ぎりぎりまでチューンされた4.0ℓ自然呼気を搭載した最新GT3 RSはある意味で究極の991II型かもしれない。随所にカーボンパーツが奢られたエクステリアの挑発に応えてわれわれは鈴鹿サーキットで限界性能を試した。REPORT◉田中哲也(Tetsuya Tanaka) PHOTO◉森山俊一(Toshikazu Moriyama)※本記事は『GENROQ』2019年5月号の記事を再編集・再構成したものです。
日本に到着したばかりのGT3 RSを鈴鹿サーキットで走るチャンスが巡ってきた。ニュルブルクリンク北コースを6分台で走るマシンだ。かつて日産GT-R NISMOをニュルでテストしていた私は、あそこで7分を切ることの凄さをよく理解している。はたして、どのようなポテンシャルなのか興味深く観察しながらテストを行った。
「ハレ」と「ケ」両方持ち合わせるロールス・ロイス・カリナンは最高に豪華なSUV
試乗車はヴァイザッハ・パッケージ装着車である。約18kgの軽量化が図られるオプションだ。これだけで320万円以上となり、PCCB(カーボン・セラミック・ブレーキ)の約170万円と合わせると500万円近いオプションとなる。外観はすでに写真で見ていたが、ワイドでグラマラスなボディに装着された様々なカーボンパーツがGT3 RSの存在感を一層際立たせている。フロントフェンダーや大型のリヤディフューザーなど、見た目からして速そうだが、細部を観察すると空力がよく考えられている印象だ。
1周の完熟走行でタイヤを見極め全開のアタックを開始!
軽めのドアを開けて、バケットシートに座る。ホールド感がよく、クラブスポーツパッケージで無償オプションとなる6点式のシートベルトが装着されていることもあって、ドライビングポジションをしっかり合わせることで走りに集中できそうだ。ルームミラーには後席ではなく、チタン製のロールケージが見える。まるでレーシングカーのような景色だ。ちなみに、このロールケージもヴァイザッハ・パッケージに含まれる軽量ロールケージである。
試乗は専有ではなく通常のスポーツ走行枠で行った。この日はバックストレート途中にある西コースのピットからコースインして、フルコースを走るという変則的な走行枠だったが、これまでの経験上、この方が先頭でコースインしさえすれば、バックストレートまでクリアラップをとれるので好都合だ。ただし、今回はまったくの初見のクルマとタイヤなので、130Rとシケインだけで、クルマの限界を見抜き、1コーナーに飛び込まなくてはならない。1周の完熟走行を終えて、アタックを開始した。
想像を超えるグリップ
9000rpmまで回るエンジンは先代と較べて、明らかにパワフルで低回転域のピックアップと、高回転域のパワーと伸びは最高に気持ちいい。スロットルも敏感だが、却ってコントロールをシビアに行える。そしてなんといっても高回転域の透き通ったサウンドで、甲高い自然吸気の迫力を体感できる。最高出力はGT3の20㎰アップだというが、ストレートで全開にするとそれ以上に差を感じる。
前述のようにアタックを開始する前のシケインで、マシンの限界を試してからアタックする。想像よりマシンが前後ともに滑ることがなく、限界が非常に高いと感じた。GT3と較べて、マシン全体から伝わるグリップの高さと安定感がいい。しかもGT3よりワイドで安定しているのに操縦性はシャープだ。さあ、シケインを立ち上がり、全開アタックを開始しよう。
シケイン出口から最終コーナーは全開でいけた。ここでアンダーが出てしまうクルマも多い。1コーナーまでは下りで鋭い加速が楽しめる。1コーナー手前では5速で260km/h近くに達した。ここが鈴鹿の最高速だ。1コーナーのターンインではダウンフォースが発生し、GTカーのようなイメージで空力を使った走りができた。そのまま2コーナーも鋭くターンイン。3速でクリアするがフロントの反応はとてもクイックだ。S字までそのまま3速で引っ張り、S字から逆バンクまでは3速でリズミカルにクリアする。まるでレーシングカーのようなロールの少なさと切り返しで、バランスとグリップレベルが文句なしに素晴らしい。
ダンロップコーナーからデグナーまでの高速コーナーは4速だ。スピードが乗るとダウンフォースが発生し、安定性が増す。デグナーカーブひとつ目を3速でクリア。イン側の縁石に少しタッチしても跳ねが少なく、ダンパーがきちんと仕事をしている。2つ目は2速でクリア。出口のトラクションも素晴らしい。ヘアピンへのハードブレーキングでもリヤが安定している。ブレーキング後半で少しABSが介入してしまったがその精度は高い。ヘアピンではよく曲がるが、立ち上がりのトラクションも素晴らしい。トラクションコントロールが不要なレベルだ。
スプーンカーブまでの高速コーナーはリヤの安定性が素晴らしいものの、コーナー手前まで5速全開で行くとスピードが高すぎる。少しアクセルを戻して進入に備えたほうがいい。スプーンカーブひとつ目の出口はアウト側のエスケープが広いので、少し限界を超えるようなアクセルワークを行ってみた。多少リヤがスライドしたものの、挙動は素直でリニアだ。やはり安定性が高い。
そしてバックストレートを5速全開で駆け抜け、130R手前でわずかにブレーキを踏み、左のパドルを引いて4速にシフトダウン。130Rに進入する。ダウンフォースが高く、安定していているので思い切り攻められた。シケインは鈴鹿で唯一のフルブレーキングポイントだが、リヤのめくれ上がり(グリップ喪失感)が少ない。このGT3 RSは特に高速からブレーキングを開始した時に、リヤのダウンフォースのおかげで安定感があり、思い切りブレーキを踏めた。
もはやレーシングカーである
これが鈴鹿サーキットでの1ラップだ。レーシングドライバーの私がサーキットを走らせても、レーシングカーとロードゴーイングカーの中間と感じられるくらい違和感なく走れた。すべての操作に対する反応がクイックだ。軽量化されたボディ、ダウンフォースが効くエアロパーツ、グリップレベルの高いタイヤの賜物だ。911はもともとそうだが、GT3 RSはさらに高いレベルでサーキットを楽しめるレベルのロードカーに仕上がっていた。
だが、気になる部分もいくつかあった。たとえば2コーナーはトラクションがかかりにくく、アクセルを踏めない周回もあった。だが、このGT3 RSは足まわりの調整が変更が可能な箇所もあるので、そのセッティング効果を楽しみつつ、タイムアップを狙ってもいいかもしれない。
ちなみに今回の試乗車が装着していたタイヤは、ニュルでアタックしたミシュランではなくダンロップが装着されていた。特に序盤のグリップの高さが印象的で高いグリップレベルでありながらマイルドな特性だった。雨の一般道も走ったがウエットグリップはミシュラン・パイロットスポーツカップ2レベルしかないので注意が必要だ。
参考までにタイムは2分16秒台だった。最初からマシンに慣れていて、初めからタイヤの美味しいところを使えれば、15秒台は楽に見える感じだ。このダンロップタイヤと、ニュルブルクリンクでアタックしたタイヤとでは、ニュルのラップタイムにして約5秒違うそうなので、ニュルをアタックしたセットなら2分15秒を切ることも容易だろう。
SPECIFICATIONS ポルシェ911GT3 RS
■ボディサイズ:全長4557×全幅1880×全高1297mm ホイールベース:2453mm
■車両重量:1430kg
■エンジン:水平対向6気筒DOHC 総排気量:3996cc 最高出力:383kW(520㎰)/8250rpm最大トルク:470Nm(47.9kgm)/6000rpm
■トランスミッション:7速DCT
■駆動方式:RWD
■サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡマルチリンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ265/35ZR20(9.5J) Ⓡ325/30ZR20(12.5J)
■パフォーマンス 最高速度:312km/h 0→100km/h加速:3.2秒
■環境性能(EU複合モード) 燃料消費率:12.8ℓ/100km CO2排出量:291g/km
■車両本体価格:2692万円
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