軽自動車を除くと、ホンダのラインアップで最も売れているのが「フリード」だ。シリーズ累計で、国内累計販売台数100万台を突破している(2021年6月時点)。
現行モデルは2016年9月に登場した2代目。2019年10月に一度目のマイナーチェンジを実施、内外装の変更とともに、全タイプにホンダセンシングを標準装備。さらには、クロスオーバーの「クロスター」も追加し、ファミリー層に向けて、高い商品力を維持している。
フリードがこれほど支持される理由はどこにあるのか。
文:吉川賢一
写真:HONDA
[gallink]
2021年ここまでの販売は、トヨタに勝っている
4265×1695×1710mm(全長×全幅×全高)mm、5ナンバーサイズの3列シートミニバンであるフリード。1.5リッター直4ガソリンエンジンとCVT、もしくは、1.5リッターエンジン&1モーター+7速DCTのハイブリッドの2パターンを用意。駆動方式は、ガソリン仕様、ハイブリッド仕様共に、2WDと4WDを用意している。
ホンダといえば、フィットやヴェゼルも人気モデル。フィットは2020年2月に、ヴェゼルは2021年4月に、それぞれフルモデルチェンジを受けているが、コロナ禍の影響もあり、両車の販売は急ブレーキ。
対照的に、フリードは堅実な売り上げが続いている状況だ。直近だと、2017年は10万4405台、2018年は8万4121台、2019年は8万5596台、2020年は7万6283台、2021年も5万9132台(1-10月)と、月平均6000台もの販売を維持している。
国内市場が停滞しているホンダだが、フリードが安定した登録台数を維持してくれることで、ホンダ関係者はほっと胸を撫でおろしていることだろう。なお、最大のライバル「シエンタ」の2021年の販売は、10月までに5万540台と、ここまではフリードの方が勝っている。
4265×1695×1710mm(全長×全幅×全高)mmと、5ナンバーサイズを継承している2代目フリード
ファミリー最優先に考えつつも、オシャレに楽しみたい
フリードが支持される理由、そのひとつは、「スタイリッシュなデザイン」だ。フリードは、「キッ」とつり上がったアイラインやフロントグリル形状、直線基調のサイドラインなど、かつてラインアップされていたストリームや、マイチェン後のオデッセイのような「クール&ワイルド」なデザインが取り入れられており、男性でも抵抗がないデザインとなっている。
また、2019年に追加された新グレード「フリードクロスター」は、さらにスタイリッシュ。ベースのフリードから、フロントグリルや前後のバンパー、アルミホイールのデザインを変え、また、ドアハンドルやサイドミラーをシルバーに変更し、クロスオーバー風のエクステリアに仕立てられている。
専用コンビシート(プライムスムース×ファブリック)や、専用の木目調インパネミドルエリアを採用するなど、商品力の高いグレードも登場しており、「スライドドアのコンパクトミニバン」というイメージに囚われない内容となっている。
一方のシエンタはというと、アウトドアを意識したファンベースなるグレードが用意されるなど、ファミリーの中でも「パパ」に向けたデザインが取り入れられているが、素が「ママ」向けのデザインで、可愛らしいイメージが強い。
シエンタが、王道の「使い勝手」で攻めるのに対し、使い勝手は抑えながらも「デザイン」で攻めるフリード。子供がいるファミリーにとって、コンパクトミニバンは最強の便利なクルマだが、ファミリー最優先に考えつつも、ちょっとはオシャレに楽しみたい、そうしたニーズにうまく合致したモデルが「フリード」なのかもしれない。
2019年のマイナーチェンジで追加された新グレード、フリードクロスター。フロントグリルや前後のバンパー、アルミホイールのデザインを変更、ドアハンドルやサイドミラーをシルバーに変更している
次期型では「クール系」を目指してほしい
だが、デザインがうけている状態とは、薄氷の上を歩いているような、危険な状態。デザインを少し変更しただけでも、あっという間に人気が落ちてしまう可能性がある。
たとえば、トヨタの人気ミニバン「アルファード」と「ヴェルファイア」は、2018年にマイナーチェンジで、フェイスデザインを変更した。それまではヴェルファイアのほうが人気だったのだが、マイチェン後は人気逆転。今やヴェルファイアの販売台数は、アルファードの5分の1以下にもなってしまった。
フリードが今度、フィットのように「子犬顔のような可愛いフェイス」に向かうのか、はたまた、2代目ヴェゼルのような大人しい雰囲気に進むのか、さらに別の顔となるのかは予想が難しいが、あえてデザインは変えず、モデューロ顔で押し通すのもアリだろう。個人的には新型シビックのようなクール系に進んでいくのがいいのでは、と思う。
次期型は2022年秋頃発表か
フリードの次期型については、ベストカー本誌の取材によると、2022年秋頃発表のようだ。視界がよく、車内も広くて使い勝手もピカイチ、シートレイアウトも素晴らしく、後方誤発進抑制機能も追加されたホンダセンシングが、全タイプに標準装備と、コンパクトミニバンとして申し分のない仕上がりのフリード。フリードの活躍は今後もしばらく続くだろう。
フリードの6人乗り仕様は、セカンドシートがキャプテンシート仕様。子供を乗せるのに、使い勝手が非常に高い、という声が多い
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よく考えれば、日常はフリードのサイズで十分だしな