのコメント
四駆でもターボでもMTでもない古いインプレッサなんてさすがにいらんやろ
重度の変態がカサブランカWRXを作るための部品取り車の方が需要がありそうだな。