F1ドライバーにとって、レースを戦う上でマシンは重要な相棒だが、走行中にドライバーとコミュニケーションをとるレースエンジニアも非常に重要な存在だ。今季F1にデビューした角田裕毅(アルファタウリ)の相棒を務めるのは、マッティア・スピニだ。
チーム代表のフランツ・トストは、角田の才能について絶賛しており、将来確実にチャンピオンを獲得できるはずだとまで語っている。これについて、スピニはどう思っているのだろうか。
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「才能のある若手の、F1参戦1年目に組むのは素晴らしいチャレンジだ。彼の才能は誰の目にも明らかだ。彼のラップタイムは速いし、バーレーンでは見事なオーバーテイクを見せた」
そうスピニはmotorsport.comの独占インタビューで語った。
「もちろん彼は若く、F1で何年も活躍している他のドライバーのような経験はない。だからこそ、彼がF1で活躍するために必要なあらゆることを学ばせ、旅をさせてあげることが我々の仕事なんだ。なぜなら、F1では才能だけあれば十分というわけではないからだ。すべてのドライバーが才能を持っているからね」
「彼は間違いなく、そうした才能があるドライバーのひとりであり、私も彼が素晴らしいパフォーマンスを持っていることを期待している」
「フランツはドライバーに関して豊富な経験を持っている。そのフランツがそう言ったということは、ユウキに何かを感じているということだ。そしてエンジニアグループも同じように考えていると思う。彼のキャリアはまだ始まったばかりだが、我々は彼が望む目標を達成できるようにするため、彼を助ける必要があるんだ」
ドライバーを助けるという意味で、レースエンジニアが担う責任は大きい。そのプレッシャーは感じているかと訊くと、彼は次のように答えた。
「もちろん、自分の役割は重要だ。独りよがりにはなりたくないが、ドライバーとレースエンジニアの関係は重要なんだ。コース上でもコース外でも、ドライバーに最も接触するからね。私は、彼を導く必要があると感じている。我々の最高のツールを与え、我々の最高の経験を伝えて、彼が直面しているこの急な学習曲線を助けなければならない」
「実際のところ、プレッシャーは感じていない。なぜなら、彼は素晴らしいチャレンジャーだと思うからだ。これまでにも新人ドライバーと仕事をしたことがあるが、ピエール・ガスリーもそのひとりだ。ただ、ユウキのケースとは違いがあると思う」
「第1に、彼は非常に若い。そして第2に彼は非常に速いペースでキャリアを積んできた。F3を1年、F2を1年戦ってすぐにF1に来たんだ。だから他のフォーミュラで直面する可能性のあるさまざまなシナリオを経験する時間がなかった。彼は今もコース上で何が起こるのかを探り、経験し、知るためのプロセスを続けている。もちろん、私もエンジニアリングチームの他のメンバーと一緒に、彼を助け、できる限りのサポートをしている」
こうした違いは、昨年ダニール・クビアトを担当していたスピニにとっても大きいという。
「昨年は、様々なチームで多くの経験を積んできたダニール・クビアトを担当していたので、私にとっても当然大きな変化だ。経験豊富なドライバーにとっては当たり前のようになっていることもある。何度も経験し、身についているんだ。もちろん、コースごとに変わっていることもあるので、それを確認しながら話をする必要はある。でも経験豊富なドライバーにとっては当たり前のことでも、ユウキのように若いドライバーの場合は当たり前ではないこともある。そのため、まずは基本的なことから始めて、そこからレースウイークエンドを成功させるために必要な細かい詰めを行なっている」
バーレーンGPやイモラで行なわれたエミリア・ロマーニャGPのフリー走行では、コース上のトラフィックについて角田が声を荒げる場面もあった。角田自身、すぐにカッとなってしまう点が自分の良くないところだと開幕前に語っていた。
レースエンジニアは、そうした場面でドライバーの不満を直接受け止める立場になるわけだが、それについてスピニはどう考えているのだろうか?
「彼の性格的にも、無線でイライラしてしまうのは自然なことだと思う。でも当然、それは彼の集中力を削いでしまうし、エンジニアたちの集中も途切れてしまう。だから我々がメッセージのそういった部分を無視して、重要な部分や関連する部分だけを聞き取り、次のステップを考えながらやり過ごそうとしている」
「でも彼がマシンを降りた後に『ここで君はかなり動揺していた。トラフィックがあったからだ。次にトラフィックに遭った時は、これとこれとこれをやろう』と、話し合いをする。レースで起こりうる様々な状況に対処できるよう、彼と一緒に取り組んでいるんだ」
ドライバーの叫び声や悪態について、フラストレーションを感じることはないのかを訊かれ、スピニは「ドライバーから発せられる言葉を、重要なものとそうでないものとに分けることには慣れているよ」と語った。
「正直なところ、クルマが走っている間は必要な情報を得ることに集中しているから、それ以外のことには全てフィルターがかかってしまうんだ。物事が上手くいっていない時、ドライバーはフラストレーションを感じるものなんだ。そして彼らを正しい道へ、正しい精神状態へ導くことが自分の仕事の一部なんだ。だから全く普通のことなんだよ」
クルマに乗っていない時は、冷静な好青年といったイメージを与える角田だが、これまでの2レースでは、無線で別人のように強い口調で不満を訴えるシーンも見られた。スピニは、その背景には結果を出そうとする角田の情熱があると、理解を示した。
「彼が昨年のアブダビテストに参加した時、我々もそうした印象を受けた。彼はとてもいい青年で、ジョークを言ったりしていた。実際、クルマを降りている時はとても冷静で遊び心があるんだ。そしてヘルメットをかぶり、クルマに乗っている時は激しい”サンダーストーム”のようになる。初めての時は驚くよね」
「しかし彼のことが分かってくると、何が起きているのか理解できるようになる。彼は結果を出すことに熱心で、物事を適切に処理し、毎回素晴らしいセッションを行ない、素晴らしい走りをしたいと思っているんだ。だから、無線でのやりとりは、彼が心の中で感じていることや、良い結果を出したいという気持ちの表れなんだ。それを邪魔するものがあれば、彼はフラストレーションを感じ、そのフラストレーションが無線に表れているんだ」
ドライバーを支えるレースエンジニアという重要な存在が、角田の”爆発的な情熱”に理解を示しているのは非常に心強いことだろう。第2戦エミリア・ロマーニャGPではルーキーらしいミスでノーポイントに終わった角田。第3戦ポルトガルGPの舞台アルガルヴェ・サーキットは初めて走るサーキットだが、前回のミスを教訓に、結果を出すことができるのか注目だ。
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