■ラリードライバーなどからの意見を反映した「進化型GRヤリス」登場
トヨタとTOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)は2024年3月21日、スポーツモデル「GRヤリス」の一部改良モデルを4月8日から発売すると発表しました。
2020年に登場したGRヤリスですが、今回登場する新型では、TGRのモータースポーツ参戦などの知見を反映して大きく進化したといいます。旧モデルと比較しながら、新型の改良点を紹介します。
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GRヤリスは、マスタードライバー“モリゾウ”ことトヨタ自動車 豊田 章男会長の「トヨタのスポーツカーを取り戻したい」という想いのもと、トヨタでは初の取り組みとなる「モータースポーツ用の車両を市販化する」という逆転の発想で開発されたモデルです。
WRC(世界ラリー選手権)参戦を通じて学んだ競争力あるクルマづくりや、プロドライバーによる評価などを通じ、世界のあらゆる道でも思い通りに操れ「誰もが安心して意のままに運転できる」クルマとして誕生しました。
車名が表す通り、コンパクトカー「ヤリス」のデザインやパッケージを基本としていますが、中身は全くの別物となっています。
新開発された1.6リッター直列3気筒インタークーラーターボ「G16E-GTS」型エンジンに6速MT、多板クラッチによる前後駆動力可変システムを採用した新開発スポーツ4WDシステム「GR-FOUR」を組み合わせ、「空力、軽量、高剛性」を追求した車両パッケージとしました。
ボディサイズは全長3995mm×全幅1805mm×全高1455mm、ホイールベース2560mmで、形状は3ドアハッチバックです。
5ドアハッチバックのヤリス(日本仕様)が全長3950mm×全幅1695mm×全高1495mm、ホイールベース2550mmなので、よりワイド&ローなフォルムが数値からもわかります。
グレードは、「RZ」と競技車両ベースの「RC」に加え、前後のディファレンシャルにトルセンLSDを備え、BBS製鍛造アルミホイールとミシュラン製「Pilot Sport 4Sタイヤ」を組み合わせより限界性能を高めた「RZ“High performance”」を設定。
さらに気軽に走りを楽しめる仕様として、1.5リッター自然吸気・FF・CVTの「RS」グレードも用意されました(※ただし今回の商品改良でラインナップ廃止)。
今回登場した新型GRヤリスの改良点についてTGRは、「ドライバーファーストのクルマづくり」を実施したと説明します。
TGRが様々なモータースポーツへの参戦を継続するなか、極限の環境で「壊しては直す」を繰り返し、プロドライバーや評価ドライバー、モリゾウ氏からのフィードバックを反映したといいます。
数々の実戦において車両を限界まで追い込んでくれたドライバーへ「壊してくれてありがとう」を合言葉に、失敗しながらチャレンジし、パワーユニットはもちろん、ボディや内外装などにも意見を反映し、車両性能を総合的に向上させました。
なおプレスリリースなどでは「新型」「マイナーチェンジ」「一部改良」といった表現は使われず「進化型GRヤリス」と表記されています。
この新型GRヤリスでは、「幅広いドライバーがスポーツ走行を楽しめ、レースでMTと同等に戦えるAT」を目指し開発した8速ATの「GAZOO Racing DirectAutomatic Transmission(以下、GR-DAT) 」を追加設定した点が大きなニュースです。
多段化・クロスレシオ化とともに、スポーツ走行用に最適化したAT制御ソフトウェアを搭載し「ドライバーの意思を汲み取るギア選択」を可能にしました。
加えて、コックピットを「高い運動性能を実現するための重要な要素」として捉え、プロドライバーとともに「ドライバーファーストなコックピット」を追求し、インパネまわりのデザインを一新しました。
ドライビングポジションを見直すとともに、スーパー耐久シリーズ参戦車および全日本ラリー参戦車をモチーフに、操作パネル・ディスプレイをドライバー側へ15度傾けて設置したほか、ハーネスで体をシートに固定した状態でも使いやすいスイッチ配置とするなど、視認性と操作性を進化させています。
また、モータースポーツ参戦を考慮した「縦引きパーキングブレーキ」をRCグレードに新設定しました。
■エンジン性能も大幅に向上! 内外装もモータースポーツの知見を反映!
ボディサイズに変更はありませんが、外観デザインについて、例えばフロントグリル下部のバンパー開口部形状などが変更されるなど細部の違いも見られ、こういった点も進化を遂げています。
ロアグリルには、薄型・軽量化と強度を両立するスチールメッシュを、バンパーロアサイドには分割構造を新たに採用しました。
TGRによると、モータースポーツ参戦時に石などの飛来物による損傷があった際の復元・交換作業を容易にし、修復費用低減にも繋げるものだといいます。
このほか開口部に関しては空気抵抗の低減や冷却性、排熱性向上など、こちらもモータースポーツからのノウハウが反映されています。
リアまわりでは、一文字に繋がる一体感のあるテールランプにデザインを変更。
上下リアランプ類を集約し、ハイマウントストップランプとリアスポイラー本体を分けることで、スポイラーのカスタマイズ性を拡張しました。
こちらも、モータースポーツ参戦中の損傷回避と視認性を考慮したものだといいます。
内装では、インパネまわりの刷新に加え、従来のアナログメーターパネルに代わり、12.3インチフルカラーTFTメーターを新採用しました。
スポーツ走行に必要な視認性と車両情報に注力し、プロドライバーの意見を取り入れながら開発されたものです。
性能面では、モータースポーツでの戦闘力向上を目指し、G16E-GTS型エンジンの性能が、2020年当初の最高出力272ps(200kW)に対し304ps(224kW)に、最大トルク370Nm(37.7kgf-m)から400Nm(40.8kgf-m)へと、それぞれ大幅進化しています。
高出力化に対応し、冷却性能を高める「クーリングパッケージ」も新設定されました。
さらに、従来の4WDモードセレクトに加え、スポーツ、ノーマル、エコと選べる「ドライブモードセレクト」を標準装備。
GPSによる位置判定を行い、サーキットなどの利用可能エリアに入るとアンチラグ制御、スピードリミッター上限速度の引き上げなど、新型GRヤリスのポテンシャルを引き出す「サーキットモード」も設定されます。
シャシとボディも進化しました。
スポット溶接打点は約13%増加し、構造用接着剤も塗布部位を約24%拡大させ、ボディ剛性を向上。
また、ボディとショックアブソーバーを締結するボルトと1本から3本に変更し、ステアリングの応答性を高め、これらの効果により操縦安定性と乗り心地を向上させています。
※ ※ ※
進化型の新型GRヤリスの販売価格(消費税込み)は、「RZ」(6MT/GR-DAT)448万円/483万円、「RZ“High-performance”」が498万円/533万円などとなっています。
なお前述の通り、従来設定されていた1.5リッターFF・CVTモデルのRSグレードは、GR-DATモデル追加にともない、ラインナップから廃止されました。
また今回の改良にあわせ、新型GRヤリスをベースに、TGR World Rally Team所属選手が監修した特別仕様車「GRヤリス RZ“High performance・Sebastien Ogier Edition(オジエ エディション)」と「GRヤリス RZ“High performance・Kalle Rovanpera Edition(ロバンペラ エディション)」の抽選申込受付をそれぞれ100台の台数限定で開始しました。
受付は全国のGR Garage店頭でおこなわれ、オジエ エディション、ロバンペラ エディションともに販売価格は845万円です。
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