2022年9月1日の正式受注開始からおよそ1か月が経過した、新型クラウンクロスオーバー。受注台数は2万5000台に達したということで、順調なスタートとなっているようだ。
先日開催された公道試乗会では、2.5Lのハイブリッド「Gアドバンスレザーパッケージ(税込570万円)」について、じっくり味わうことができ、長所と短所それぞれについて知ることができた。
試乗を終え、ここであらためて新型クラウンクロスオーバーをライバルモデルと比較してみようと思う。
文:吉川賢一
写真:TOYOYA、ベストカーWEB編集部/撮影:池之平昌信
ガチライバルは、国産クロスオーバーSUVの上級グレードか
「ライバルと比較」とはいっても、新型クラウンクロスオーバーについては、まず「ガチライバル」を挙げることが難しい。これまで長年ライバル関係にあった日産「フーガ」は8月末で生産終了に、ホンダの「レジェンド」も2021年末に廃止となっている。残るは「スカイライン(税込456万円~)」と「アコード(465万円~)」だが、ボディサイズが1カテゴリほど小さい。全長が近いのはレクサス「ES300h(602万円~)」だが、FFの正統派セダンのため、新型クラウンとはまた違う。また、スバル「アウトバック(414万円~)」は、ボディサイズが近しいものの、ラフロード寄りのコンセプトかつ、高級車としてのイメージがやや薄い。
輸入車まで範囲を広げてみてみても、「これ」というモデルがなく、リフトアップしたクロスオーバーというスタイルに近しいのは、シトロエン「C5 X(484万円~)」だが、これも全車FFであり、4WDかつ後輪操舵の付いた新型クラウンクロスオーバーとは、標準装備の面で(知名度でも)ライバルになるとは思えない。そのほか考えられるモデルとなると、メルセデスC/Eクラス、BMW3/5シリーズ、アウディA4/A6、ボルボV90などのセダンタイプや、リフトアップ版となるメルセデスC220dオールテレイン、また、ボルボV90クロスカントリー、アウディA4オールロードクワトロなどのワゴンあたりだが、どれも価格は700万円オーバーと、新型クラウンクロスオーバーよりも上の価格帯だ。
以上を踏まえ、車両スペックや価格帯、知名度から、新型クラウンクロスオーバーのガチライバルを考えると、ハリアーハイブリッド(G:433万円、PHEV:620万円)やエクストレイルe-4ORCE(G:449万円~)、マツダCX-60ディーゼルハイブリッド(505万円~)といった、国産クロスオーバーSUVの上級グレードではないか、と考えられる。
外観が素晴らしい反面、内装に課題のある新型クラウンクロスオーバー
新型クラウンクロスオーバー最大の長所は、そのエクステリアデザインだ。大型SUV並みの21インチ大径タイヤの装着をはじめとして、高級感漂うツートンカラーや滑らかなボディサイドのデザイン、ブラックアウトされたリアエンド、傾斜したテールゲートなど、いまのトヨタの中で最も美しく、艶やかなデザインといえ、エクステリアデザインだけを見れば、一気に若返ったと感じる。エンジニアリング的には苦しむ造形ながら、最新技術でしっかりとカバーしている。
走りも秀逸だ。ハイブリッド車は22.4km/Lの低燃費をたたき出し、ふわりと柔らかい乗り味は、かつてのクラウンロイヤルを思い出すよう。それを、21インチを履いたグレードで実現しているのは素晴らしい。静粛性も高く、心地よさが感じられる。デザイン買いしても後悔することは全くないだろう。
しかし、試乗することができたGレザーパッケージでは、インテリアの質感が「クラウン」という車格には届いていないような気がした。ダッシュボードやインパネ、センターコンソールなど、デザインがオーソドックスで、樹脂素材の質感もイマイチ。ドアパネルには加飾がなく、豪華な演出をしてくれるイルミネーションもない。570万円にもなる高額車にしてはさみしい内装で、あれだけ艶やかで色気溢れるエクステリアとは、世界観が大きく異なってしまっている。「クラウン」だからと、レクサスの新型RX並のインテリアの質感を期待していると、肩透かしを食らってしまう。
プラスチックパネルをブラックアッシュウッドなどの高級木目素材へ入れ替え、縁取りにアルミ加飾でも入れれば、見た目はガラッと変わると思う。最上級グレードの「クラウンクロスオーバーRS」でも基本的には変わることはないと思われ、このインテリアの質感は、新型クラウンクロスオーバーの課題といえる。
申し分ない仕上がりであろうハリアーPHEV、だが高い!!
その新型クラウンクロスオーバーの身内でもあるトヨタ「ハリアー」は、2022年10月31日に、PHEVモデルが追加されることが発表されている。期待値は非常に高く、新型クラウンクロスオーバーのガチライバル筆頭だ。RAV4 PHVと同じく、システム最高出力は225kW(306ps)を発揮するプラグインハイブリッドユニットを搭載し、駆動方式は4WD(E-Four)を採用。EV走行可能距離は93kmと優秀で、RAV4PHVに乗った印象から予想するに、とんでもなく速いSUVに仕上がっているだろう。
グレード専用のフロントグリルなどを採用し、専用外板色のグレーメタリックも設定。ブラック塗装を施したパーツが施され、インテリアにもインパネからドアトリムまで、金属メッシュの質感をもつダークレッドパイピングオーナメントが採用されている。この内装の加飾パーツを、そっくりそのままクラウンクロスオーバーにつけたら、もう少しよくなるのに、と思ってしまう。
そんなハリアーPHEVの短所は、クラスを超えた価格の高さだ。本体価格は税込620万円、通常の2.5Lハイブリッドの「Z」(484万円)に対し、140万円もアップとなる。RAV4 PHVは、最上級グレードでも539万円(ブラックトーン)であったので、どう見てもハリアーPHEVは超高額。欧州メーカーのPHEVたちよりはまだ安いが、国産のDセグSUVの価格に見合うかというと、微妙だといえる。
9月26日にハリアーを一部改良するとともに、プラグインハイブリッドシステム搭載車を新設定した。ガソリン車/ハイブリッド車は10月4日、プラグインハイブリッド車は、10月31日に発売となる
直6と驚異の燃費が魅力のCX-60、ただ外装に特別感が欲しかった!!
発売となった直6ディーゼル+48Vマイルドハイブリッドにつづいて、直4ガソリンや直6ディーゼル、さらには直4ガソリンPHEVが登場する予定のマツダ「CX-60」。今のマツダができる最善が詰め込まれたモデルだ。
長所は、日本で神話的な人気の「縦置き直6エンジン」を搭載しているという事実と、驚異の燃費性能だ。3.3L直6ディーゼルのWLTCモード燃費は19.8km/L(XD 2WD)、直6ディーゼル+48Vマイルドハイブリッドは21.0km/Lにもなり、同社CX-5の2.2L直4ディーゼルが17.4km/Lであったことを考えれば、CX-60ディーゼルの効率は抜群にいい。
インテリアの質感も、上級グレードのプレミアムとなると抜群に高くなる。映えるのは、タンカラーとスウェード素材を用いた内装だ。2トーンのステアリングホイールや、ボリューム感のあるタンカラー本革シートなど、国産の中でもトップクラスに高い質感だといえる。
しかし、エクステリアデザインが、他のマツダ車と代わり映えしない。エンジン縦置きレイアウトのラージプラットフォームとなったことで、無理のないロングノーズとショートオーバーハングとなったCX-60だが、これまでの鼓動デザインを踏襲したフロント周りの造形は、見る人によっては他のマツダ車と同じに見えてしまうと思われ、特別感に欠ける。北米専売モデルである「CX-50」はワイルドで新しく見えるのに、CX-60のエクステリアは非常にもったいない。
走りも内装も質感高い新型エクストレイル、弱点は高速燃費
VCターボe-POWERと最新のCMF C/Dプラットフォーム、4輪駆動制御のe-4ORCEなど、日産がいま持てる技術をフル活用して、満を持しての日本市場登場となった、日産新型「エクストレイル」。最大の長所は「走りの質感の高さ」だ。
荒れた道でもe-4ORCEの力でグイグイ曲がり、ロードノイズや風切音はワンランク以上静かで、動性能にも上質感が与えられた、という印象を受ける。また、インテリアの質感も非常に高く、12.3インチの液晶メーターと、同じく12.3インチのナビゲーションモニター、そして、10.8インチの大型ヘッドアップディスプレイは、RAV4などと比べてサイズが大きく見やすい。センターコンソール周りやダッシュボード周りなども作りこみの良さを感じ、価格帯が上である新型クラウンクロスオーバーの上をいくレベルだ。
ただ、新型エクストレイルは燃費がそれほどよくもなく、WLTCモード燃費で18.4km/L(e-4ORCE)。このまま実現すれば決して悪い数字ではないのだが、e-POWER車は、エアコン使用や走行シーンによっては0.7~0.8掛けの13~14km/L程度となりがちだ。燃費を伸ばしやすい高速走行は、飛ばすほどに悪化する傾向が強い。そのため、トヨタのTHS-IIやディーゼルエンジンのように、カタログ燃費を超えるような高速燃費は難しい印象だ。市街地やワインディングを50~60km/Lで淡々と走るようなシーンであれば、e-POWERは大得意なのだが、高速走行での燃費の弱さは、e-POWER車である新型エクストレイルの弱点といえる。
いまわかっている情報では、CX-60や新型エクストレイルのほうが魅力的か
これら3台と新型クラウンクロスオーバーを比較すると、新型クラウンクロスオーバーは、エクステリアが斬新なのは魅力だが、試乗した「Gアドバンスレザーパッケージ」をみるかぎりは、それ以上の推しポイントが見つからないのが正直なところ。特にCX-60や新型エクストレイルは、新型クラウンクロスオーバーよりも価格帯は低いにもかかわらず、縦置き直6エンジンやVCターボ+e-POWERなど、個性が光るポイントを備え、走りの質感も十分に高く、インテリアの高級感も申し分ない。比較してしまえば、こちらに軍配が上がってしまうことになる。
ただ、新型クラウンに関しては、まだわかっていないことが多く、クロスオーバーも最上級グレードである「RS」も(前述したように、基本的にはGアドバンスレザーパッケージと変わらないと思われるが)見てみないことには、何とも言えないところもある。新型クラウンの全貌を早くみたいところだ。
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みんなのコメント
豊田章男の予定の1/10 でしかない。
予想外に売れてないんだろうね。
まああんなクルマじゃ見に行く気にもならんよ