国産車が世界に先駆けて実現したテクノロジー
走る・止まる・曲がると称される基本機能においてのみならず、利便性や安全性という面からも最新モデルの進化には目を見張るものがある。そのメカニズムは日々進化している。そうして当たり前になっている装備のなかには、国産車が世界に先駆けて実現したテクノロジーも少なくない。ここでは、20世紀に生まれ世界のトレンドに影響を与えた5つの技術をピックアップ、時代を遡りながら紹介してみよう。
一度経験すると付いていないクルマに乗れなくなるほど便利な装備11選
1)1997年 2モーター式スプリット型ハイブリッド(トヨタ・プリウス)
クルマの電動化については、もはや議論をしている段階ではなく、どのように進めるかというフェイズになっている。その選択肢としてはBEV(100%電気自動車)、プラグインハイブリッド(PHV)、ストロングハイブリッド、マイルドハイブリッドとわけられるが、当面の主力はEV走行のできるストロングハイブリッドとPHVになるという意見も根強い。
そのストロングハイブリッドは発電用と駆動用の2モーター式というのがスタンダードな形だが、そのスタイルはトヨタが初代プリウスを生み出したときから大きく変わってはいない。さらにトヨタは動力分割機構を備えることで、エンジンとモーター出力の組み合わせる幅を広くしているのも特徴。すでに、このメカニズムについてトヨタが他メーカーに外販することも発表されている。それにしても、20年以上前に、あまりにも完成度の高い量産ハイブリッドシステムが生み出されたことは驚きだ。
2)1995年 コモンレール式ディーゼルエンジン(日野ライジングレンジャー)
優れた熱効率から欧州を中心に環境エンジンとして評価されてきたクリーンディーゼル。排ガス処理における問題から、もはやオワコンといったイメージもあるが、だからといって高効率エンジンという本質が損なわれたわけではない。そうした最新ディーゼルエンジンにおいて欠かせないのが、燃料を超高圧にして噴射する「コモンレール」を採用することだ。
そして、このメカニズムを最初に市販車に投入したのは欧州メーカーではなく、じつは日野自動車であり、コモンレール系の開発を担当したのは日本が世界に誇るサプライヤー「デンソー」である。その搭載は1995年、当時の噴射圧力は最大135MPaであった。
軽量化技術やカーナビなどを実現したモデルも!
3)1990年 軽量化の新世界を開いたアルミモノコックボディ(ホンダNSX)
ホンダのスーパースポーツ初代NSXはエブリディスーパーカーとして、日常的に使っても困ることのないスポーツカーという新しい価値を提供した。その価値観に他社も追随したことでスーパースポーツが日常的に使えるようになったという点でエポックメイキングだが、テクノロジー面ではオールアルミモノコックボディの採用もインパクト大だった。
その後、オールアルミボディはスーパースポーツでは当たり前のテクノロジーとなっていくが、モノコックよりもスペースフレーム構造のほうがアルミという素材が持つ特性を活かせると考えたメーカーもある。現在ではアルミ、ハイテン、カーボンなどを適材適所で組み合わせたマルチマテリアルボディが多くなっているが、NSXのオールアルミモノコックボディは、そうした技術のルーツ的存在といえるだろう。
4)1985年 アクティブ四輪操舵「HICAS」(日産スカイライン)
日産スカイラインといえば、最先端の技術を投入されるテクノロジーショーケースというキャラクターも持っているが、7代目スカイラインに採用された「HICAS」は、世界初のアクティブ四輪操舵(4WS)といえるものだった。4WS技術はいったん途絶えたようにも思えたが、現在ではポルシェやルノー、ホンダなどがスポーツカーやハイパフォーマンスモデルに採用するなど復活を遂げている。
ただし、日産の初代HICASはセミトレーリングアームを支えるクロスメンバーそのものを油圧アクチュエーターで動かしてしまうというもので、作動するのは同位相方向のみ。高速コーナリングでの安定性を高めるのが目的だった。その後、8代目スカイラインなどに採用された「スーパーHICAS」は逆位相にも後輪をステアできるシステムへと進化した。
5)1981年 エレクトロ・ジャイロケータ(ホンダ・アコード/ビガー)
軽自動車まで当たり前の装備として普及したカーナビゲーションシステム。そのルーツといえるのがホンダの「エレクトロ・ジャイロケータ」だ。現在のGPSとデジタル地図を使っているシステムに比べると、地図はシートタイプを手動で差し替えるタイプ(もちろん縮尺変更などできない)であるし、自車位置についてもジャイロセンサーと距離(速度)センサーを利用したものなので精度は比べ物にならないが、地図型ナビゲーションシステムを世界で初めて車載したことで、こうしたカテゴリーへの投資を促したという点では歴史に残る技術といえる。
現在のナビゲーションシステムでもGPS信号のとれない状況においては進行方向と速度という2つの情報から位置を補正しているが、そうして面では技術的にもつながっているのが「エレクトロ・ジャイロケータ」だ。
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