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【F1第12戦無線レビュー(2)】順位を入れ替えるべくノリスを説得するマクラーレン「今すぐ、やってくれ。今すぐだ」

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【F1第12戦無線レビュー(2)】順位を入れ替えるべくノリスを説得するマクラーレン「今すぐ、やってくれ。今すぐだ」

 2024年F1第13戦ハンガリーGP。マックス・フェルスタッペンとレッドブル陣営が戦略を巡って言い争うようなやり取りを繰り広げる一方、マクラーレンはチームオーダーに関してランド・ノリスの説得にあたっていた。ハンガリーGP後半を無線とともに振り返る。

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【F1第13戦無線レビュー(1)】フェルスタッペンとレッドブル陣営に不穏な空気「アンダーカットを放置して、素晴らしい戦略だ」

 オスカー・ピアストリがランド・ノリスを従え、マクラーレンは磐石のワン・ツー体制で周回を重ねていた。しかし45周目、チームは2番手のノリスを先にピットに入れる決断を下した。その2周後にピットインしたピアストリは、ノリスにアンダーカットされ、首位の座を明け渡した。するとすぐに、ノリスの担当エンジニア、ウィル・ジョゼフがこんな指示を出した。

48周目
ジョゼフ:オスカーがすぐ後ろだ。君の都合のいいところで、順位を再構築したい。

 re-establish(再構築)とは何とも気取った言い方だが、要するに順位を譲れという指示だった。しかしノリスから返事はない。ピアストリ陣営では、ノリスが譲ってくれる前提で、レースを進めていた。

51周目
トム・スタラード(→ピアストリ):ランドに追いついたら、すぐに順位を入れ替える。ただしペースは失わないようにね。

 しかしノリスには、一度手にした首位の座を簡単に譲るつもりはないようだった。

54周目
ジョゼフ:ランド、オスカーは3秒8後方、ハミルトン、ルクレールは12秒、マックスはそのすぐ後ろだ。タイヤをセーブして、オスカーを先に行かせてくれ。
ノリス:う~ん、先に(ピアストリを)ピットインさせるべきだったんじゃないの?
ジョゼフ:そういう問題じゃなくて。
ノリス:いや、そういうことでしょ。

 一方、レッドブルでは、5番手まで後退したマックス・フェルスタッペンと、担当エンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼが、ほとんど言い争いレベルのやり取りをしていた。

54周目
ランビアーゼ:ずいぶん優しい入りじゃないか。
フェルスタッペン:そんな言い方をしないでくれ。それは君たちが、僕にこんなクソ戦略を与えたからじゃないか! そうだろ? 僕はそこから、何とかしようとしているだけだ。

 同時並行で、マクラーレンではジョゼフによるノリスへの説得が続いた。

57周目
ジョゼフ:タイヤ使いすぎている。ターン4、ターン11。ターン6と9の出口もだ。正しい方法、わかってるよね。

 早くペースを落とせという指示に対し、従わないノリス。ついにはタイヤ戦略の責任者でもある今井弘エンジニアの名前まで出してきた。

ジョゼフ:きみのタイヤの使い方に、ヒロシはちょっとストレスが溜まっている。

60周目
ジョゼフ:あと10周だ。ふたりともタイヤを使いすぎている。毎週日曜朝のミーティングを思い出せ。

 ミーティングの具体的な内容は知る由もないが、たとえばレース1周目で首位に立ったドライバーの順位を尊重するとか、その種の取り決めがされているということなのだろう。するとノリスは、こう応えた。

ノリス:彼に追いつけと伝えてくれ。

 そう言いながらノリスはペースを上げ、ふたりの差はジリジリと広がっていった。

 一方フェルスタッペンは57周目にルクレールを抜き、4番手に上がっていた。続けてハミルトンを激しく追い立てる。62周目のターン2から3にかけてアウト側から被せるも、抜ききれない。

62周目
フェルスタッペン:(ハミルトンは)1車身、残すべきだったんじゃないのか
ランビアーゼ:いや、マックス。君はエイペックスで先行してないと思う。
フェルスタッペン:ふ~ん、そうなんだ。

 フェルスタッペンの抗議は正当ではないと言うランビアーゼ。これまであまり聞いたことのないふたりのやりとりだった。

63周目
ジョゼフ:ランド、(ピアストリが)追いつけない。きみが速いのはわかったけど、今の問題はそこじゃない。
ノリス:でも彼の方が、ずっと速いタイヤだろ? そもそも僕はあそこでアンダーカットするつもりはなかったんだ。後からピットインしていたら、そのまま行っていたのに。
ジョゼフ:あのピットインの順位は、チームのためだった。1ポイントでも多く獲らないといけないからね。
ノリス:もちろんわかるけど、でも僕だってチャンピオンシップを戦っている。そうだろ?
ジョゼフ:きみを守ろうとしているんだ。わかってくれ。

 担当エンジニアのジョゼフにしてみれば、ノリスに優勝してもらいたい。しかしチームからの指示は絶対だ。

 そして63周目のターン1で、インを突いたフェルスタッペンとハミルトンが接触する。

フェルスタッペン:彼はブレーキングで動いた。
ランビアーゼ:他のチームと無線で喧嘩するつもりはない。スチュワードに任せよう。子供じみた無線はやめるんだ。

ハミルトン:僕はステアリングを動かしてない。
ボニントン:むしろフェルスタッペンが、コントロール不能で突っ込んできた感じだったね。

 最終的にこの事故は、両者お咎めなしとなった。しかしランビアーゼがフェルスタッペンを「子供じみてる」と諫めたことには、かなり驚かされた。

65周目
ジョゼフ:あと5周だ。チャンピオンシップを勝つには、きみだけでは不可能だ。チームと一緒に勝つのだし、オスカーのサポートも必要だ。

67周目
ジョゼフ:ここでセーフティカーが出たら、相当まずいことになるぞ。今すぐ、やってくれ。今すぐだ。

 68周目のターン1で、ようやくノリスは首位を譲った。

68周目
ノリス:もう何も言わなくていい。

チェッカー後
スタラード:よくやった、オスカー。チェッカーだ。
ピアストリ:ありがとう、みんな。(順位の)調整にも、感謝するよ。F1初優勝か……。ありがとう、みんな。

 控えめに言っても、喜び大爆発という口調ではなかった。ジョゼフはノリスを慰める。

ノリス:素晴らしいワン・ツーだね。ポイントをいっぱい稼いだ。チームには最高の結果だ。
ジョゼフ:今朝も言ったけど、僕たちはこれからどんどん勝てるから。

 RBも明暗が分かれた。予選でマシンを大破させたにもかかわらず、1ストップ作戦で9位入賞を果たした角田裕毅。対するダニエル・リカルドは、早めに1回目のピットを指示され、しかも渋滞の中にコース復帰させられ12位完走に終わった。

マッティア・スピニ:いい仕事だった。
角田:イエス、イエス!! みんな、よくやってくれた! XXXクルマの修理には、本当に感謝だよ。その努力に応えられて、最高だ。

リカルド:最初のピットインで僕が何を思ったか、わかってほしい。同じ思いを共有してほしい。
ピエール・アムラン:ああ。あとでレビューしよう。今はなんて言ったらいいのか……

レース後のインタビューでリカルドは、「せめてチェッカー直後に謝ってほしかった」と怒りを露わにしていた。

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