Volkswagen T-Cross
フォルクスワーゲン Tクロス
トレンドのコンパクトSUV「T-Cross」初試乗。ポロ以上ゴルフ未満のクロスオーバーSUV
ブランド最小のコンパクトSUV
小さいことは、よいことだ。
ようやく日本上陸を果たしたフォルクスワーゲンのコンパクトSUV「TーCross(Tクロス)」。これに乗り込んでまず感じたことは、サイズ感の良さだった。
T-Crossはクラス的に言うとBセグメント。SUV的な表現をすれば「コンパクト」の部類に属する一台で、フォルクスワーゲンの中でも現状一番小さいSUVとなる。
ちなみに現在同社は最も大きなサイズの「トゥアレグ」を筆頭に、ミッドサイズの「ティグアン」、スモールサイズの「TーRock」、そして今回のT-Crossを展開している。
ゴルフより伸ばした全長が居住性能を担保
スリーサイズは全長4115×全幅1760×1580mm。同社のBセグコンパクトハッチ、ポロより55mm長い全長はゴルフより150mm短い。ポロより大型化されたボディ長は、そのほとんどがホイールベースの延長(2550mmで、ポロより50mm長い)に費やされているため、見た目以上にT-Crossは室内空間の居心地がよい。
高いアイポイントと相まって前席は思った以上に広がり感がある。またリヤの居住空間は身長170cm強の筆者にとっても快適だった。ひざ周りは14cmのシートスライドにより十分な空間を確保しており、これを一番前にしてもシートのくぼみで上手にスペースを残す。頭上も余裕を残した上で、シート高を稼いで前方視界を確保してくれている。シートは若干のリクライニングが可能であり、硬めのクッションで座り心地もしっかりしている。
トランク容量は通常385リットルのスペースが、前述したスライドで455リットルにまで拡大できる。さらに背もたれを倒すと、セグメント最大の1281リットルという広さが手に入る。
クロスオーバーSUVらしい若さを演出したデザイン
今回試乗したグレードは「T-Cross TSI 1st Plus」。その導入を記念して「デザインパッケージング」を標準装備しているのがまず特徴で、外観ではドアミラーとアルミホイール、インテリアではダッシュパッドとシートに3つのカラーコンビネーションを選ぶことができる。
ちなみに試乗車のボディカラーは、マウイ島のビーチをイメージした「マケナターコイズメタリック」。ここにブラックのミラーとシルバーのホイール、グレーのインテリアがマッチングされていた。この他にオレンジまたはグリーンの組み合せでクロスオーバーSUVらしい若さを演出しているが、車体デザインがエッジーなだけにポップな配色は微妙。とくにホイールをオレンジやグリーンに塗るのはドイツ人らしいセンスだと思った。ここらへんはシトロエン C3 エアクロスの方がファッショナブルに振り切れている。
また、T-Cross TSI 1st Plusと「T-Cross TSI 1st」にはタッチパネル式8インチモニターからナビを始めとした各種機能にアクセスする純正インフォテインメントシステム・Discover Proを標準装備。スマートフォンのワイヤレスチャージング機能や前後席合わせて4つのUSBポートを備えている。
小さくても回すほどに盛り上がる子熊のような1.0 TSI
その走りは若く、そして愛らしい。
エンジンは1.0リッターの排気量から最高出力116ps/最大トルク200Nmの出力を発揮する直列3気筒直噴ターボ。1270kgのボディに対して200Nmの最大トルクは数字だけ見ていると貧弱に思えるが、7速DSGがこれを巧みにアシストしてくれる。多段化ギヤの細かいステップが低速域から重たいボディをギクシャク感なく加速させ、速度が乗ると低抵抗な駆動系をもってスムーズに滑走させてくれる。やはりフォルクスワーゲンのDSGはデュアルクラッチの中でも一番制御がいい。
アクセルを全開にしても加速力に驚きはない。しかし小排気量ターボの高ブーストな蹴り出しと、乾式クラッチのダイレクト感、そして回すほどにドゴドゴ不等間隔な爆発でパワーを盛り上げてくる3気筒エンジンがリンクして運転が楽しくなってくる。T-Crossはまるで小熊のように“グーン!”とうなり声を上げるのだが、これを不快と感じるどころか「がんばってるな!」と思えるのは、エンジンが小さくも優秀だからだろう。
BMW製直列3気筒ターボのスムーズさに比べるとかなり賑やかだが、500cc少ない排気量を考えると感心しきりである。ちなみに燃料はハイオクで、WLTC総合モード燃費は16.9km/Lとなっている。ヨーロッパには1.5TSIや1.6TDIのラインナップもあるようだが、日本では兄貴分にT-Rockも導入予定のためエンジンは1.0TSIのみとなるようだ。
FWDのみと割り切ったラインナップにも理由あり
ハンドリングは今どきのスッキリとした味わい。限られたパワーをこぼさず使い切るためロールが適度に抑えられており、コーナリング中もボトムスピードを落とさず走ることができる。
それでいて足まわりは硬さを感じさせず、多少のコツコツ感はあれ乗り心地も上手に保たれている。同じMQBプラットフォームながらもポロよりダンピングが効いており、フロアで入力が共振するような安っぽい周波数がかなり封じ込まれていた。それもこれも、T-CrossがコンパクトSUVとしてサスペンションストロークを多めに取れるから得られたアドバンテージだろう。今回は限定車ということもあり18インチを履いていたが、スタンダード仕様は16インチだから乗り味はもっとしっとりするかもしれない。
ちなみにT-Crossの設定はFWDのみで4WDはラインナップされない。クロスオーバーの名前の通り、もともとフォルクスワーゲンは純粋なSUVを作りたかったわけではなく、ポロのバリエーション展開でヨーロッパのコンパクトカーセグメントに切り込みたかったのだという。そしてこの分野では、ルノーやプジョーといったフランス勢が強い。まだぎこちない感はあるけれど、だからこそのポップ路線なのだろう。
シティユースで輝くコンパクトSUV
そして用途的には、トゥーランの下に位置するミニバン、いやチビバンのイメージらしい。日本で言えばトヨタ・シエンタやホンダ・フリードといったところか? 小さなトゥーランを作れば日本ならば人気が出そうな気もするが、プジョーが2008でミニバン路線からSUVへと転じたように欧州ではこっちがトレンド。となるとマツダ CX-3が直接のライバルだろう。
街中を普通に走ってもその滑走感が快適で、いざ踏み込めば3気筒エンジン丸出しの快活さが適度なスポーティさを楽しませてくれる。今回は長距離移動や高速試乗はできなかったが、シティユースとしてはかなり楽しいコンパクトSUVに仕上がっていると思えた。総じてフォルクスワーゲンは、T-Crossでポロとゴルフの間を見事に埋めたと言えるだろう。
REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
【SPECIFICATIONS】
フォルクスワーゲン T-Cross TSI 1st Plus
ボディサイズ:全長4115 全幅1760 全高1580mm
ホイールベース:2550mm
車両重量:1270kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:999cc
ボア×ストローク:82.5×92.8mm
最高出力:85kW(116ps)/5000-5500rpm
最大トルク:200Nm/2000-3500rpm
圧縮比:10.5
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後トレーリングアーム
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後215/45R18
燃料消費率(WLTC):16.9km/L
車両価格(消費税10%込):335万9000円
【問い合わせ】
フォルクワーゲン カスタマーセンター
TEL 0120-993-199
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