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新型レヴォーグが貫く「不易と流行」。プロトタイプに試乗した清水和夫がSUBARUの挑戦を語る

掲載 更新 4
新型レヴォーグが貫く「不易と流行」。プロトタイプに試乗した清水和夫がSUBARUの挑戦を語る

SUBARU LEVORG

スバル レヴォーグ

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ステーションワゴン界の神話を受け継ぐ

SUBARU「レヴォーグ」が2代目へ進化する。2020年8月20日に先行予約の受付を開始、10月に予定している正式発表を前に、そのプロトタイプに自動車ジャーナリスト・清水和夫が試乗。ステアリングを握った実車の第一印象を早速清水に訊いた。

初代の発表は2013年。キャッチコピーは「25年目のフルモデルチェンジ」。つまりレヴォーグは、ステーションワゴン界の神話となったレガシィ ツーリングワゴンからのバトンを受けた後継者だった。

プラットフォームもエンジンも新設計

そして2019年の東京モーターショーで登場したのが、新型レヴォーグのプロトタイプ。SUBARUが2025年までを見据えて開発した最新の「スバル グローバル プラットフォーム(SGP)」をベースにする、と発表された。すなわち初代レガシィから数えてついに、30年ぶりに新プラットフォームを採用したことになる。

パワートレインは、従来のFB16型1.6リッター水平対向4気筒直噴ターボから、新開発のCB18型1.8リッター水平対向4気筒ターボへ。ダウンサイジングという単語が定着した昨今に、排気量をアップしている。清水は「実燃費を考えれば、むやみに排気量を下げるのは正しくない」と言う。つまりジャストサイジングの考え方だ。新型エンジンは前後長が現行に比べて約40mm短くなっている。

「フロントにぶらさげる重量物がコンパクトになれば、それだけヨー慣性モーメントは小さくなってハンドリングのキビキビ感が増すわけです」

自ら煮詰め、磨き上げてきたアイサイト

もっとも衆目を集めているのが、アイサイトの進化だろう。いまやADASといえば各メーカーが当たり前のように搭載しているが、その実、システムの多くがサプライヤー頼りということも少なくない。かたやSUBARUは独自の路線をひた走ってきた。

そのステレオカメラ開発の発端は1989年。エンジン技術部門が燃焼を可視化するために開発したものが、アイサイトの原点である。

視界性能を重視する思想の原点は

ステレオカメラが市販車に初めて搭載されたのは、1999年のADA(アクティブ ドライビング アシスト)。高額オプションゆえに販売面は伸び悩んだが、それでも諦めずにアップデートを続け、2012年のアイサイト2では「自動で止まる」と言い切り、人気を得た。

カメラという“目”を徹底的に研究し、安全を追い求める。その姿勢の原点を、清水は「SUBARUの前身、中島飛行機」に見る。「戦闘機メーカーのDNAをもつからこそ、事故を防ぐ技術には一切の妥協を許さない。だから彼らは視界性能を安全思想のもっとも大切な場所に据えているんです」

ミリ波レーダーをフロント側へ搭載

新型レヴォーグには従来の“バージョン3”からアップデートした、しいていうなら“バージョン4”のアイサイトが全車に搭載される。しかも、「希望すれば機能上位のアイサイトXをチョイスすることができる」と清水は説明する。

「これまでのアイサイトは車両前方に設置するのはカメラのみ、ミリ波レーダーはなかった。77GHzのミリ波レーダーというのは値段が高いんです。しかしカメラだけではどうしても死角ができてしまう。新型レヴォーグでは前方左右に77GHzのミリ波レーダーを2基搭載し、Aピラーの両翼がよく見えるようになった。丁字路で側方から接近する車両や、交差点で横断する歩行者も認識できるようになったのです」

精密・正確な位置データを駆使する“X”

では、アイサイトXとは何か。

「3Dの高精度地図データに加えて、準天頂衛星みちびきのGPSデータを活用した地図ユニットを搭載しているのが“X”。正確な地図に正確な位置情報が組み込まれている」ため、ウインカー操作ひとつで車線変更できるアクティブレーンチェンジや、カーブ前に速度を制御することなどが可能になった。

たとえば先行車追従の場合、ETCゲートを抜けて前方が開けた途端に猛加速、なんていうことがままある。ところが位置情報が入ったアイサイトXは“ETCゲート通過後”であることを理解しているので、適切なマナーで加速をするわけである。

SUBARUのハンズフリーの考え方

BMWが2019年夏に国内へ初導入して話題になった渋滞時ハンズオフ機能も、アイサイトXは備えている。「2車線以上の高速道路上であり、最高速度50km/hまで」というのが作動条件だ。清水は「そのODD(Operational Design Domain=運行設計領域)は個人的に正しいと思う」と語る。

「ハンズオフ中に渋滞が解消されて速度が条件を超えるようだと、車両側がアラームを出す。そのときにドライバーがもしも気絶をしていたら? そう考えると100km/hでのハンズオフは怖い。高速走行で手を離すのはやはり危険なんです」 なるほどBMWも上限を60km/hに設定している。「それに」と清水は続ける。

「BMWもスバルも、考え方の根っこに同じものがある。せっかく渋滞が終わったんだから、ステアリングを握った方が運転は楽しいでしょう、と。ドライバーズカーであるがゆえの判断なんですね」

プロドライバー並みの腕をもつレヴォーグ

そう、レガシィから受け継いだツーリングワゴンのキャクターはレヴォーグのコア・バリューだ。プロトタイプの印象を清水は「凜とした走り」と評する。

「NVH(音・振動・騒音)も少なくて、すこぶるフラットライド。サスペンションの極め方はいまの日本車メーカーの中で一番巧いかな。シャシー性能が優れているからACCの挙動もリニアでスムーズになる」

クルマに運転を委ねるACCのマナーの良し悪しは、サスペンションが肝になるという。その点、新型レヴォーグのそれは「このカテゴリーの中では、一番スムーズ。プロドライバー並みのスムーズさ」なのだという。

ドイツ御三家とSUBARUがワゴンにこだわる理由

「プラットフォームとパワートレインが一度に変わったんだから走りの進化度合いもすごく大きい。太陽系の惑星が100万年に1度一直線に並ぶみたいな大変革なんです」

しかし世はSUVが隆盛を極めている。それでもレヴォーグというステーションワゴンにSUBARUがこれだけ総力を投じるのはなぜか。

「アメリカではステーションワゴンは死語になりました。でも、スピードの高いヨーロッパではいまだに生き残っているんです。メルセデスやBMW、アウディといったプレミアムブランドは必ずステーションワゴンを持っている」と清水。グランドツーリングという概念はヨーロッパに根付いて久しい。

「レガシィにも“ツーリング”ワゴンという名前がずっと付いていました。長距離を安心して走れるという美点は、初代レガシィから受け継がれているんです」

不易の基礎と、流行による進化

新しいプラットフォーム。新しいエンジン。新しいADAS。様々な変革に挑む一方で、連綿と受け継ぐものもある。Mr.レガシィとも言われたSUBARUのエンジニア、故・桂田 勝氏のこだわった言葉、「不易と流行」を清水は追想する。

「パワートレインやプラットフォーム、アイサイトといった変えなければいけないものは変え、一方で継承してきた技術を磨き上げてアップデートした部分もある。走りのテイストなんかは、喩えるなら江戸時代から注ぎ足し注ぎ足しで使っている鰻のタレみたいなものかな(笑)」

2020年は豊作の年となるか

ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終わり、昭和天皇が崩御した1989年。きら星のごとく名車が続々と登場した。ユーノス ロードスター、ニッサン R32GT-R、ホンダ NSX、トヨタ セルシオ、そして初代レガシィ。いっとき、日本メーカーは自動車業界の頂点に輝く星をその目にしただろう。1989年は日本車のヴィンテージイヤー、そんな風に言う人もいる。

昭和から平成の変革期にレオーネからレガシィが生まれ、平成から令和になったいま、新しい時代を切り拓く新型レヴォーグが誕生する。清水は「思わず中島みゆきの『地上の星』を口ずさんでしまった」と言ってインタビューを締めくくった。

今回はプロトタイプをテストコースで試乗しての感想なので、果たして市販車がどの程度の完成度なのか未知数のところもある。新型レヴォーグは今年の新車の目玉になりそうだ。正式発表は10月15日に行われる。

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みんなのコメント

4件
  • >ドイツ御三家とSUBARUがワゴンにこだわる理由

    ボルボも
  • VM4、VMGが出た時も似たようなな描かれ方をした。大絶賛、唯一無二の、と。VM4で一般的にはパワーは十分であると。
    しかし今や、低速トルクが足りない・パワーは物足りないと言われている。
    新型はどうか? 177psでやはり十分だと各レポートは書かれている。本当か?
    デジャヴを見てるようだ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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